【人物図鑑】ヒト・場・ビジネスをテコに地域の未来づくり・幸せな暮らしづくりの専門家
九州の暮らし創造研究所
代表
吉田まりえ
【よしだ・まりえ】
福岡県宗像市出身、福岡県立宗像高校卒~九州芸術工科大学(現九州大学芸術工学部)卒。 建設コンサルタント会社勤務後、1997年に九州の暮らし創造研究所を創業して代表に就任。防府市まちづくり未来塾、春日まちづくり塾、大野城市公園再整備のすすめ事業などを手掛ける。福岡市NPO・ボランティア交流センター『あすみん』センター長や福岡県地域づくりアドバイザーなどを歴任。現在、エフコープ生活協同組合などの理事を務める。趣味は人間観察、古武術、山登りなど
【3Points of Key Person】
◎未来志向のより良い地域づくり・暮らしづくりの専門家
◎スタートは地域計画コンサル、ファシリテーターとして活躍
◎地域資源やコミュニティーを生かした新たな事業にチャレンジ
カルガモ一家が教えてくれた住民主体の地域づくりの要諦
福岡県大野城市のため池跡は荒れ地となって、ゴミの不法投棄場になっていた。
地域住民の要望によってワークショップを通じて荒れ地を再整備して、湧水の3段ため池で水辺をつくり、散策路を設けた『どんぽの森公園』が誕生した。そして、地域の有志が再整備を機に清掃活動を始めた。
ある日、カルガモ一家がやって来て親しまれて公園の風物詩になった結果、清掃参加者はさらに増え、住環境をよくしていく活動は地域的な広がりを見せ、現在も公園を利活用する様々な活動は続く。
住民主体の公園づくりを手掛けた九州の暮らし創造研究所の吉田まりえ代表は、大学で建築学を学んだ地域計画コンサルタントだった。まちづくりのワークショップでファシリテーターとして八面六臂の活躍をみせ、いまソーシャルビジネスとしての地域づくりの現場で奮闘している。
長年、地域資源であるヒト・コト・場・ビジネスなどをテコにした地域の未来づくりを通じて、日々の暮らしを幸せで心豊かなものにしていく挑戦を続ける吉田代表は、「私の強みは、現場でインプットした情報を構造化や見える化して、課題から解決策までを理論的に言語化する。そして、実践までやり切ること。実践は、多様な専門家と組んでターゲットに合わせた講座などのプログラムづくりから事業スキームの構築まで手掛ける。最近は、単体のプロジェクトが上手くようにする部分最適から、組織の発展にそのプロジェクトをどう位置付けていけばよいか全体最適を視野に入れて目標設定を行い、プログラム構築やリソース活用してプロジェクトを展開している」と自己分析する。
吉田代表は個人事業主として、地域づくりや暮らしづくりのプロジェクトマネジメントを手掛ける一方、複数の組織・団体で理事などの立場で経営や運営にも関与する。理事を務めるエフコープ生活協同組合では、生協施設や地域の空スペースなどを活用して、組合員をはじめ地域の住民が連携して活動や事業の拠点となる場づくりにも挑戦中だ。
現在、吉田代表の仕事先は行政や民間企業、NPO、大学、プロジェクトを立ち上げた個人など多岐にわたる。関わる組織の事業規模も1000万円から500億円までと幅広いものの、「不思議と少しだけ私を知るやや遠い関係性の人から、新しい事業の立ち上げや、事業・プロジェクトを始めたものの、上手くいかず困っていると相談があり、ご縁をいただいて関わることが新しい挑戦になる」と吉田代表は明かす。
コンサルタントを振り出しにファシリテーターを経て現在
就職先として建設コンサルタント会社を選び、道路や公園などの建設・整備を手掛けたが、「住民の声や意見に耳を傾けないまま、整備していく手法に疑問を感じた」という吉田代表は会社を退職して、ワークショップの調整役・促進役であるファシリテーターの役割をいち早く学んだ。
折から国の都市計画法改正によって、まちづくりの現場で市民参加によるワークショップが推奨され、ワークショップ黎明期である2000年前後には年間200件余も担当した。これらのワークショップに加えて、都市計画事業等の地権者向け勉強会も自ら組んだプログラムで手掛けた。
ワークショップのファシリテーターとしてキャリアを重ねていく中で吉田代表は、「どんなにワークショップを工夫しても、最終的に参加した人たちの日々の暮らしに継続的に生かされる〝仕組み〟や〝場〟がないと地域自体は変わらないのではないか」という疑問も湧いた。
そのタイミングで飛び込んできたのが、福岡市NPO・ボランティア交流センター『あすみん』のセンター長就任の相談だった。
「前例のないことをはじめ、未知や未経験のことに挑戦するのは結構好き」という吉田代表は、センター長を引き受けた。
もっとも、個人事業主としてチームを組んでの仕事の仕方から一転して、組織の管理職となった当初は心身面で苦労も大きかった。
「以前は人の欠点にばかり目が行きがちだったが、組織マネジメントを勉強していく中で人の才能をみつけることの大切さを知った。そして、本人の才能をもとに仕事や権限を任せると、生き生きと輝きながら働き出した」と当時を振り返る。
あすみんを通じて組織の立ち上げから運営を学び、指定管理事業にPDCAの手法を用いることで組織としての強みも発揮して、大いに事業を伸ばした。
その一方で、「支援や提案だけでは限界がある、自分自身で事業を責任もって担って、推進することが必要だ」という思いも募った。あすみんセンター長の退任後、住民主体の地域づくりに飛び込み、関係団体の運営・経営にも参画していくようになった。
地域資源やコミュニティーを生かした幸せや生きがいの創出
「地域や組織には、それぞれに文化や歴史があり、まずはそれらを理解し、尊重しないと人もモノゴトも動かない。尊敬と理解は表裏一体である」と考える吉田代表は、今、新たな挑戦を目論んでいる。
「自分の知らない世界は面白く、自分自身のライフスタイルを見直すことや人間としての成長につながることをやりたい」と前向きだ。
自らの問題意識を踏まえて、ヒトやカネなどを投入して地域のビジネスとして循環させていくことが、地域を持続的に発展させていくと考える吉田代表は、「日々の暮らしをより良くしていきたいという思いを共有しながら、みなさんと一緒にやってみることが大事だと考える。地域資源やコミュニティーを生かしながら、事業を通じて人が活躍し、幸せや誇り・生きがいなどを地域の価値として創り出していきたい」と、優しくほほえむ。
DATA
名 称:九州の暮らし創造研究所
住 所:福岡市南区
創 業:1997年
代表者:代表 吉田まりえ
事 業:コミュニティー再生および協働まちづくりに関する事業(プロジェクトマネジメント、ファシリテーター)、人材育成等の各種講座の企画運営、活動及び組織の立ち上げ支援、都市地域計画の調査・計画、公園や道路・施設整備のワークショップ企画・運営、イベントの実施
URL:http://yoshida-marie.com/
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