【人物図鑑】〝お母さんの実家〟代わりとなる子育て支援サービスで育児ママを応援

株式会社アンジュブラン
代表取締役
舌間陽子

【画像】株式会社アンジュブラン 代表取締役 舌間陽子
株式会社アンジュブラン
代表取締役
舌間陽子

【したま・ようこ】
福岡市出身。1976年10月16日生、香蘭女子短期大学保育学科卒。福岡三越に就職した後、医療事務職に転じて結婚・出産を経験。主婦としての子育て経験をもとに〝お母さんの居場所〟づくりとして2015年2月に福岡市早良区百道で一軒家を借りて認可外託児施設『アンジュブラン百道』を開設。2017年4月福岡市城南区別府に福岡市小規模保育園『アンジュブラン別府駅保育園』を開園。2018年6月、福岡市早良区弥生に本社移転、同地に福岡市一時預かり事業『託児ルーム アンジュブランももち南園』、2019年2月に内閣府認定企業主導型保育園『アンジュブラン保育園中村学園前』、2020年5月『中村学園前』の隣に福岡市一時預かり事業『アンジュアンジュ』を開園させて、計4園を運営する。趣味はネットショッピング、ヨガ、ゴルフ。

【3Points of Key Person】

小規模保育園、企業主導型保育園、一時預かり所の計4園を運営
◎ 子育て中の主婦が起業して〝お母さんの実家〟代わりを実現
◎ 子ども・子育て支援の《質の向上》シフトに応じた新たな挑戦を構想

〝お母さんの実家〟代わりを一時預かりや保育事業で実現

多くの自動車や人々が頻繁に行き交う基幹道路である国道202号に面し、学生らが通う中村学園大学の道向かいにある〝白い〟建物に一歩足を踏み入れると、〝天使〟のような主に0~2歳児の子どもらの笑顔で満ちあふれた空間がある。

「《お母さんの実家代わりになりたい》とのコンセプトでお母さん方が育児の手を休め、息抜きをできることで充実した毎日を過してほしいとの思いで取り組んでいる」
小規模保育園や企業主導型保育園、一時預かり所を運営する株式会社アンジュブランの舌間陽子代表取締役は、はつらつとした表情で瞳を輝かせる。

地方拠点都市である福岡市は、転勤族らの出入りが激しく、1人で子育てをしている母親も多く、時として子育てが〝孤育て〟にもなりがちだという。
また、子育てに追われている母親は自分の時間を取れないばかりでなく、時間を取ること自体に罪悪感を覚えるため、孤独感やストレスにさいなまれていることも多いそうだ。

子育てに追われた主婦時代に自らの経験をもとに起業した舌間代表は、「子どもたちの保育だけでなく、何よりもお母さんらが楽になるような保育や一時預かりのサービスを提供している」ことを明かす。
さらに〝選ばれる保育園〟を目指して、英語や水泳、体操などの習い事も園内で完結できるように提供している。
そして、『親子でアンジュ』をコンセプトにした、母親向けヨガ教室も近く開設する予定だ。一方、母親を対象にしたベテランの保育士による子育て相談も受け付ける。

子育てを追われる主婦の実体験を基に一軒家を借りて起業

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「子どものように無邪気だから、きっと子どもらに好かれるだろう」。高校時代の担任教諭からの声に背中を押されて舌間代表は、保育学科へ進学した。
もっとも、ピアノが苦手だったため、保育士の免許は無事取得したものの、保育業界への道を断念して、福岡三越へ就職した。
百貨店では接客やサービス業の基本を学んだ後、医療事務へ転職して管理や人事、総務などに従事して結婚、出産を経験した。

主婦として子育てに追われる中、〝ママたちの居場所〟づくりと共に自分自身の息抜きの場も兼ね、福岡市早良区百道の一軒家を借りて認可外託児施設『アンジュブラン百道』を開設した。
アンジュとはフランス語で天使を指し、ブランは白いを表す形容詞であり、「白い天使」というフランス語の屋号をもつ施設が誕生したのだ。

