【人物図鑑】九州の 九州人の資金による 九州発展のためのファンドで〝金融の地産地消〟

【画像】株式会社ドーガン 代表取締役社長  森大介

株式会社ドーガン
代表取締役社長 
森大介

【画像】株式会社ドーガン 代表取締役社長  森大介
株式会社ドーガン
代表取締役社長
森大介

【もり・だいすけ】
熊本市出身、1967年10月31日生、中央大学法学部卒。1991年日本長期信用銀行に入行。法人融資、プロジェクトファイナンスや株式公開支援、再生支援業務を手掛け、トレーディング業務の企画・運営業務に従事。1998年シティバンク、エヌ・エイに転じて、福岡出張所の所長として赴任。九州の投資家やオーナー企業経営者ら向けにヘルスケア関連ファンドや不動産ファンド、未公開株ファンドなどの投資アドバイス業務を担当する。2004年に《九州随一のブティック型インベストメントバンク》を標榜して、株式会社コア・コンピタンス九州(現株式会社ドーガン)を設立。2006年 4月チャレンジ九州・中小企業がんばれ投資事業有限責任組合を設立。現在、地方銀行・政府系を含めた金融機関、地元企業などからの出資を受けて、九州せとうち地域特化型のベンチャーファンドや事業再生・承継ファンドなどを設立・運営する。尊敬する人物はイギリスの実業家でヴァージン・グループ創設者のリチャード・ブランソン、アメリカの投資家・経営者・資産家であるウォーレン・バフェット。

【3Points of Key Person】

◎九州の活性化に向けて、地元企業への投資と助言に取り組む
◎邦銀・外銀を経て起業、地元企業の事業再生で実績を上げる
◎若者に魅力的な地元企業や地場産業の育成で東京一極集中を解消

九州地域に特化した独自の投資ファンドを設立・運営

【画像】森大介@ドーガン

〝世界に通用する地場産業の投資と育成〟を理念に掲げる株式会社ドーガンは九州地域の活性化を目的としたファンドの設立・運営をはじめ、地元の企業へのM&Aアドバイザリー業務、経営コンサルティング業務、再生支援業務等を幅広く手掛け、創業15周年を迎える。
「当社は、九州経済の活性化に向けて、投資(インベストメント)と助言(アドバイザリー)を行うプロフェッショナル集団だ。投資銀行は通常、大企業向けに業務を提供しているのに対して、われわれは地元・九州の中小企業も含む地元企業を対象にしたM&Aアドバイザリー、経営コンサルティングや事業再生支援などをフルラインで手掛けている」と、同社の森大介社長は、自社の取り組みについて紹介する。

ドーガンの事業の中でも特徴的なビジネスとして、ファンド事業が挙げられる。
2006年 4月の『チャレンジ九州・中小企業がんばれファンド』設立を皮切りに『九州事業継続ブリッジファンド』『九州BOLEROファンド』『九州アントレプレナークラブ1号ファンド』『同2号ファンド』『九州せとうちポテンシャルバリューファンド』などを相次いで立ち上げた。会社を設立して以来、14本のファンドを立ち上げて、その総額は約350億円にも上る。
出資者に地方銀行・政府系も含めた金融機関などに加えて、地元の鉄道会社や食品メーカー、タクシー会社、不動産会社、学習塾などの事業会社が幅広く名を連ねるのは全国的にも珍しい。
「地元企業が、《自分たちの地域を応援したい》という思いで出資してもらっている。地元の資金を使って、地域経済や地元企業に貢献していくためのファンドを設立・運営する」と語る森社長は、自ら出資先に足を運んで意義を説きながら、出資を募る。

一方、投資先の地元企業にとっては、通常の銀行融資が難しい場合でも必要な事業資金を調達でき、さらに業務管理や販路拡大などの経営支援を得られる。
親会社の経営破綻で存亡の危機に陥ったシャツメーカー、HITOYOSHI(人吉シャツ)のケースでは独立・再出発に際し、ドーガンの事業再生ファンドが出資して、事業再建に乗り出した。新経営者が進める利益率改善の施策や製造現場の地位向上などの再建策が奏功し、初年度で営業黒字を達成することで経営再建を軌道に乗せた。
「〝金融の地産地消〟に手応えを感じており、地元・九州で仕事をしていることを実感している」と、にこやかな表情をみせる森社長は、地元の出資者と地元企業や中小企業を結びつける〝顔の見える直接金融〟の実現をたしかなものにした。

