【人物図鑑】「お釈迦さまは、ヨガの実践者!?」、〝お寺でヨガ〟の不思議な縁を取り持つ
お寺yoga協会
理事長
境玲衣子
【さかい・れいこ】
1977年8月31日生、福岡県福津市出身、福岡県立宗像高校卒~福岡大学体育学部体育学科卒。イムズに開業した〝天空に一番近いヨガスタジオ〟のオープニングスタッフを務めた後、フリーランスのヨガインストラクターとなる。2018年11月、お寺yoga協会を設立して理事長に就任。同時にサンテリート株式会社を設立して代表取締役に就く。好きな言葉は「実るほど頭を垂れる稲穂かな」。
【3Points of Key Person】
◎ 寺院本堂でのヨガレッスンで感動、お寺ヨガを2000回余り実施
◎ お寺yoga協会を立ち上げて、全国のお寺ネットワークを構築
◎ お寺ヨガで参加者、寺院、インストラクターの〝三方よし〟を実現
「お寺」と「ヨガ」という不思議なつながり
厳かで開放的な雰囲気に包まれるお寺の本堂。金色に輝くご本尊に見守られながら、座しての瞑想や優美でしなやかな身体ポーズが繰り広げられている。
「お寺のご本尊に見守られながら行う『お寺ヨガ』は、独特の空間のエネルギーや開放感を感じことができる。お寺でのヨガレッスンは、健康な心身に整える時間・空間。お寺で手を合わせることによって、その地で長く続いてきたお寺で育まれた〝感謝の心〟を受け継ぎながら、地域のコミュニティ活性化や女性活躍の機会にもなっている」と、お寺yoga協会の境玲衣子理事長は、健やかな笑顔をみせる。
「駅前にあるお寺を会場に引き続き、定期的にヨガを教えてほしい」。ヨガインストラクターになりたての境理事長は、出張レッスン先だった福岡県直方市の体育館で参加者の一人からの呼び掛けが、お寺でヨガレッスンを始めるきっかけになった。
思いも寄らない申し出に当初戸惑いを感じながらも、小さい頃からお寺で手を合わせることが好きで母に連れられてよく墓参りへ通っていた境理事長は、「御仏のお導きかもしれない」と受け止めた。そして、週に1回の休日に個人的な活動としてお寺でのヨガレッスンを引き受けたことが、『お寺ヨガ』の誕生となった。
「実際にお寺の本堂でヨガをやってみた時、心から感動したことを今でも覚えている。何よりも心が落ち着く印象的なレッスンだった」と、振り返る境理事長は以来、14年間で2000回余りのお寺ヨガを開催して第一人者になっている。
当初、直方市でのお寺ヨガは毎週1回・午前の部でスタートしたものの、評判が評判を呼んで口コミで広がり、午後の部や夕方の部、夜間部も相次いでスタートした。
さらにお寺つながりで他の寺院からの引き合いもあり、一気に広がった。現在、お寺ヨガのネットワークは、東京から宮崎まで宗派を超えた36寺院を数える。
『お寺』と『ヨガ』では一見、奇異な組み合わせに映る。「お釈迦さまが菩提樹の下で坐して瞑想に入り、悟りを開いて仏陀になったことが仏教の始まりとされている」「学びを深めていくうちに、仏教もヨガも、同じインドが発祥であり、密接なつながりがあると気づいた」と、境理事長は話す。
真言宗・空海、天台宗・最澄、浄土宗・法然、日蓮宗・日蓮、時宗・一遍、曹洞宗・道元……。仏教の開祖である釈迦自身がヨガの実践者だったこともあって、日本史上で燦然と輝く名僧らもまたヨガを実践していたそうだ。
今日、フィットネス感覚の身体的なエクササイズヨガが世界的に流行しているものの、ヨガ自体は本来古代インドで発祥した瞑想を主とする伝統的な宗教的な修行法だった。
「最近ではヨガ本来の姿に戻りつつあり、マインドフルネスや瞑想などお釈迦さまが実践したヨガが注目されている」と境理事長は、肌で感じる。
ヨガとの出会いは、故障でのリハビリが縁となる
小さい頃から運動神経に秀でてスポーツ少女だった境理事長は、小学生の頃よりバスケットボール選手として活躍していた。そして、スポーツ特待生として福岡大学体育学部へ進学した。
学生時代、バスケットコートを駆け巡っていた境理事長は3年生の時、けがに対するリハビリの一環として出会ったのがヨガだった。
小学生の頃から目を閉じて空想するのが好きだったという境理事長は、すっかりヨガに魅了されていく。恵まれた幼少期を境理事長は過ごしていたものの、父の経営する会社の倒産により大好きだった仲良し家族の風景は暗転して、散り散りとなった。
「子ども心ながらに心落ち着ける時間や自分が安心できる居場所を探していたと思う」と、当時を振り返る境理事長は遠くを見つめる。
そして、ヨガに夢中になった境理事長は、「瞑想すると心が整って気持ち良く、体が柔らかくなった、ゆとりができて考え方も柔軟になった」。
卒業後、いろいろ仕事を経験しながらも、ヨガは我流ながらも一貫して続けていった。
「30歳代になったら、好きなことだけで生きていこう」と決心していた境理事長は当時、〝天空に一番近いヨガスタジオ〟を謳ってイムズにオープンしたヨガ教室のオープニングスタッフとして、ヨガインストラクターに就いた。ヨガスタジオの立ち上げやプログラムづくりなどで多忙な中で出会ったのが、お寺ヨガだった。
天神のヨガスタジオに2年間勤務した後、フリーランスのヨガインストラクターになって後進の育成にも取り組んでいく。もっとも、ヨガインストラクターという資格は人気だったものの、〝資格倒れ〟になっている現実を踏まえて境理事長は、「インストラクター仲間が活躍できる場づくりをしたい」「心と体が開放される心地良さを一人でも多くの方々へ届けたい」「お寺で手を合わせて感謝する美しい心の文化を伝えていきたい」などの思いから『お寺ヨガ協会』を立ち上げた。
「安らぎやぬくもり、安心感を届けていきたい」
「レッスン参加者、お寺さま、インストラクターの〝三方よし〟ができた」と笑顔をみせる境理事長は、2020年の年明けから『お寺ヨガ』の全国ツアーを始めた。しかし、折からコロナ禍によって、文字通り道半ばでの中断を余儀なくされた。
そんな苦境を乗り越えて、境理事長が立ち上げたのが、お寺から配信する『オンラインお寺ヨガ』だった。
「偶然だったことは、ある意味で必然なのかもしれない。子どもの頃、私が求めていた〝安らぎ〟〝ぬくもり〟〝安心感〟などを一人でも多くの人たちに届けていきたい」と、生き生きとした表情をみせる境理事長のまなざしはやさしい。
DATA
名 称:お寺yoga協会
住 所:福岡県宗像市東郷6-9-1-102
発 足:2019年11月23日
代表者:理事長 境玲衣子(サンテリート株式会社 代表取締役)
事 業:お寺でのヨガレッスンの浸透・普及
URL:https://www.oterayoga.jp/
コメントを投稿するにはログインしてください。