【人物図鑑】サイエンスカフェで科学への関心と興味を育み、宇宙誕生の謎に迫る

【画像】サイエンスカフェ@ふくおか 運営者
九州大学先端素粒子物理研究センター 准教授
吉岡瑞樹

サイエンスカフェ@ふくおか 運営者
九州大学先端素粒子物理研究センター 准教授
吉岡瑞樹

【画像】サイエンスカフェ@ふくおか 運営者
九州大学先端素粒子物理研究センター 准教授
吉岡瑞樹
サイエンスカフェ@ふくおか 運営者
九州大学先端素粒子物理研究センター 准教授
吉岡瑞樹

よしおか・たまき】
横浜市出身、1975年11月27日生、慶応義塾大学理工学部物理学科卒~東京大学大学院理学系研究科物理学専攻修了(理学博士)。東京大学素粒子物理国際研究センターおよび高エネルギー加速器研究機構の研究員を経て、2011年4月九州大学大学院理学研究院に助教として赴任。2013年4月九州大学先端素粒子物理研究センター准教授に就任。専門は国際リニアコライダーの実現に向けた開発研究、茨城県東海村の大強度陽子加速器施設を用いた素粒子物理実験。2012年8月から市民向けの科学イベントである『サイエンスカフェ@ふくおか』をほぼ毎月のペースで開催している。

【3Points of Key Person】

◎市民向け科学イベント『サイエンスカフェ@ふくおか』を開催
◎素粒子物理学研究者として、宇宙誕生の謎の解明に迫る
◎市民参加型の新しい研究スタイルとして注目を集める

ノーベル物理学賞の研究者もサイエンスカフェに登場

【画像】サイエンスカフェ@ふくおか 運営者
九州大学先端素粒子物理研究センター 准教授
吉岡瑞樹

「宇宙って何だろう」「線香花火の不思議に迫る」「意外と知らないプラズマとは」「光の可能性を探る」「空間は本当に3次元なのか」……。
市民向け科学イベントである『サイエンスカフェ@ふくおか』は、公益財団法人九州経済調査協会の会員制経済図書館『BIZCOLI』のラウンジを会場にほぼ毎月のペースで開催している。

「人の往来が盛んなところにある、雰囲気の良いおしゃれな空間で若手研究者が講師を務めながら、参加しやすく親しみやすいサイエンスカフェを開催するように努めている」「BIZCOLIスタッフをはじめとする多くの方々に支えられて、継続できていること自体が大変有り難いと思う」と、サイエンスカフェ@ふくおかの運営者である吉岡瑞樹九州大学先端素粒子物理研究センター准教授は、笑顔をみせる。
サイエンスカフェ@ふくおかは当初、世界の素粒子物理学者が実現に取り組む、次世代の巨大な直線型加速器『国際リニアコライダー』(ILC)の誘致に向けた周知活動として2012年8月に誕生した。
その後、参加者の関心が高く、反応も大きかったため、現在では科学全般を対象に多彩な分野やテーマを取り上げている。

サイエンスカフェ@ふくおかへの延べ参加者は2000人を超える。
中でも2018年4月にノーベル物理学賞受賞者の梶田隆章・東京大学卓越教授・特別栄誉教授を講師に迎えてのサイエンスカフェ特別版「宇宙の謎に迫る!」では、子どもたちをはじめ一般市民ら約300人を無料で招いて開催するなど大きな話題を呼んだ。
2019年秋、サイエンスカフェ@ふくおかの活動は、九州大学の公式ウェブサイトに掲載されるという〝お墨付き〟を得ている。
昨今、他大学ではサイエンスコミュニケーション活動を組織的に行なっている例が数多く見られる。九州大学においても従来、教員有志によって数多くの活動が実施されていた点も踏まえながら、吉岡准教授は組織的かつ持続可能な仕組みづくりに取り組んでいる。

中学時代の研究者になる夢を実現、宇宙誕生の謎に迫る

【画像】サイエンスカフェ@ふくおか 運営者
九州大学先端素粒子物理研究センター 准教授
吉岡瑞樹

「宇宙起源の謎を解き明かすために巨大な加速器を用いた素粒子の物理実験をはじめ、ミューオンなどの素粒子や中性子を用いた物理実験に取り組んでいる」と、吉岡准教授は、自らの研究活動について説明する。
素粒子とは、内部構造を持たない粒子のことだ。物質を構成する原子は、原子核と電子で構成されており、原子核は陽子と中性子から成る。その陽子と中性子は、さらにクォークと呼ばれる素粒子で構成されている。

中学時代、数学好きだった吉岡少年は、理科の物理分野に夢中になって、「将来、研究者になろう」と心に決めた。
高校理科での力学に出会った吉岡准教授は、「日常の出来事が数式で表すことができることに感動した上に、未来も予見できることにワクワク、ドキドキして物理学を志す思いが高まった」

 大学進学で物理学科を選んだ吉岡准教授は、学生アルバイトとして始めたのは飲食店での接客だった。
サラリーマンに向いていないと自覚して、就職のことはまったく考えていなかったという吉岡准教授は、持ち前のコミュニケーション能力の高さを生かせる飲食業での起業を考えたこともあった。
そんな矢先、たまたま出席した素粒子物理学の講義でかつてのワクワク感やドキドキ感が呼び戻されて、研究者を目指しての大学院進学へと大きく舵を切る。

大学院で博士号を取得した吉岡准教授、東京大学素粒子物理国際研究センターと高エネルギー加速器研究機構で研究員を歴任した後、九州大学に素粒子物理学の実験研究室が発足した2011年4月に助教として赴任した。
「宇宙は、今日の物理学の標準理論で説明できない未知の暗黒物質や暗黒エネルギーが大部分を占めている。新たな物理学で宇宙誕生の謎に迫りたい」としなやかに語る。

「科学の面白さや楽しさに喜ぶ姿に充実感とやりがい」

吉岡准教授は、サイエンスコミュニケーションの別形態としてのシチズンサイエンスにも新たに取り組み始めた。
具体的には、簡易放射線計測器を用いた広域宇宙線・ミューオンの観測プロジェクトを高エネルギー加速器研究機構(KEK)や東北大学の研究者らと一緒に活動している。

シチズンサイエンスでは、市民が科学への興味や理解を深めるだけでなく、科学者と市民が近づいた結果、科学の力を生かした地域問題の解決をはじめ、新たな社会価値やイノベーションを創出なども期待されている。
サイエンスカフェ@ふくおかに参加した市民の中からも「自分たちでもサイエンスカフェをやりたい」と立ち上がった人たちによって福岡県うきは市や佐賀県唐津市でサイエンスカフェが誕生した。これらのサイエンスカフェにも吉岡准教授は可能な限り現地での開催に参加して、運営に協力している。このようなサイエンスカフェの広がりは珍しく、サイエンスコミュニケーションの専門家からも注目されている。

一連のサイエンスコミュニケーションの取り組みについて吉岡准教授は、「参加者が科学の面白さや楽しさに触れて喜ぶ姿に格別の充実感があり、やりがいを感じる。科学がもっと身近になれば、本当に嬉しい」と、科学の秘めたるロマンをかみしめながら、宇宙の神秘へ思いを馳せる。

DATA

名 称:サイエンスカフェ@ふくおか
住 所:福岡市西区元岡744(九州大学素粒子実験研究室)
創 立2012年8月
代表者:運営者 吉岡瑞樹(九州大学先端素粒子物理研究センター准教授)
事 業:市民向け科学イベントの企画・運営
URLhttps://sciencecafefukuoka.jimdofree.com/
http://epp.phys.kyushu-u.ac.jp/

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