邦銀・外銀で経験後に独立、デビュー戦は浦島海苔

【画像】森大介@ドーガン

「九州の富裕層や企業から預かった数百億円の資金は結局、東京や海外に吸い上げられて、地域経済に還流されていないではないか」――。
地元のキーマンとの会食での問い掛けが、自らの仕事に対して疑問を抱くきっかけになった。
学生時代に映画『ウォール街』を見て金融界を志望した森社長は1991年4月、日本長期信用銀行(現新生銀行)に入行した。
バブル崩壊後、多額の不良債権を抱えた長銀は外資系ファンドに買収された。こうした中、森社長はシティバンク、エヌ・エイに転身した。
当時、営業拠点が無かった九州担当に志願して福岡出張所に赴任し、余裕資金の運用獲得に向けた先兵として、九州を東奔西走していたのだ。

「九州経済の潜在性に着目して、今後の成長が期待できる埋もれた企業を発掘しながら、起業⇒成長⇒再編⇒再生⇒承継の各段階での経営課題を最新・最強のノウハウとネットワークを駆使して解決していくことで、地元・九州を応援していきたい」と考えた森社長は2004年8月、株式会社ドーガンの前身である株式会社コア・コンピタンス九州を設立した。
会社を設立してまもなく、関係者らの協力も得て最初に手掛けた案件が、負債総額133億円で民事再生法を申請した浦島海苔だった。事業再生に向けた会社分割や事業見直し、スポンサー企業の獲得などを通じて企業再建への道筋をつけると、地元金融機関などから相次いで案件が持ち込まれるようになった。

「独立からリーマンショックまでは、順調過ぎるほど順調だった。リーマンショックに際して当社自体は大丈夫な一方、事業再生の仕事が急増し、しかも難しい案件が多かった」と当時を振り返る森社長は、「企業経営者にとっては進むも地獄、退くも地獄という状況下で最善を尽くした。逃げることなく真正面から取り組んだが、顧客企業の全員を幸せにすることは難しかった。失敗に終わった案件ほど、いまでも心に残っている」と、自らの心境を明かす。  
かつての経験を踏まえて、高度な案件や難しい仕事ほど率先して取り組むという森社長は、《もう二度と、あのような経験はしたくない》との自戒も込めて、これまでの失敗での反省点をまとめた『家訓』を作成して、社内で共有している。

「おもしろき こともなき世を おもしろく」

【画像】森大介@ドーガン

「九州に戻って以来、東京一極集中を食い止めたいとの思いで頑張ってきたものの、ますます東京との格差は広がっている。金融も情報のあるところへ集まりがちだが、リスク分散の観点からも東京一極集中を解消すべきであり、国益にもつながっていく」との考えを森社長は示す。
東京一極集中の解消に向けた具体的な取り組みとして、若者にとって魅力的で憧れを抱くような地元企業の創出や地場産業の育成を挙げる。
これまでは東京志向と地元志向の割合は9対1ぐらいだったが、今後は6対4ないし5対5に変わっていく。まずは地元の中小企業における成功事例をつくることで将来、若者たちの意識を絶対に変えられる」と語る森社長の言葉にも力が入る。

 「おもしろき こともなき世を おもしろく」(高杉晋作)を座右の銘とする森社長は最近、学生や若手社会人からの相談も増えたという。
「彼らとの対話は刺激になって嬉しい。人生は一度切りなので、いままでのような世間体や見栄、しがらみを捨て、自分自身の人生を楽しみながら、自らの道を歩んでほしい」と説く。

DATA

名 称:株式会社ドーガン
住 所:福岡市中央区大名2-4-22 新日本ビル 2F
設 立:2004年 8月
代表者:代表取締役社長 森大介
事 業:ファンド業務、アドバイザリー業務
URLhttps://www.dogan.jp/

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