【人物図鑑】教育現場に〝新風〟を吹き込む世界的プログラムを日本、福岡で広める

不破真理子@ふくおか人物図鑑

認定特定非営利活動法人(認定NPO法人)Teach For Japan
九州地区統括兼教師支援マネジャー
不破真理子

認定特定非営利活動法人(認定NPO法人)Teach For Japan
九州地区統括兼教師支援マネジャー
不破真理子
認定NPO法人Teach For Japan
九州地区統括
不破真理子

【ふわ・まりこ】
鹿児島市出身 1990年4月九州旅客鉄道株式会社(JR九州)に入社、当時の特急列車『つばめ』でサービスを担当する女性客室乗務員『つばめレディ』の採用活動などを手掛ける。1996年JR九州の100%出資子会社である小倉ターミナルビル株式会社に転じて、ホテル事業として『ステーションホテル小倉』を立ち上げる。2003年に小倉ターミナルビル株式会社を退職した後、人材育成コンサルティング会社である株式会社ビジネスリファインに勤務して、マネジャー職を務める。結婚後、子育てや学校教育に関わっていく中でTeach For Japan(TFJ)の構想を知って参画。2011年TFJの前身組織であり、困難を抱える子どもたちへの包括支援モデルに取り組む Learning for Allで活動を始める。2012年TFJのプログラム稼働に伴って、福岡オフィスを立ち上げて現在、九州地区統括兼教師支援マネジャーとして、TFJのプログラムの普及に取り組む。

【3Points of Key Person】

◎教育現場に〝新風〟を吹き込むTFJで九州地区を統括
◎JR九州でつばめレディやホテルを立ち上げ、TFJに参画
◎すべての子どもに未来を〝生き抜く力〟を習得させていく

意外、福岡は多様な人材を教育現場に起用する先駆けだった

不破真理子@TFJ

教室から世界を変える――。1990年にアメリカで誕生した《優秀で情熱のある人材を2年間、教師として教育困難な地域の学校へ派遣する》ことを目的とした教育系NPO『Teach for America』(TFA)のプログラムは現在、世界49カ国以上へと広がりをみせる。日本において、同プログラムを展開している団体が、認定NPO法人であるTeach For Japan(TFJ)だ。
「現状、経済格差が広がる一方、日本の教育現場は2020年の教育改革を前に混乱している」「これからの教職員は、校外や社会とつなぐコネクターとしての新たなコンテンツやキャラクターが求められている。その受け皿となって、課題を解決していくのが、TFJの役割の一つである」と、Teach For Japanの不破真理子九州地区統括兼教師支援マネジャーは率直に語る。

2010年の全米文系学生就職先人気ランキングで第1位となったTFAは、創設者のウェンディ・コップ氏がプリンストン大学時代に教育格差を根絶するアイデアをまとめた卒業論文が出発点だった。
2008年10月、ハーバード教職大学院に留学中だった体育教師の松田悠介氏がウェンディ・コップ氏と出会って、2012年1月からTFJのプログラムが稼働し始めた。2015年4月から福岡県でもTFJのプログラムによる、教育現場への新たな人材の送り込みがスタートした。
《すべての子どもたちが素晴らしい教育を受けられる世界の実現》という共有ビジョンの下、TFJで独自に選考・研修した新卒・既卒者を2年間、常勤講師として公立校の教育現場に赴任、支援していくフェローシップ・プログラムを運営する。

「TFJがスタートしてから最初の7年間で赴任した約70人のうち、実に半分が福岡県内であり、TFJにおいて福岡という地域の存在感は大きい」と不破統括は説明する。
福岡県内で普及した要因として、福岡県教育委員会では教員免許状を持たない者が常勤講師として勤務する場合、臨時免許状や特別免許状などの制度を利活用して対応している点が挙げられる。
このため、TFJで選考・研修したフェロー教師のうち、エントリーの段階で教員免許の未取得者も赴任可能だ、そして、赴任中に通信教育などで教員免許を取得し、教員採用試験を受験して本採用へ進むケースも多いという。

