【人物図鑑】焼酎プロデューサーが語る焼酎の魅力と焼酎女子による新たな可能性
株式会社HarmoniK
代表取締役社長
黒瀬暢子
【くろせ・のぶこ】
1973年7月10日生、福岡県遠賀郡芦屋町出身、福岡県立東筑高校卒~早稲田大学教育学部卒。株式会社サンリオ勤務を経て、大型ショッピングセンター内で児童向け遊戯施設への大型遊具企画制作に転じた後、2019年8月「合同会社Harmonik」を設立。『焼酎プロデューサー』を2021年1月に商標登録。2022年9月、株式会社HarmoniKを設立して、代表取締役社長に就任。2022年3月、主催する『焼酎女子会enjoy!』で100回開催を達成。
【3Points of Key Person】
◎ 日本唯一の焼酎プロデューサーとして焼酎の魅力を情報発信
◎ 黒瀬杜氏の子孫と知り、家系図を作成し、焼酎プロモーションで起業
◎〝助演女優〟である焼酎と料理との組み合わせで新たな可能性を見出す
焼酎の魅力を伝導する〝焼酎プロデューサー〟
発泡酒・ビール風アルコール飲料27.9リットル、ビール20.9リットル、チューハイ・カクテル14.4リットル、焼酎9.1リットル、清酒6.5リットル、ワイン3.7リットル、ウィスキー1.6リットル……。
総務省『家計調査』(2人以上の世帯)2020~2022年平均によると、日本では1世帯あたり焼酎を年間で9リットル強を購入している。
「焼酎のファンづくりをはじめ、焼酎に興味を持っていただける方々を広げていく活動に取り組んでいる」
焼酎プロデューサーの黒瀬暢子株式会社HarmoniK代表取締役社長は、つぶらな瞳を輝かせながら、自らの仕事を紹介する。
焼酎プロデューサーという肩書は商標登録済であり、黒瀬社長は日本で唯一となる存在だ。
焼酎の製法である蒸留については、紀元前3000年頃のメソポタミアにて香料づくりで使われていた。
お酒の蒸留は、古代ギリシャの哲学者アリストテレスによるワインの蒸留が最初といわれている。
日本には15世紀頃、東南アジアから琉球を経て伝わった。
そして、16世紀末には、『焼酎』という名称の使用も確認されている。
本格焼酎と称される単式蒸留焼酎の出荷量で全国の約9割を占める九州は、焼酎大国だ。
九州内の鹿児島県や宮崎県で芋焼酎、熊本南部の球磨地方で米焼酎が盛んだ。
一方、長崎県の壱岐は麦焼酎、福岡県は酒かす焼酎の発祥地といわれている。
「SNSへの毎日の投稿をはじめ、『焼酎女子会enjoy!』の開催などを通じて酒造メーカーや新聞社、ラジオ局から焼酎に関する仕事が舞い込むようになった」と、にこやかに語る黒瀬社長は、福岡市の起業家支援施設『fgn』を拠点に活動する。
焼酎造りの黒瀬杜氏の子孫として焼酎女子らで発信
焼酎プロデューサーとして東奔西走する黒瀬社長は、「つい数年前まで焼酎を飲んだこともほとんど無かった」と明かす。
2018年8月当時、東京で会社員だった黒瀬社長は、自分の姓と同じ焼酎バー『黒瀬』を訪れたことをFacebookに投稿した。
すると、知人からの問い合わせをきっかけに自分のルーツが、焼酎造りを手掛けている黒瀬杜氏の子孫だったと知った。
黒瀬杜氏とは、鹿児島県南さつま市にある黒瀬集落出身の焼酎造りのプロフェッショナル集団だ。
清酒と異なり、江戸時代~明治初期に焼酎造りの専業者はおらず、必要に応じて近所の仲間で製造していた。
1899年に酒税法が施行されると、個人による酒造りは禁止されて免許制になった。
酒造免許を取得した者が、集落単位で焼酎を造り、その後に大規模な酒蔵へと発展していく。
明治期に黒麹を使った製法や仕込みを2回に分ける製法を確立させて焼酎づくりを飛躍的に進化させた黒瀬杜氏は、各地の酒蔵に招かれた。
