【人物図鑑】〝日本一〟のベンチャー投資家が事業会社系VCで福岡・九州に種まき

株式会社アイキューブドベンチャーズ
代表取締役パートナー
山形修功

【やまがた・のぶよし】
1969年9月11日生、札幌市出身、北海道立札幌北高校卒~慶應義塾大学商学部卒。1992年4月日本合同ファイナンス株式会社(現ジャフコ グループ株式会社)に入社。大阪支店、国際営業部に勤務後、1997年6月マニラ、1999年5月シンガポールに駐在してアジア企業への投資を行う。2001年帰国後、東京でのベンチャー投資、投資審査を経て、2007年10 月同社九州支社長に就任。『日本で最も影響力のあるベンチャー投資家ランキング』2021年版で第1位となる。2021年11月、株式会社アイキューブドベンチャーズの設立に伴って、代表取締役パートナーに就任。中小企業診断士。趣味はマラソン。座右の銘は、「人が2秒で笑い終える所を4秒笑え。人が3秒で笑い終える所を6秒笑え。それだけで人生は倍楽しく過ごせる」。

【3Points of Key Person】

◎ 日本一のベンチャー投資家になるも支社閉鎖で地元企業系VC代表に就く
◎ 大手VCでは大阪、東京、フィリピン、シンガポールに勤務して福岡へ赴任
◎ スタートアップ都市・福岡市でのエコシステムづくりに尽力

大手ベンチャーキャピタル支社長から地元VCトップへ転身

世界的な経済誌『Forbes』の日本版『Forbes JAPAN』による「日本で最も影響力のあるベンチャー投資家ランキング」。同2021年版で第1位に輝いたベンチャー投資家は、その後の波乱万丈の展開を乗り越え、現在も福岡市を拠点に活動し続ける。
「福岡からベンチャーキャピタルの事業拠点を一つ無くしてしまったが、結果的に、新たな事業会社系ベンチャーキャピタル(CVC)が誕生するという展開になった」
〝日本一〟受賞時、ジャフコ グループ株式会社の九州支社長だった山形修功さんは現在、株式会社アイキューブドベンチャーズの代表取締役パートナーを務める。

2020年7月、投資先だった株式会社アイキューブドシステムズ(福岡市 佐々木勉社長)が東証マザーズに上場した。
コロナ禍での上場延期を経て、需給ギャップによるストップ高を伴う上場により、山形代表は、地方にいながら投資家ランキング1位として一躍時の人となった。
もっとも、ベンチャー投資家での日本一になっても閉鎖の決定は覆らずに2021年8月、山形代表の退職と共にャフコ グループ九州支社は長年の歴史に幕を閉じた。
退職するベンチャー投資家に対して、ベンチャーキャピタル界の各社からアプローチがあった。福岡に住み、福岡で働き続けることにこだわった本人は退職を決めてから、福岡での就職活動を始めたという。

「長年、金融界にいたので、事業会社に入って新たなチャレンジをしたいという思いがあった」「一緒に働きたいと思える職場を選ぼうと考えた」ことを明かす山形代表は結果的に旧知であり、未上場時には社外取締役も務めていたアイキューブドシステムズへの入社を決めた。
同社への入社後、オープンアライアンス開発室室長として、M&Aや資本業務提携案件を検討する中、子会社としてベンチャーキャピタルを設立する話が浮上した。そして、2021年11月、株式会社アイキューブドベンチャーズの設立に伴って、代表取締役パートナーに就任した。
「親会社であるアイキューブドシステムズが手掛けるモバイル端末管理ソフトウェアサービスや端末向けアプリ開発と親和性のある事業領域に加えて、福岡や九州の地元企業にも広く投資していきたい」と、意欲的に語る山形代表は2023年10月末時点で6社に対する投資を実行している。

北海道・札幌出身で福岡移住組。福岡拠点の活動にこだわる

「子どもの頃から、父への対抗心で《会社を起こして、経営者になりたい》との思いを抱いていた」ことを明かす山形支社長は大学受験で経済W学部も合格していたものの、あえて商学部へ進学した。もっとも、司法書士だった父は、一足先に会社を起こして、事業家になっていた。
自らの就職活動において、将来的な起業も見据えて経営コンサルティング業界とベンチャーキャピタル業界を志望する中、「経営者は、お金を出して経営指導してもらう先よりも、お金の出し手の言うことを真剣に聞くものだ」との事業家である父からの一言で後者を選んだ。

1992年4月、野村證券系ベンチャーキャピタルだった日本合同ファイナンス株式会社(現ジャフコ グループ)に入社。
大阪支店を振り出しに本社国際営業部で米シリコンバレー投資先への事業開発を手掛け、その後フィリピンやシンガポールに駐在。
帰国後、全国各地を飛び回る中、山形代表は、「面白い会社やすばらしい経営者、そして優れたスタートアップ企業もたくさんある。地方は住みやすい環境にあり、才能をもった人材が集まれば、何かすごいことが起きる」と、福岡・九州に注目した。

2007年10月、九州支社長として赴任した山形代表は、「福岡は、よそ者を受け入れる土地柄だ。コンパクトで便利で食もおいしく、ポテンシャルの高い地域である」ことを体感した。
もっとも当時の九州支社は担当地域のIPOに関与していないケースが相次ぎ、実に25連敗中だった。存亡の危機に立たされ、支社再建のために赴任した山形代表をリーマンショックが見舞った。
支社の投資部員も削減されて、最後は実質的に山形代表一人となる。株式市況が徐々に回復していく中、30連敗目前でストップを掛けたのは、山形代表が赴任後に投資したウチヤマホールディングスの上場だった。
「福岡・九州での事業拠点を存続させていくためにも投資先企業の株式公開を実現して、収益を上げていくことで存在意義を示していきたいと考えた」という山形支社長は、その後相次いで投資先である地元企業の株式公開を手掛けていく。そうした中で出会った一社が、アイキューブドシステムズだった。

「福岡はエコシステムで〝とんでもなくヤバい街〟になる」

スタートアップ都市として、福岡市が存在感を増していく中、「投資先が株式公開も含めて事業規模を拡大させ、雇用も生み出していくことで地元の学生やUターン希望の地元出身者にとっても受け皿になり得る」と考える山形代表は、「福岡には、IT系新興企業による事業会社系ベンチャーキャピタル(CVC)が少ない」という現状を危惧する。

「成功した起業家が地元にお金や成功体験を残していくことで新たな起業家を生み出していく」「福岡はヒトを惹きつける魅力あるまちであり、今後グルーバル的にも注目されるスタートアップ企業が相次いで輩出していくような生態系(エコシステム)ができたら、〝とんでもなくヤバい街〟になる」との思いを秘めながら、IT系新興企業による事業会社系ベンチャーキャピタルのトップである山形代表は日々奮闘し続ける。

DATA

名 称:株式会社アイキューブドベンチャーズ
住 所:福岡市中央区天神4‐1‐37
設 立:2021年11月
代表者:代表取締役 山形修功
事 業:ベンチャーキャピタル

Follow me!