【人物図鑑】布ナプキンで女性のブルーデーをひそかな楽しみに変える伝道師
株式会社Danae(ダナエー)
代表取締役
内田登代紀
【うちだ・とよき】
1977年11月8日生。福岡県古賀市出身。福岡県公立古賀高校(現古賀竟成館高校)~九州造形短期大学(現九州産業大学造形短期大学部)卒。家具工房で3年間、職人として修業した後、結婚・出産を経て助産師の勧めで布ナプキンと出合う。2008年に布ナプキン『うふふわ。』の製造・販売を手掛ける『幸せのタネたんぽぽ』を個人創業。2014年に『LOVEカルテ~わたしの性に出逢える本~』を刊行。2015年4月株式会社Danae(ダナエー)を設立、代表取締役に就任。小学生や母親らに向けた新しい性教育の講演活動にも取り組む。趣味はフラダンス。
【3Points of Key Person】
◎ 布ナプキンをテコにフェムケアを実現していく
◎ 家具職人を目指した後、結婚・出産で布ナプキンと出会う
◎ 自論「ダメモトは、ダメでない」の精神で挑戦していく
ブルーデーが〝ひそかな女の子の楽しみ〟になる
「フェムケアのお伝え係」――。布ナプキン『うふふわ。』の製造・販売を手掛ける株式会社Danae(ダナエ―)の内田登代紀代表取締役は、優しくほほ笑みながら、自らの役割について紹介する。
フェムケアとは、「Feminine(女性の)」と「Care(ケア)」を掛け合わせた用語だ。文字通り、女性の体や健康をケアしていくことで女性特有の症状や問題を解決していくための商品やサービスを指す。
内田代表は、自ら手掛ける布ナプキンについて「ゴワゴワとした違和感が無くて気持ち良い。温かい・冷たい、柔らかい・硬い、濡れている・濡れていないという皮膚感覚がよみがえってくるので、経血をコントロールしてトイレで自然に出せる〝女の子スキル〟も上がっていく」と、はつらつとした表情をみせる。
布ナプキンと使い捨ての紙ナプキンとの触感的な違いは、布マスクと不織布マスクの違いに似ているという。一方、皮膚感覚では濡れても感じさせない造りの使い捨ての紙おむつに対して近年、注目される布おむつの効能と類似した面もある。
「布ナプキンを購入されたお客さまから≪生理の日が楽しくなった≫と言う言葉を聞くと、うれしく、この仕事をやっていて良かったと思う」と、内田代表は顔をほころばせる。
「布ナプキン自体に医学的効能は無いものの、《汚したくない》という意識が働くことが大きい」と考える内田代表は、「今までつらいものでしかなかった生理期間の気持ちが軽くなり、自分の身体を大事に思えるようになっていく。そして、ブルーデーというイメージが〝ひそかな女の子の楽しみ〟に変わる」。
従来の生理日を『お姫さまの日』と呼び変えることを説く内田代表は、「『お姫さまの日』と呼んだ瞬間から、自然とお姫さまのような生活を心がけるようになり、自分自身で自分の体を慈しんでいく。お姫さまのように大事に過ごす期間にしてほしい」との思いを贈る。
布ナプキンとの出会いが人生の転機となり個人創業
現在、布ナプキンづくりに取り組む内田代表は短大卒業後、家具職人を目指して工房で3年間、修行を積んだ経験をもつ。
木が好きだったので、家具職人を目指したものの、体力面でのハンディーキャップもあって女性であることが嫌だったという内田代表にとって当時、生理自体も邪魔なものでしかなかったそうだ。
指のけがもあって家具職人への夢に挫折した内田代表は、縁あって結婚・出産した。出産して間もなく生理が再開したときに助産師からの薦めで布ナプキンを使い始めて、その魅力と出会った。
そして、自然と女の子スキルを身に付けた内田代表は、友人や知人らに布ナプキンを薦めたものの、取り扱う店舗は当時限られていた。
「布ナプキンづくりを子育て中のママたちの仕事にしたら、みんなが幸せになるのではないか」というひらめきが内田代表にとって起業のきっかけとなり、人生の転機にもなった。
乳飲み子を抱えて起業した内田代表は、布ナプキンづくりでオーガニックコットンの今治タオル生地をはじめ体に優しい素材を用いる。
そして、〝ママさん職人〟が、手づくりで仕上げる布ナプキンには、手書きの花文字が女性デザイナーの手によって書き添えられている。商品は地元をはじめ東急ハンズなどの販路を通じて、全国各地へ届けている。
「自分を愛してほしい」「人生を何度でも考えてほしい」との思いは、布ナプキンに止まらず、『LOVEカルテテ~わたしの性に出逢える本~』という本も生み出した。
「産婦人科医や鍼灸師、大学講師、高校体育講師、心理カウンセラー、ミュージシャンなど20人の専門家が、性について語った言葉をまとめた〝手づくり本〟といえる。当時まだ珍しかったクラウドファンディングで実現しており、みんなの力によって誕生した本だと思う」と、内田代表は目を細める。
その後、法人化した際の社名であるDanae(ダナエー)は、ギリシャ神話に出てくる美女の名前だ。学生時代に美術を専攻していた内田代表は好きな画家として、帝政オーストリアで名を馳せたグスタフ・クリムトを挙げる。
クリムトの作品の中でも幽閉されたダナエが黄金の雨とまぐ合う場面を描いた『ダナエ』は、お気に入りだった。布ナプキンの伝道で注目を集めた半面、離婚や子宮筋腫での苦難などを乗り越えて来た内田代表の生き方は、ダナエの半生と軌を一にして映る面もある。
「まず最初に自分のことを愛してほしい」
「大人だけでなく、子どもたちに対しても、第三者として性教育を伝えていくことは大事であり、情報発信ができるプラットフォームをつくっていきたい」との思いで胸を膨らませる内田代表は、布ナプキンづくりと共に小学校などでの「性」に関する正しい知識を広めるための講演活動を行っている。
さらにYouTube上チャンネルを開設して情報発信しており、性教育関連のビデオ講座も現在制作中だ。
「⦅ダメモトは、ダメでない⦆。ダメで元々だと、挑戦してみたことで変わったことは多い」という自論を持つ内田代表は、「まず最初に自分のことを愛してほしい。幸せだからこそ、人にも与えることができる」とのメッセージを贈る。〝愛〟と〝性〟の伝道に使命感を抱く内田代表にとって、東奔西走の日々は続く。
DATA
名 称:株式会社Danae(ダナエー)
住 所:福岡県宗像市東郷6-9-1-102
創 業:2008年
代表者:代表取締役 内田登代紀
事 業:布ナプキンや穀物カイロの製造・販売
URL:http://nunonapukin-seiri.com/
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