【人物図鑑】〝警固界隈〟での夜回りを通じて若者らの居場所づくりへ踏み出す

【画像】任意団体あいむ 代表 藤野荘子

任意団体あいむ
代表
藤野荘子

【画像】任意団体あいむ 代表 藤野荘子
任意団体あいむ
代表
藤野荘子

【ふじの・そうこ】
1992年9月28日生、福岡市出身、筑紫女学園高校卒~立命館アジア太平洋大学卒。在学中に1年間、バングラデシュのグラミン銀行グループのインターンシップに参加。大学卒業後、金融系ベンチャー企業である株式会社ネットプロテクションズホールディングスに入社。エンジニアとして在職中にうつ病となり、退職して帰福。2019年9月に不登校児を専門とした〝居場所型家庭教師〟を手掛ける任意団体『あいむ』を立ち上げる。

【3Points of Key Person】

警固公園での夜回りによるアウトリーチ活動と居場所型家庭教師
◎ 途上国でインターンシップ、会社を退職しての帰福後に起業
◎ 福岡を基点に九州全域で若者らを対象に居場所づくりを目指す

警固公園で週末に夜回り、若者らに寄り添って支援

【画像】任意団体あいむ 代表 藤野荘子

東京・歌舞伎町のTOHOシネマズ近辺に集まる若者ら『トー横界隈』、大阪・ミナミのグリコ看板下あたりに集まる若者らの『グリ下界隈』。そして、福岡・天神にある警固公園に集まる若者らの『警固界隈』━━━━。

九州朝日放送(KBC)は2022年12月16日、平日朝の情報番組『アサデス。』で放映された『朝イチ スクープ』内で「深夜の警固公園に集結 “警固界隈”と呼ばれる若者たち」というタイトルで彼らを取り上げた。
そして、同番組内においてインタビューを受けたのが、任意団体『あいむ』の藤野荘子代表だった。
警固公園に夜な夜な集まって来る若者らを対象にして、彼らに伴走していくアウトリーチの支援をしている。具体的には週末の金・土・日、夜回りをして若者らに声掛けとなる。そして、居場所の有無や生活の困りごとをヒアリングし、簡単な食糧配布も行っている」

 藤野代表は2019年9月、学校へ行っていない子どもや発達障害を持っている子どもらの家庭教師を手掛ける任意団体『あいむ』を立ち上げた。そして、〝居場所型家庭教師〟を掲げて学校以外の居場所づくりを目指している。さらに警固公園での夜回りによるアウトリーチ活動を始めたのは、2022年7月のことだった。

 「半年近くやってみて、彼らとの信頼関係が徐々に出来上がってきた」と、藤野代表は手応えを感じる。藤野代表によると、不登校や高校中退、貧困、非行などで困難を抱えている若者も多いそうだ。そして、公的な支援を受けていなかったり、支援機関にたどり着けなかったりするケースもあるという。
「子どもたちのどんな『わたしらしさ』にも、あたたかな居場所を」というビジョンを掲げて活動する藤野代表は、彼らを対象にした急性期的な支援や公的支援機関につなげていく取り組みに打ち込む。

途上国でインターン、金融ベンチャーで挫折を味わう

【画像】任意団体あいむ 代表 藤野荘子

APU進学、学習塾でのアルバイト、途上国でのインターンシップ、金融系ベンチャー企業への就職と退職、任意団体の立ち上げ……。
「社会に居場所を作ることができたら……」という藤野代表の思いは、自身の経験に基づくものだった。
藤野代表は学生時代、学習塾でのアルバイトを通じて子どもらにとっての居場所づくりの大切さを知った。
その後、「学生時代に発展途上国で一度、暮らしてみたい」との思いが募り、バングラディッシュでのインターンシップに応募した。
そして、グラミン銀行とユーグレナとの合同会社である『グラミンユーグレナ』に1年間在籍して、現地においてインターンシップ生として活動した。

〝アジア最貧国〟とも称されることがあるバングラディッシュにおいて藤野代表は、「さまざまな社会課題が貧困層にしわ寄せをするという現実を目の当たりにした」
途上国でのインターンシップ後、帰国した藤野代表は、「日本の方が深刻だと思い、日本人の心の貧しさの問題や経済的な格差の拡大など日本の問題に取り組んでいこうと思った」と振り返る。

大学卒業後、〝バリバリ働くキャリアウーマン〟を目指して入社したのは、金融系ベンチャー企業だった。
しかし、配属先であるエンジニア部門において挫折を味わい、うつ病を発症した藤野代表は結局、同社を退職することとなった。
そして、実家のある福岡市に帰って来た藤野代表は、「無職であり、社会的な地位を失い、お金もなかったこともあり、自己肯定感を失って落ち込み、生きづらさを実感した」という経験をもつ。

これまでの歩みを振り返って、藤野代表は自身にとっての転機として、起業家を伴走支援するプログラムに採択されたことを挙げる。
社会起業家の登竜門で知られるNPO法人『ETIC.』(東京都渋谷区)が提供する、起業家向け伴走支援プログラム『社会起業塾イニシアティブ』で学んだ。
そして、藤野代表は社会起業塾での経験を踏まえて、「自ら立ち上げた団体である『あいむ』そのものや活動自体への覚悟が大きく違ってきた」ことを明かす。

福岡を基点に九州全域で若者らの居場所づくりを志向

【画像】任意団体あいむ 代表 藤野荘子

「今後 3~5年は福岡において子どもらへの支援をやっていこうと思う。そして、10~15年後には九州全域での子どもや若者らの居場所づくりに取り組みたい」との思いを膨らませる藤野代表は、実現に向けた課題の一つとして、活動資金の獲得を挙げる。
現在、募金活動に加えて助成金も申請中だ。そして、〝世代を超えて教え教えられる〟多世代交流も可能な居場所づくりに向けて、大きく踏み出している。

「自分の価値観を大切にして生きられる社会をつくっていきたい」と考える藤野代表は、「社会課題に関心を持って、きちんと意思表明をすることが大事になってくる」とする。
具体的には、関連記事のシェアによる紹介や寄付行為、関連政策を掲げる候補者への投票などを挙げる藤野代表は、「意思を表明することが、未来づくりにつながる」と説く。

古代中国の思想家であり、老荘思想で知られる荘子曰く、「徳をもって人に分かつ、これを聖という」「財をもって人に分かつ、これを賢という」。

DATA

名 称:任意団体あいむ
住 所:福岡市中央区大名2-10-4
創 業:2019年09月
代表者:代表 藤野荘子
事 業:居場所型家庭教師、警固公園での伴走型のアウトリーチ活動
URLhttps://aim-education.com/

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