黒瀬社長は、親戚から譲り受けた資料を基に黒瀬集落の親戚も訪ね歩きながら、江戸末期から100人にも及ぶ家系図を完成させた。
黒瀬社長の家系は、黒瀬集落をまとめた庄屋筋だった。
家系図には、黒瀬杜氏の面々が数多く名を連ねており、「黒瀬杜氏だった先祖を敬っていきたい」との思いを強くした。
当時、前職において子どもの遊び場用の玩具づくりを手掛けて、海外生産のために出張を重ねていた黒瀬社長は、「日本人によるモノづくり、そして手づくりも含めた職人文化の素晴らしさを痛感していた」と、目を細める。
「職人によるモノづくり文化を何らかの形で後世に残せないか」と考えていた黒瀬社長は、「黒瀬杜氏と出会って以降、黒瀬杜氏の歴史を後世に伝えることを使命だと考え、焼酎文化の素晴らしさを発信していくことを心に決めた」。
当初、焼酎による味の違いもよく分らなかったものの、黒瀬社長は毎日、欠かさず飲むうちに焼酎に魅了された。
黒瀬杜氏の子孫だと確信して以来、黒瀬社長は、Facebookで毎日、飲んでみた焼酎の印象や、いろいろな割材での感想を投稿した。
そして、普段あまり焼酎との接点がない女性にも焼酎のおいしさを伝えて、彼女らと一緒に楽しみたいと考えるようになり、『焼酎女子会enjoy!』を2019年2月に立ち上げた。
さらに同年8月には、焼酎女子らで福岡県宗像産イチゴ『あまおう』を素材に使用した焼酎ベースのリキュール『宗像三女神あまおうリキュール』を商品化した実績もある。
2020年7月に会社を辞めることを決意して同年9月に退社し、翌2021年1月に東京から福岡へ居を移した。
一方、初回の参加者3人だった焼酎女子会enjoy!も回を重ねて〝焼酎女子〟も増えていった。
コロナ禍でのオンライン開催も含めて2022年3月に100回開催を達成した。
2023年9月末現在で118回の開催で延べ参加者は約1,300人を数える。
焼酎女子会enjoy!の回を重ねていく中で《女性に欠かせないのは料理だ》と確信した黒瀬社長は、「料理と焼酎を合わせてのアリアージュという新たなアプローチも始めて毎回、好評を博している」。
「焼酎は料理の味を引き立てる〝助演女優〟」
芋、麦、米、そば、黒糖・・・・・・。
焼酎の原料には、古くから使われているこれらの原料に加えて、国税庁が定める49品目の穀類と野菜の農作物が指定されている。
「焼酎の面白いところは、おいしさに加えて、いろいろな穀物で造るバリエーションの豊かさにあり、それぞれに個性的な味わいがある」と語る黒瀬社長は、「焼酎は助演女優」と説く。
「素材の風味をしっかり感じられる焼酎は和食に限らず、どんな料理にも合う。さらに料理の味を引き立てる焼酎は〝助演女優〟のようなイメージを抱いている」と、黒瀬社長は笑顔をみせる。
TVCMを契機に『焼酎のお湯割り」で一大ブームになった1970年代後半、『缶酎ハイ」が一世を風靡して甲類焼酎が飛ぶように売れた1980年代前半、本格焼酎ブームが到来した2000年代前半。これまで焼酎ブームは三度起きた。
今後、どのようなカタチで新たな焼酎ブームがやって来るのか。これからの動向にも注目していきたい。
DATA
名 称:株式会社HarmoniK
住 所:福岡市中央区大名2—6—11 fgn内
設 立:2019年8月31日(※合同会社、株式会社化は2022年9月)
代表者:代表取締役社長 黒瀬暢子
事 業:焼酎全般に関するプロデュース業務
URL:https://kurose-n.com/
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