【人物図鑑】創業110余年の東証1部〝メーカー商社〟が顧客密着営業で強みを生かす

【画像】リックス株式会社 代表取締役社長 安井卓

リックス株式会社
代表取締役社長
安井卓

【画像】リックス株式会社 代表取締役社長 安井卓
リックス株式会社
代表取締役社長
安井卓

【やすい・たかし】 
佐賀県杵島郡白石町出身、1978年8月2日生、福岡大学工学部化学工学科(現化学システム工学科)卒~九州大学大学院総合理工学府物質理工学専攻修了。2003年4月古河電気工業株式会社に入社。2006年4月リックス株式会社に入社。2013年4月事業開発本部事業企画部長、2014年6月取締役に昇格し、同年10月取締役事業開発本部副本部長兼事業企画部長、2015年4月取締役企画本部長、同年10月取締役企画本部長兼海外子会社管理部長、2016年10月取締役営業本部副本部長を経て、2019年4月代表取締役社長に就任。同社の安井龍之助顧問の娘婿。

【3Points of Key Person】

◎創業110余年の東証1部〝メーカー商社〟が顧客密着営業を推進
◎応用化学専攻の技術者出身でオーナー家に婿入り
◎顧客の課題解決をはじめ、海外事業の展開に全力投球

商社機能×メーカー機能=〝メーカー商社〟+顧客密着営業

【画像】リックス

産業界に向けた産業機器・装置や設備・資材の販売に加えて、精密洗浄装置や回転継ぎ手などの自社製品を製造するリックス株式会社は、最適な商品を提供する《商社機能》と最適な製品を開発・製造する《メーカー機能》を兼ね備えた〝メーカー商社〟として、東京証券取引所市場第一部に株式を上場する。
日露戦争後の恐慌が始まった1907年に『しまや足袋本舗』(現アサヒシューズ株式会社)の代理店として足袋の卸売りを始めた山田商店が同社の前身だ。その後、官営八幡製鉄所に地下足袋を納入したことで鉄鋼業界をはじめ広く産業界と取り引きを始めて、産業機械商社としての事業を拡大させながら、今日の業態へ発展する。

 「大手製造業の生産現場に必要な設備・装置や部品、消耗品などを供給する産業機械商社であり、福岡に自社工場を構えて開発技術スタッフを擁することでお客さまのニーズをカタチにするメーカーとしての機能を兼ね備えたメーカー商社である点が当社の特色である」と、同社の安井卓代表取締役社長は説く。
鉄鋼、半導体、自動車、ゴム・タイヤ、高機能素材、紙・パルプ、環境、食品、工作機械――。これらの産業界単位で社内に専門部隊を設けて、専任の人員を配置することで、「生産現場の課題を解決していく上でも強みを発揮できる。販売~技術~製造~サービスを一気通貫で取り組む〝顧客密着営業〟というスタイルが、メーカー商社である当社の強みになっている」と、安井社長は強調する。

大手鉄鋼メーカーからは、大型ベアリングの再生やケミカル送液に適したFRPポンプの提案をはじめ、長寿命化やコストダウンなどの提案が高い評価を得た。
また、大手自動車関連メーカーでは、自動車部品のバリ取り工程への各種提案が評価されてVA(価値分析)・VE(価値工学)大賞を獲得した。
このほか、科学技術庁長官賞や財団法人九州産業技術センター優秀賞・同センター賞、粉体工学会秋季発表会技術賞など数々の実績を持つ。

応用化学を専攻、婿入でノーベル化学賞受賞者の縁戚になる

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「個人的な強みとしては、理系的にモノゴトを発想して考えることができる」点を挙げる安井社長は、「結婚して自分自身の人生が大きく変わった」と、にこやかに語る。
公害問題や環境問題の解決を志して、福岡大学工学部化学工学科(現化学システム工学科)に学んだ安井社長は、研究者を目指した大学院進学を目指した。学内選考に漏れてしまった安井社長は一念発起して受験した九州大学大学院総合理工学府に合格し、物質理工学を専攻した。

大学時代のバイト先で知り合ったのが、当時、同社の営業部長を務めていた安井龍之助元社長・現顧問の長女だった。大学院修了後、古河電気工業株式会社に入社して平塚事業所に配属された安井社長は、遠距離恋愛を経て2006年に華燭の典を挙げた。
そして、リックスに転じた安井社長は同年4月、新卒採用社員と一緒に入社式に臨んだ。
「モノづくりを手掛ける工場や開発センターがある福岡本社の会社に一技術者として入社したつもりだった」と苦笑いする本人は結婚して安井姓となった。
婿入り先の安井家は、リング状分子『クラウンエーテル』の発見で1987年にノーベル化学賞を受賞したアメリカの化学者チャールズ・ジョン・ペダーセンにつながる家系だった。チャールズは、ノルウェー人の父と日本人の母を持ち、彼の母親である安井タキノさんは安井社長にとって縁戚にあたる。

入社して一通り仕事を覚えた2008年9月から2年間、イギリスへMBA取得で留学した。最初、ロンドン大学の語学センターで英会話を習得し、3度の女王特別賞や2度のミレニアム賞を獲得したミドルセックス大学のビジネススクールに学んだ。
FIFAワールドカップが南アフリカで開催された2010年当時、安井社長のMBA習得のフィールドワークで南アフリカのケープタウン郊外にある家族で経営する会社の生産現場にいた。「小さなアパレルメーカーだったが、生産効率化に向けた製造ラインのレイアウト変更や商品差別化を目的とした刺しゅうミシンの導入などを提案して、オーナーの家族から感謝された」と、目を細める安井社長は、遠く離れた異国の地において、モノづくりの醍醐味と本質を体感した経験を持つ。

帰国後、技術系のベンチャー企業との共同事業を担当した安井社長は、「技術的な可能性を秘めていたものの、ベンチャー企業とは方向性の違いもあって結果的にうまくいかなかった」と、振り返る安井社長は企業経営やプロジェクト推進において、関係者らのベクトルを統一することの大切さや意義を痛感したと明かす。

世界のモノづくりの現場へソリューションを放っていく

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人手不足、働き方改革、経済のグローバル化、自動車の電動化……。企業経営の環境が大きく変化する中、「当社が持続的な発展を図っていく上で掲げるテーマは、お客さまにとっても課題になっていた」とする安井社長は、「生産性向上や人手不足解消に向けた自動化機器や無人化装置をはじめとする製品・商品やサービス、ソリューションなどを提供していきたい」と意欲的だ。

子どもの頃から白球を追い駆け、中学・高校の野球部で遊撃手を務めた安井社長は、尊敬する選手としてイチローを挙げる。「《一気に高みへ行こうとすると、ギャップがあり過ぎるので、地道に取り組んでいく》とするイチローのスタイルは、いろいろ参考になる」と、表情から笑みがこぼれる。
日本球界を飛び出したイチローは大リーグでも活躍したが、海外に10拠点(販社7社、製造会社3社)を構える同社も今後、積極的に海外で展開していく考えだ。「損得よりも善悪を重視ながら、難しい課題や要望から逃げることなく、考えて行動していく中から新たなソリューションが生まれる」とする安井社長は、独自の〝振り子打法〟によって、世界のモノづくりの現場へソリューションを放つ。

DATA

名 称:リックス株式会社
住 所:福岡市博多区山王1-15-15
創 業:1907年10月
設 立:1964年5月
代表者:代表取締役社長 安井卓
事 業:流体応用機器・装置の製造、精密自動・計測機器、製鋼副資材の販売
URLhttps://www.rix.co.jp

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