【人物図鑑】ハコづくりと場づくりで建物設計やまちづくりに取り組む異色の建築家

株式会社SAITO 代表取締役社長 斉藤昌平

株式会社SAITO 代表取締役社長
斉藤昌平

【さいとう・しょうへい】
福岡市出身、1977年2月生、福岡県立福岡高等学校卒~九州芸術工科大学(現九州大学)芸術工学部環境設計学科卒。2000年株式会社環境デザイン機構に入社を経て、2001年に実家の株式会社斎藤政雄建築事務所に入社。2004年に株式会社アポロ計画と共同でリノベーション事業を手掛けるリノベエステイトを設立。2006年株式会社斎藤政雄建築事務所の専務取締役、2009年同社代表取締役社長に就任。2017年ハコと場をつくる株式会社SAITOに社名変更。趣味は読者、映画、お酒。読書では建築関係を中心に小説からビジネス書まで幅広く読む。

【3Points of Key Person】

◎ハコづくりと場づくりによる建築設計スタイルを提唱
◎欧州のまちづくりに感化された二代目事務所代表
◎九大跡地で注目される地元箱崎のまちづくりに尽力

ハコづくりと場づくりを両輪とする異色の建築設計事務所

ハコと場をつくる――。
「《ハコ(=建物)づくり》とは、生まれてくる営みの〝場〟の土台づくりのことである。一方、《場づくり》とは、多様かつ複雑な人間社会を橋渡して、まちや人、組織・チームなどの風通しを良くしていくことを指す。このようなハコづくり、場づくりの両輪にして取り組んでいる」。福岡市・箱崎エリアに拠点を構える建築設計事務所、株式会社SAITOの斉藤昌平代表取締役社長は、自社のスタンスを語る。

◎和と文化をつなぐ〝場〟(社寺仏閣、茶室)、
◎まちの人があつまる〝場〟(公共施設)、
◎集い暮らしを営む〝場〟(福祉施設、共同住宅)、
◎学びをつくる〝場〟(教育施設)、
◎つくり働く〝場〟(事務所、生産施設)、
◎飲み食い商う〝場〟(飲食店、商業施設)、
◎家族と住まう〝場〟(個人住宅)……。
通常、建築設計事務所による建物設計の分類においては、建物の用途別に分類するのが一般的なの対して、斉藤社長は〝場〟別によって仕分けするこだわりようだ。

学びをつくる場として手掛けたデザイナー系専門学校の新校舎設計においては、「《対話の場》づくりをテーマにハコを新しくしていくとともに中身も新しくしていく取り組みも手掛けた。具体的には、社会人向けの学び直し講座も兼ねて、社会課題の解決を目指すソーシャルデザインを学ぶ無料公開講座の企画・運営まで手掛けて、〝場〟の実現に取り組んだ」と、斉藤社長は目を細める。
株式会社SAITOでは建築設計に加え、イベントの企画・運営やコンサルティング、さらにまちづくりも手掛ける。これまで医療機関でのチーム力強化やオフィス内でのコミュニケーション促進に向けたワークショップやファシリテーションを手掛けた実績がある。

「ハコづくりでは、何のための〝場〟なのかを考えている。その場づくりとして、コンテンツやソフトを考えて、さらに多彩な仕掛けや仕組みも設計・デザインしている。もともと建築設計事務所が母体であり、父の代から長年、地域に密着して活動したこともあって、まちづくりにも広く関わっている」
この言葉通り、博多を代表する秋の風物詩である放生会に合わせて参道に近い地元商店街で『ハコフェス』を開催する。
また、箱崎らしい下町的な雰囲気を伝える落語会『はこらくご』を春は立川流の江戸落語、秋は笑福亭一門の上方落語で催す。さらに商店街やまちづくりの有識者やキーパーソンの話を聞く『ハコトーク』を手掛けるNPO法人筥崎まちづくり放談会の企画・運営などでも汗を流す。

ヨーロッパの都市でのまち歩きが自らのまちづくりの原点⁉

家業が建築事務所だったこともあって、小学生の頃から建築設計の現場を見てきた斉藤社長が将来の仕事として建築を志したのは大学受験の時だった。
「建築は建物の用途を通じて、あらゆるものに関わることができる」ことも魅力の一つに考えた斉藤社長が進学したのは、当時の九州芸術工科大学(現九州大学芸術工学部)の環境設計学科だった。
「工学部の建築学科に近いものの、まちづくりや緑地計画など、まち全体の環境を設計していく点では通常の建築学科よりも興味が広がった」と、学生時代を懐かしむ斉藤社長は、当時から国内外の都市を訪ね歩いた。

卒業後、当初は留学資金を貯めるために地元の建築事務所で働いた後、海外へ建築の〝武者修行〟で留学する計画だったが、結局実家の建築設計事務所に入社した。
「いま取り組んでいる活動の原点の一つは、ヨーロッパでのまち歩きだと思う。実際にヨーロッパの各都市を歩いてみて、まち並みの素晴らしさに加えて、暮らしている人たちの誇りや生活の楽しみ方に接したことで本物のまちの豊かさを実感できた」と、斉藤社長は自らの原風景について語る。
その一方で日本の都市については、「スクラップ&ビルドの傾向が強く、没個性的な都市が多い。空間的な価値をつくっていくとともに、人々が自分たちのまちに誇りや愛着を持って暮らしていくことが、より良いまちづくりを実現していく上でも要諦になる」との信念で自らのライフワークに打ち込む。

九大跡地活用も踏まえた地元・箱崎のまちづくりを考える

筑前国一の宮であり旧官幣大社だった筥崎宮が約1200年遷座する福岡市・箱崎は、戦国時代末期に豊臣秀吉が千利休に野点させた箱崎茶会で知られる。
また、長らく九州大学が本部キャンパスを構えたが、九大移転を契機に大きな転機を向かえている。

「地元・箱崎が変化していく時期に、これまで取り組んできた実績を今後の地元のまちづくりに生かしていきたい。筥崎宮の1200年近い営みや文化がある箱崎は、郊外でよくみられる〝大量生産された新しいまち〟と違う、独自の歴史・文化があり、これらを生かしながら取り組む必要がある」と、斉藤社長は考える。

現在、約50ヘクタールにおよぶ九州大学箱崎キャンパス跡地については、福岡市や九州大学などの官民学が提携して、スマートシティ建設をしていく『FUKUOKA Smart EAST』というプロジェクトを構想している。
「九大箱崎キャンパス跡地の中でも本部第一庁舎や旧工学部本館、正門などの近代建築物ゾーンは箱崎のまちとの接点であり、今後のまちづくりのハブ拠点となる。より良いまちづくりの実現に向けて、ハコと場の観点からも取り組んでいきたい」と考える斉藤社長の今後の手腕に注目が集まりそうだ。

DATA

名 称:株式会社SAITO
住 所:福岡市東区原田1-1-13 5F
設 立:1972年8月1日
代表者:代表取締役社長 斉藤 昌平、代表取締役副社長 斉藤 康平
事 業:建築設計監理事業、デザイン事業、リノベーション事業、まちづくり事業、ホテル・飲食事業、アート制作プロデュース事業
URL:http://www.sa-o.com/

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