【人物図鑑】〝個人×組織〟の人材育成・組織開発で日本の会社と働く人を元気にする

【画像】島田和子@ふくおか人物図鑑

株式会社アンテ
代表取締役
島田和子

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【しまだ・かずこ】
1978年生。福岡県久留米市出身。福岡県立明善高校卒~京都大学農学部卒。2001年4月、福岡県庁に農業職として入庁。農家経営や技術指導、地域活性化などに従事する。本庁での企画立案部門や農産物の輸出促進業務なども担当し、日本初となる産地でのグローバルG.A.P.の認証取得も手掛ける。2016年3月に福岡県庁を退職して翌4月、コーチング業として起業。2020年6月、株式会社アンテを設立して代表取締役に就任。趣味は建築物巡り。

【3Points of Key Person】

福岡県庁職員OBでコーチングで起業、3児の母でもある
◎ キャリアコンサルタント資格も取得、組織開発に乗り出す
◎ 日本一のマネージャー・コミュニティーづくりを構想する

県OBで起業した3児の母による組織開発と人材育成

【画像】島田和子@ふくおか人物図鑑

「日本の会社のうち99%強を占める中小・零細企業では、社内における人材育成のリソースは限られている。特に中間管理職をはじめとするマネージャー層は、1人で悩んでいるケースも多く、経営課題の一つといえる」
福岡県庁職員から起業した3児の母であり、組織開発と人材育成を手掛ける株式会社アンテの島田和子代表取締役は、日本の中小企業が抱える課題を率直に指摘する。

経済環境や雇用情勢が秒進分歩で変化し、ITをはじめとするテクノロジーも飛躍的に発展していく中、島田代表はマネージャー育成を目的とした実践型オンライン学習プログラム『ピープルマネジメントアカデミー』を開発した。
2024年6月に開講する予定の同プログラムでは、従来の指示・命令型でなく、〝対話〟による相手の理解や、チームの学習力を高めていくピープルマネジメントの手法を採用している。
「もともと個人向けコーチングやキャリアコンサルタントとして活動する中、いろいろな働く方々の悩みを聞いているうちに個人的な問題よりも組織的な問題の方が大きいと気づいた。そして、組織開発に取り組んできたことが、実践型オンライン学習プログラムを開発するきっかけになった」ことを島田代表は明かす。 
今回のプログラムは、松田美幸氏が監修者を務める。

「つながりや関係性を意味する『エンゲージメント』をキーワードにして、組織と個人の双方の目的を実現できる職場や社会を作るための組織開発や人材育成の支援に取り組んでいる」
生き生きとした表情で語る島田代表は現在、中小企業やベンチャー企業などを主な対象に九州内と首都圏で活動する。社名である『アンテ』は、待合室や控えの間などを意味する英語のanteroomに由来し、「まずは、自分自身を整えることから始めてほしい」と、優しくほほ笑む。

起業直後の妊娠で開店休業、国家資格のキャリコン取得

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久留米市内で長年、文具・事務機器の卸売を営む両親の次女として生まれた島田代表は、幼少期から礼儀正しい優等生タイプであり、ファッションデザイナーに憧れていたという。
生物が好きでバイオテクノロジーや環境問題への関心を抱いた明善高校時代、同級生の一人にお笑い芸人の古賀けんもいた。

「農学部は面白そうね」という母親からの言葉をきっかけに農業への関心を高めた。
「学生時代の4年間、京都に住んでみたい」という島田代表の思いも重なり、京都大学農学部へ進学した。
就職活動では、農林水産省と福岡県庁を志望し、「帰って来てほしい」との両親からの希望もあって2001年4月、福岡県庁に入庁した。

入庁時は唯一の農業職採用であり、入庁4年目に最年少で知事部局の農政企画担当を任された。
一見順調そうなキャリアに見えた半面、本人自身は「農業や農業者の役に立ちたいと思っていたが、難しい」と苦悶し続けた。
その後、福岡県産品の輸出担当部署へ異動して八女茶を担当する。
新天地では、想定外の激務に加えて、職場内での統制の無さや信頼感喪失などもあり、困難や苦渋を味わった。同時期に結婚した島田代表は、長女の出産も経験した。
産休後、久留米市内にある普及指導センターへ異動する。

その後、次女を出産した島田代表は偶然、手にした雑誌でコーチング講座を知り、恩師となる人物と出会う。
コーチングでの学びを通じて、「自分自身の強みやビジョンを見出し、仕事に対するやりがいや充実感を実感した」と、島田代表は目を細める。
そして、週末の学びに加えて、無償セッションによる実践を重ねた島田代表は、次第にコーチングでの独立・起業を意識し始めた。

福岡県庁に勤務した15年間、ほぼ一貫して農業分野を担当した島田代表は最終年度、国際基準に基づく適正な農業実践の認証である『グルーバルG.A.P.』の取得に挑んだ。
そして、葉物野菜として日本初となるグルーバルG.A.P.の産地認証を花道に島田代表は2016年3月末、福岡県庁を跡にした。

青雲の志で起業した矢先、3人目の妊娠を知った島田代表は、「最初、大いに動揺したものの、いまでは我が家の宝物になっている」と、表情から笑みがこぼれる。
当初、開店休業状態だったものの、この間に国家資格のキャリアコンサルティング2級技能士の勉強を始め、出産後に資格を取得。
そして、生後1カ月の赤ん坊を背負いながら、コーチングやキャリアコンサルタントとしての仕事を始めた。

島田代表は本格的に起業した後、「個人向けコーチングやキャリアコンサルティングを通じて、本人が変わっても会社そのものが変わらないと、解決しない問題が多い」ということが分かった。
一方、経営者向けのコーチングでは、「社員の士気やパフォーマンスの無さに加えて、離職の多さに思い悩む姿も見た」
個人と組織の両面から取り組む必要があると考えた島田代表は、株式会社ローカルベンチャールーム(福岡市、富田安則社長)の主宰する『ローカルベンチャーアカデミー』に学んで2020年6月に法人化し、組織開発に本格的に取り組んでいく。

日本一のマネージャー・コミュニティーづくりに挑む

【画像】島田和子@ふくおか人物図鑑

「会社の要であるマネジメントに悩みを抱える会社が多い中、マネージャーの方々が本来の力を発揮できるような学びの場を提供していきたい」
「そして、日本一のマネージャー・コミュニティーをつくっていくことで互いの悩みを共有しながら、共に知見を高めていくことを通じて、日本の会社自身も変わっていく」と、島田代表は思いを膨らませる。
自らの歩みも振り返り、「人間万事塞翁が馬」を座右の銘とする島田代表は、個人と組織のデザインにおいて、〝新たなエンゲージメント〟を生み出そうとしている。

DATA

名 称:株式会社アンテ
住 所:福岡市中央区今泉2‐4‐31₋201
創 業:2016年3月(設立2020年6月)
代表者:代表取締役 島田和子
事 業:組織開発・人材育成
URLhttps://an-te.co.jp/

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