【人物図鑑】人と空間の「プラス循環」で景観を変え、暮らしを高めて笑顔を創る

福岡大学工学部社会デザイン工学科 教授 柴田久

福岡大学工学部社会デザイン工学科 教授
柴田久

福岡大学工学部社会デザイン工学科 教授 柴田久
福岡大学工学部社会デザイン工学科 教授
柴田久

【しばた・ひさし】
福岡県飯塚市出身、1970年6月3日生、 東京工業大学大学院情報環境学専攻博士課程修了(工学博士)。筑波大学大学院講師、東京工業大学大学院情報理工学研究科非常勤講師、四国学院大学社会学部応用社会学科講師、2005年4月福岡大学工学部社会デザイン工学科助教授に就任。カリフォルニア大学バークレー校環境デザイン学部客員研究員などを経て、2014年4月現職に就任。専門は景観設計、公共空間のデザイン、まちづくり。主な受賞歴は2018年度・2014年度グッドデザイン賞、土木学会デザイン賞2014最優秀賞、2010年度・2008年度キッズデザイン賞など。著書に『地方都市を公共空間から再生する: 日常のにぎわいをうむデザインとマネジメント』(学芸出版社)がある。

【3Points of Key Person】

◎数々の賞に輝いた警固公園の改修工事を手掛ける
◎米国留学で世界トップの仕事を学び、仕事を昇華させた
◎人と空間のプラス循環を促すデザインは海外からも注目

〝天神のオアシス〟として生まれ変わった警固公園誕生秘話

福岡市・天神にある警固公園は、都会のオアシスとして人々に親しまれ、九州一円からも若者らが集まって来る人気スポットだ。
今日、市民が安心して過ごせる憩いの場となっている警固公園は、かつて園内の高い築山や老朽化したトイレ、生い茂った樹木で見通しが悪く、死角や暗がりも多かった。景観上の醜悪さに加えて、防犯面でも問題が指摘される公園だった。

2010年7月、警固公園での事件発生状況や公園再整備に向けて、地域住民をはじめ行政や警察などで協議する『警固公園対策会議』が発足した。
同会議に学術関係者として参加した福岡大学工学部社会デザイン工学科の柴田久教授は、「専門が景観設計、公共空間のデザインであり、ハード面の設計アドバイスに加えて、住民ワークショップでの合意形成や防犯まちづくりに関するソフト面の実績があった。当時、研究室学生とともに警固公園における利用実態調査の結果から中心性評価というデザイン研究を行っており、公園の改修方針を議論していた対策会議に呼ばれたのをきっかけに、基本設計を担当することになった」と経緯を話す。

柴田教授は改修工事のコンセプト提案をはじめ、基本設計や実施設計監修、現場監理まで務めた。旧公園にあった築山や池は撤去されて、中央広場の新設をはじめ、樹木の再配置による見通しの向上、芝生空間の拡大や入口付近でのオープンスペース確保、中央園路の新設などで利便性や歩行者動線等の向上を図った。
そして、警固公園は〝安心・安全なまちづくり〟のシンボルとなる公園へ生まれ変わった。
さらに警固公園改修から約1年後、隣接するソラリアプラザが公園側壁面をガラス張りにし、建物内飲食店を再配置する大規模なリニュアル工事を実施、警固公園との一体的な空間づくりに取り組んで、新たなにぎわいも生み出した。

福岡市都市景観賞大賞をはじめ、土木学会のデザイン賞最優秀賞、グッドデザイン賞、国土交通省の都市景観大賞都市空間部門優秀賞、全建賞(都市部門)などに輝いた警固公園について、「公園などの公共空間の計画やデザインにおいては、地元住民の意見や既存利用実態を把握するプロセスを組み込み、より使いやすい快適な施設づくりを目指すこと、さらに賑わいの創出や周囲に対する波及効果、地域コミュニティの再生や活性化に寄与できるかが大事」と、柴田教授の表情からは笑みがこぼれる。

UCバークレー時代に世界のトップ事務所で研さんを積む

「もともと景観や環境、建築などに興味があり、人々が笑顔で佇み、楽し気にその場所、施設を利用している・・・そうした様子が眺められる景観や空間のデザインに携わりたい」という思いが、柴田教授にとっての原風景だった。

大学院修了後、筑波大学大学院のビジネス科学研究科に勤めていた柴田教授は、現役経営者らが登壇する講義を手伝い、ユニクロの柳井正ファーストリテイリング会長兼社長らの企業人が、社会人学生を相手に熱心に語る姿を目にしていた。
そこで改めて感じたのは「企業経営も景観づくりも結局、人が重要である」との思いだった。その後、四国学院大学に転じて地方におけるまちづくりの現場に身を置き始め、2005年4月福岡大学工学部社会デザイン工学科に助教授として赴任し、2014年4月に教授となって今日に至っている。

これまでの歩みを振り返って、柴田教授が自らの人生における転換点として挙げるのは、カリフォルニア大学バークレー校にある環境デザイン学部ランドスケープ・アーキテクチュア&環境計画学科での客員研究員時代だ。
2009年9月から1年間、現地に滞在した柴田教授は世界最大規模のランドスケープ設計事務所「SWAグループ」のインターンシップ・プログラムにオブザーバーとして参加した。
「世界トップクラスの事務所スタッフと一緒に設計実務に関わる中で、設計の進め方やスピード感、段取りの仕方や方法に接し、さらに技術力全般においても日本の長所短所を肌で感じることができた。この経験はその後の警固公園改修事業や南米コロンビア・マニサレス市でのオリバレス公園設計アドバイザーとしての仕事にも生きたように思う」と振り返る。

アメリカ留学以前は、主に住民参加型まちづくりのワークショップや合意形成といったコミュニティ・デザインのプロセスに注力していたが、SWAでの経験を経て、実務上の具体的なデザインやデザイン自体の可能性を追求する姿勢がより強くなったという。
「ポイントの一つは、景観や空間のつなぎ方。また全てをつくり込まず、あえて当事者が主体的に動ける場所や余白を設けることで、想定外の使い方や利活用が発見・発明される」と、柴田教授は先を見通した上で布石を打つ。

人と空間とのプラス循環から笑顔あふれる場所づくりを

「もともとコミュニティ・デザインが専門だったこともあり、魅力的なコミュニティは魅力的な空間を生み出し、さらに生み出された魅力的な空間がより魅力的なコミュニティを生み出していく相互作用がある」と考える柴田教授の活動フィールドは国内に留まらない。

もともと英語が好きで、異文化に触れることに興味のある柴田教授は、海外からのオファーもあり、注目される日本の技術を意識した上で「これまでの経験をもとに、海外でのプロジェクトにも携わっていきたい。以前、携わっていたコロンビアでの経験から発展途上国の難しさを痛感したが、文化や風土、評価視点や仕事の仕方などの違いを超えて、魅力ある、笑顔あふれる場所づくりに貢献できれば、本当に嬉しい」と、自らの将来構想を思い描く。

DATA

名 称:福岡大学景観まちづくり研究室
住 所:福岡市城南区七隈8-19-1 福岡大学工学部社会デザイン工学科内
創 立:2005年4月
代表者:福岡大学工学部社会デザイン工学科 教授 柴田久
事 業:研究テーマ)景観や公共施設/空間のデザイン・計画、まちづくりやコミュニティ・デザインの方法とそのプロセス、都市形成に関わる歴史的な検討
URLhttp://www.tec.fukuoka-u.ac.jp/tc/labo/keikan/about/about.htm

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