主婦からのいきなりの起業であり、経営のイロハも学ばないまま、商工会議所で創業資金を借りてのスタートだった。
かつて事業を営む一家に生まれ育った舌間代表は幼少期、父の事業失敗による経済状況の激変で自分の無力さを味わった経験を持つ。
そして、家庭の内外に自分の居場所さえも失い、「自分の人生を自らの力で生きていこう」「何か事業を立ち上げたい」との思いも長年秘めていたそうだ。

創業時、政府による子育て支援策が本格化する以前の状況であり、待機児童問題が大きな課題だった。
「オープンしたら、待機児童が殺到するだろうと考えていたら、そんなこともなく閑古鳥が鳴く日々だった」と、舌間代表は苦笑いする。
子どもらの居ない託児施設へ通うことで〝不登校〟状態になりかけた舌間代表に対して、家族から「代表なのだから、自分の持ち場へ足を運ぶべきだ」と諭した。

一人、また一人と徐々に預かり所の利用者が増え始めた頃、路上で園児の母親に呼び止められた。
そして、彼女が発した「あの場所ができて、私は救われている」「もしも、あの場所がなければ、幼児虐待に走っていたかもしれない」との言葉を聞き、「自分のために始めた事業が、他人のためにもなって喜ばれ、感謝されている」ことを実感した。
この出来事は、舌間代表にとって大きな転機となった。

そして、膨大な労力や時間を要する福岡市での小規模保育事業の認可取得に挑戦した。
申請締切の寸前になって、届け出た予定施設において1カ所問題点が指摘され、不認可になることがわかった。
このため、舌間代表は不動産会社の担当営業ウーマンに至急の連絡を入れ、急きょ別物件に差し替えた申請で何とか間に合わせた。
その甲斐あって認可が下りると、「本当に嬉しくて、涙が止まらなかった」と、目を細める舌間代表は小規模保育園『アンジュブラン別府駅保育園』を開設した。
小規模保育事業は、企業経営における安定基盤として大きく貢献することになる。

その後、福岡市早良区弥生へ本社を移転し、アンジュブラン百道を移転・開園して、福岡市の一時預かり事業を『託児ルーム アンジュブランももち南園』で始めた。
さらに内閣府認定の企業主導型保育園『アンジュブラン保育園中村学園前』をオープンし、同園の隣に一時預かり所で2軒目となる『アンジュアンジュ』を開園させて、計4園を経営している。

次なるステージへ向けて、新たな挑戦や構想を温める

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「お母さんのため、そしてお母さんが楽になって子育てを楽しめることが私たちの仕事」と考える舌間代表は、「人が好き、そして人に囲まれている時も好き」と、やさしくほほ笑む。
そして、スタッフである保育士らに対して、「忙しい中で激務をこなしてくれている彼女たちのおかげで日々の運営が成り立っている」と、感謝の言葉を口にする。

2012年に子ども・子育て関連三法が発足して10年余りが経過し、子ども・子育て支援策は《量的拡充》から《質の向上》へシフトし始め、次なるステージへ移行しつつある。
このような状況下、「縁と運とタイミング」を尊重しながら、「やらないで後悔するより、やって後悔する方がいい」を座右の銘とする舌間代表は、「新しいアイデアやコンセプトなどで一緒に何か取り組めることがあれば、気軽に声を掛けてほしい」と前向きだ。
子育て主婦による起業物語にとって、第2章ともいえる新たな挑戦は、いま始まろうとしている。

DATA

名 称:株式会社アンジュブラン
住 所:福岡市早良区弥生2-3-2
創 業:2015年2月(設立:2017年4月)
代表者:代表取締役 舌間陽子
事 業:小規模保育園・企業主導型保育園・一時預かり事業
URLhttps://angeblanc-fukuoka.com/

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