「臨時免許状や特別免許状の利活用において、福岡県教育委員会の取り組みは全国的にも先駆けである。現状、福岡県内の自治体や教育委会からの依頼や引き合いも多く、紹介が追いついていない状況にある」と、不破統括は明かす。
もっとも、TFJにおける一連の活動資金は、個人や企業・団体などからの寄付金や補助金を募って、一連のプログラムを無償で提供するスキームとなっており、「教育改革のムーブメントを推し進めていくためにも、寄付をはじめ、プロボノや古本寄贈などを通じて、サポーターになっていただきたい」と呼び掛ける。

つばめレディ、ホテル事業、TFJ福岡をゼロワンで立ち上げ

不破真理子@TFJ

現在、TFJの九州地区統括兼教師支援マネジャーを務める不破統括が初めて教育・研修に関わったのは、J R 九州で勤務していた時だった。
当時の特急列車『つばめ』でサービスを担当する女性客室乗務員『つばめレディ』の採用活動をゼロから手掛けた後、J R 九州の関連会社でホテル事業を立ち上げた。その後、人材育成コンサルティング会社に転じて、マネジャー職としてキャリアを積んだ。

長年、採用活動や教育・研修業務などを手掛けてきた不破統括にとっての転換点は、「結婚して、子どもができたことが大きかった。子どもの教育現場を実際に見て、いじめや不登校などが自分の子どもの頃と変わっていなかったことを知った。学校現場に課題解決力の高い人材をもっと増やすべきだと思った」という。
そんな折にTFJの構想を知った不破統括は直接、参画希望のメールを送信したことが、TFJとの出会いとなった。その後、福岡オフィスを立ち上げて、福岡県内において、TFJのプログラムがスタートしたのは2015年のことだった。

教育現場へ派遣するフェロー教師は、既卒も新卒も、多様な知識・バックグラウンドと教育への熱い想いを兼ね備えた人が集まっている。
従来の学校現場に無い新たな人材の登場は、硬直化しがちな職場環境に変化を与え、子どもたちにも新たな刺激となっている。
「最初は無名で信頼も実績もない中、縁もゆかりもない学校へ赴任した彼らフェローが全身全霊で取り組み、信頼と実績を築いてきたことが今日の信頼につながっている」とする不破統括は、福岡にとって第1期となるフェロー教師が慣れない教育現場で奮闘する姿に感動して涙したこともあったという。

「すべての子どもたちに未来を〝生き抜く力〟を」

不破真理子@TFJ

「臨時免許状や特別免許状などの利活用することで多様な人材を教育現場へ送り出すことができるので、他県の教育委員会にも浸透していくことを願っている。TFJとしてもプログラムを改修して単年度で100人の紹介を可能な体制にしていくことで次のステージを目指していきたい」と語る不破統括は、構想実現に向けて日々精進を重ねる。

TFJでの活動に加えて、個人的な教育への関心から、地域の子ども向けの英語学習やプログラミングワークショップなどのボランティア活動で始めた不破統括は、「公教育の中から改革して、すべての子どもたちが未来を〝生き抜く力〟を身に付けていくことで地域や社会が変革するエンジンの役割を担っていきたい。公教育の現場における大変さに気づき、支援したいという大人たちと一緒に取り組んでいくためにも、まずお声かけいただきたい」と、思いの実現に向けて胸を膨らませる。

DATA

名 称:認定特定非営利活動法人(認定NPO法人)Teach For Japan
住 所:(東京オフィス)東京都港区新橋6-18-3 中村ビル4階
     (福岡オフィス)福岡市中央区大名2-4-22 新日本ビル3F OnRAMP内
設 立:2010年03月18日
代表者:CEO 中原健聡
事 業:チェンジメーカーの育成、教育改革の推進
URLhttps://teachforjapan.org/

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