【人物図鑑】卒サラという〝Unlearn(捨て去る学習)〟による第二の人生で社会起業家らの〝思い〟を咲かせる
ノマドイルミネーター
西隆行
【にし・たかゆき】
1968年9月28日生、佐賀県小城市出身、佐賀県立小城高校卒~佐賀大学理工学部電機電子工学科卒~同大学院修了。1993年株式会社NTTドコモに入社。NTTドコモデータネットワーク企画担当課長やドコモCS九州システムサポートセンター所長などを歴任。2004年6月九州・アジア経営塾に2期生として入塾、翌2005年6月に卒塾。2022年3月にNTTドコモを退職。趣味はピアノ、合気道。座右の銘は「面南見北斗」、「恭而安(きょうにしてやすし)」。
【3Points of Key Person】
◎ 30年近く勤務した大手通信会社を辞めて、フリーランスへ転身
◎ 鶏口牛尾のニッチ戦略で同期トップ。転機を得て社会起業家を支援
◎〝旅〟をテーマとした人生において、新たな一歩を踏み出す
第二の人生で社会起業家を応援して社会変革を支援
田舎で生まれ育った少年は小学校時代、夏祭りに出店し、舞台の脚本兼監督を務めた。就職した大手通信会社では有名大学出身者らと競い合う中、独自のニッチ戦略で管理職に同期トップでなり、社長賞を獲得。この間に転機を得て社会起業家らへの支援も乗り出す。そして、大きな決断を下した。
株式会社NTTドコモで管理職を務めるサラリーマンだった西隆行さんは2022年3月、会社を辞めてフリーランスの立場に転身した。
「ミドルマネージャー(中間管理職)として長年勤務していた会社が用意した定年退職という制度を経て、第二の人生を歩むというライフプランではなく、自らの決断で辞めてフリーになる道を選択した」「このままサラリーマン生活を続けるよりも、家族との時間をより多くするという人生の方が楽しいという思いがあり、サラリーマンを卒業する〝卒サラ〟を選択した」と、西さんは清々しい表情をみせる。
現在、運動を通した生涯教育やWellbeingのための習慣化に取り組む会社などの支援を手掛ける西さんは、「これまで勤めてきた会社の仕事を卒サラというUnlearn(手放)したことを通じて、新たに社会起業家らを応援して、手伝う機会を得たことは面白い変化だと思う」と、笑みがこぼれる。
自分の時間を大切にしながら、社会や世界を変えていこうとする社会起業家らを支援している西さんは、「世界が1㍉でも平和になればと思っている」との思いで胸をふくらませている。
小学生で脚本兼監督!?〝鶏口牛尾〟で同期トップへ
「ケンカが強いわけでなく、スポーツがとびっきりできるわけでもない。また、勉強もすごくできたわけでもなかったものの、小さい頃からいろいろ企画することが好きだった」と、自らの歩みを振り返る。
小学4年時、花火大会を兼ねた地元の夏祭りでは、仲間と一緒に玩具やクジを作って出店したという〝起業家〟経験もある。
また、小学6年時には国語の教科書に載っていた題材を基に演劇の脚本を書き、学校での上演に際して監督も務めたそうだ。
他人から影響されたり、周りに合わせて行動したりすることなく、自分の頭で考えて自分のやりたいことに取り組むことを〝普通〟と考えた西さんは大学在学中、親に対して「普通に生きていく」ことを宣言した。
そして、就職先として〝普通〟に選んだのは当時、誕生したばかりのNTT移動通信網株式会社(現株式会社NTTドコモ)だった。
同社の1期生として入社した西さんは、当時を振り返り、「結局、縁という言葉での表現しか思いつかない」とする。
実際に入社してみると、同期生は東京大や京都大、慶應義塾大、早稲田大などの有名大学出身者らだった。そして、西さんは、「正面からぶつかっても彼らに勝てないので、『鶏口牛尾』をモットーにしたニッチ戦略を取った」ことを明かす。
具体的には、社内でも少人数の部署への配属を希望した。小規模部署での活躍が評価されて、同期の中でもトップクラスとなる34歳の時に西さんは管理職に就いた。
そして、管理職1年目には、 価値観の転換を社内にもたらしたことで社長賞も獲得している。
その頃、西さんにとって一つの転機が訪れた。「管理職に就いた頃から、仕事面で実績を上げても将来への漠然とした不安があった。そんな時に九州・アジア経営塾(KAIL)に入塾する機会を得た。そこで世界や社会との〝玄関ドア〟があることを知り、世界や社会への見方やアプローチの方法を学んだ」とする西さんは、「世の中にたくさんの勇者が世界を救うために戦っていることを知った」「勇者とは〝自ら問題を拾う者〟であり、自分自身は勇者になり得ないことを自覚したので、≪支援者になりたい≫という思いを募らせた」ことを明かす。
その後、時間のある限り会いたい人に会うように心掛けたという西さんは、「この10年間、意図的に社外の人たちに関わってきた。何よりもKAILを経験したことで私自身、社会性が身についたと思う」との自己評価を下す。
仕事以外で夢中になれ、意図して恥ずかしい体験をすることで、自らを作り直すことにした。6年前から合気道、昨今のコロナ禍に際し、ピアノを五十の手習いで始めた。
最低10年続ける覚悟で入門した合気道では弐段を得た西さんは、「合気道は、稽古の中で時間と空間をどれだけ自分がものにできるのかを考えながら相手と技を作り上げていくというところに面白味を感じている」と語る。
一方、ピアノについては、「世界の広さや深さに一生を賭ける価値があると思う」「時間の芸術であり、消えてなくなる音たちを楽譜という見える化で全世界において共通化していることに一人感動する日々を送っている」と、西さんは目を細める。
「自分の価値観を磨ける居場所の多様化が人生を豊かにする」
「子育てを終えた妻が、再び社会に出ていくことをサポートできていることは、私自身にとって自慢の一つ」と、目尻を下げる西さんは2022年12月、夫人が日本語教師として赴任するインドネシアを訪ねた。
そして、インドネシアにいるならと日本から紹介していただいた現地で活躍する日本人の若者2人とも出会い、大いに刺激を受けた。
「コミュニティの定義自体が劇的に変わった」「自分の価値観を磨ける居場所を見つけ、そこに生息できるかが自分の社会性を豊かにするバロメーターだと思う」そして「どれだけ多様な居場所を持っているかが、人生の豊かさに直結する」と、西さんは考える。そして、座右の銘として禅問答の言葉である『面南見北斗』を挙げる。
多様な居場所を見つけることは、私にとって、「旅」、「〝旅〟は私の人生のテーマであり、自分というモノをカタチつくってきた〝コト〟の連続が『私の旅』になる」とする西さんは、自らの人生における旅において新たな一歩を踏み出した。
DATA
名 称:株式会社gekko’s
住 所:福岡県春日市桜ヶ丘1-11-1
設 立:2016年7月
代表者:代表取締役社長 西美由紀
事 業:不動産管理、観葉植物メンテナンス、国内外でのボランティア活動、社会起業家への支援活動
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