【人物図鑑】ボランティアとして取り組む道が、〝人生の旅〟を彩り豊かにしていく

【画像】株式会社gekko’s 代表取締役社長 西美由紀

株式会社gekko’s
代表取締役社長
西美由紀

株式会社gekko’s
代表取締役社長
西美由紀

【にし・みゆき】
1967年2月28日生、福岡市出身、福岡県立春日高校卒〜辻あべの調理師専門学校卒。現在、放送大学教養学部教養学科(社会と産業コース)に在学中。仕事や子育ての傍ら長年、ネパールやベトナム、タイでの支援活動をはじめ、東日本大震災や九州北部豪雨などでの災害ボランティア活動、さらに社会問題や教育問題に取り組む。2019年春、独立行政法人国際交流基金『日本語パートナーズ』派遣事業のメンバーとして、タイの中高一貫進学校の日本語専攻科に日本語アシスタントとして赴任。2020年2月に帰国後、『日本の次世代リーダー養成塾』の担任として全国から選抜された高校生らを指導。座右の銘は「自分に起こる全てのことに意味がある」「LIFE IS JOURNEY」。趣味は旅、ジャザサイズ(ダンスフィットネス)

【3Points of Key Person】

◎ ネパールを中心にベトナム、タイでの海外支援と共に国内でも活動
◎ バイクでの単独北海道一周が成功体験となって国内外へ猛進
◎《でも》《だって》などの逆接からの脱却を説く〝旅する母ちゃん〟

ネパールをはじめ国内外でボランティア活動

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傷心の北海道バイク一周、シルクロードのバイク走破、バックパッカーとしてのアジア放浪、バイク事故がきっかけの闘病生活、ネパールでのボランティア活動、子育て卒業旅行が転じたネパール復興支援、日本語パートナーズとしてのタイでの日本語教育……。

「自分に起こる全てのことに意味がある。今までやってきたことは役立ち、全てが繋がっている」と、株式会社gekko’sの西美由紀代表取締役社長は歯切れよく語る。
不動産管理をはじめ、観葉植物のメンテナンスやフラワーアレンジの製造・販売などを手掛ける西社長は、「社名は、gekko=ヤモリと月光を掛けて命名した。経済活動だけでなく、家や家族の幸福を守ると言われるヤモリ(家守り)と一隅を照らす月光のように社会貢献活動にも取り組んでいる」と解説する。

社業と共に西社長はネパールでの支援活動をはじめ、ベトナムでの孤児院支援、東日本大震災や九州北部豪雨など国内外でのボランティア活動で八面六臂の活躍をみせる。
独立行政法人国際交流基金『日本語パートナーズ』派遣事業でタイの中高一貫進学校の日本語専攻科に赴任して2020年2月に帰国した西社長は同年夏『日本の次世代リーダー養成塾』のクラス担任も務めた。

波瀾万丈、北海道一周からアジア諸国へ向かう

【画像】株式会社gekko’s 代表取締役社長 西美由紀

「バイク好きだった彼氏との大失恋で北海道バイク一周に挑んでスタート時は素人同然だったものの、1カ月半かけて達成して≪やれば、できる≫ことを体感し、人生が変わった」と、西社長は笑顔で語る。
当時、女性のバイク一人旅は珍しく注目を浴びた。これをきっかけにテレビ局が企画したアントニオ猪木氏が率いるバイクでシルクロードを走破するメンバーの一人として参加した。
当時、国会議員だった猪木氏はスポーツ平和党代表でもあり、現地では国賓扱いだった。もっとも、番組自体は未放映で幻に終わったものの、西社長自身は、「旅先で聞いたアジアへの旅行話に刺激されて、バックパッカーとしてタイやインドなどアジア諸国を放浪するようになった」。

ツーリングで知り合ったバイク仲間の伴侶と結婚。レース練習中の事故で骨折した時、偶然、婦人科系の病気も見つかり「子どもは出来にくい」と医者に告げられる。手術後、1年半の投薬治療を続けながら出掛けた新婚旅行先はネパールだった。夫婦でネパール山麓の村々をバイクで駆け巡った。「ネパールは素朴で人柄も良く、古き良き日本そのもの」と顔をほころばす。

帰国後のキャンプ場で偶然、隣り合わせた女性からネパールで日本人神父が営む障害児施設や、日本人シスター開設のスラムの保育園の話を聞いた西社長は単身、ボランティアとして現地へ赴く。
標高の高い山道での自転車通勤や野菜中心の食生活。4カ月間、昼はボランティアとして、夜は宿泊施設でコックとしての腕も振った。
「帰国すると健康体になっており、病気で難しいといわれたが、奇跡的に息子2人を授かった。この奇跡の恩返しで今もボランティアを続けている」と、西社長は目を細める。

その後、保育園に子どもたちを預けて働こうとした際、入園先がないという現実に直面。「多くの人が、預け先がなくて困っている。〝じゃあ私が理想の保育園をつくろう〟」と決意した西社長は、日当たり良好で公園や駅に近い立地に、自分の子と園児、その保護者が安心できる環境面や保育内容の質にこだわった、母親目線の小さな保育園を開園。
ネーティブスピーカーによる英会話をはじめ、水泳教室や複数園と共催した大運動会、芋掘りなど多彩なカリキュラムが話題を呼んで、認可外保育園にも関わらず、待機児童が発生するほどの人気園となった。

開園10年目、小学5年生になった長男に難病の腫瘍が見つかり、九大病院で検査を重ねた末、手術することになった。1年間思い悩んだ西社長は、全園児の転園を見届けて閉園という決断を下した。
手術後、完治した長男は医師への道を目指していく。「0歳からアジアを連れ回した二人の息子は現在、どちらも国際性を目指す大学に進み、《蛙の子は蛙。今後のライバルは息子ら》」と西社長は明るく笑う。                                                

2015年、「次男が義務教育を終えたタイミングで〝母親としての子育て義務卒業〟を宣言し、久しぶりに海外一人旅の〝卒業旅行〟へ出掛けよう」とした西社長は出発直前、行き先のネパールで大地震が発生。急きょ大量の支援物資を抱えて被災地入りした。
物資を届けに行った山奥の小中高校『ソーラパニ村学校』の校長から学校再建を依頼された。帰国後、寄付金集めや現地産品の販売、さらに各方面に協力を仰ぎ、3年後、2階建て校舎の完成にこぎ着けた。
2019年春、アセアン諸国で日本語教師をサポートしながら〝生きた日本語〟を教える人材を派遣する『日本語パートナーズ』に高倍率のなか選ばれた西社長は、公用の緑色パスポートを携えてタイへ渡った。
赴任先で空き教室の清掃から始め、熱意ある指導をし、日本語コンテスト大会に初挑戦させた。出場した4組中3組が上位大会へと駒を進め、全国大会において金賞1組、銀賞2組という好成果を上げた。
一方、世界経済フォーラムの『グローバル・ジェンダー・ギャップ指数』で調査対象153カ国のうち日本が121位と知った教え子からの「日本は男女平等でないの?」という質問は、胸に突き刺さった。

〝旅する母ちゃん〟の人生という旅は続く

【画像】株式会社gekko’s 代表取締役社長 西美由紀

「真のボランティアとは金品を与えるのでなく、教育を通じて成長してもらうことだ」という西社長は2020年4月、放送大学教養学部教養学科(社会と産業コース)に自ら入学。自分ももっと成長し、学びたい。貪欲に知識を深めて社会問題を解決する糸口を探りながら、世界に“日本のよさ”を伝えていきたい。これまでの活動を通じて国内外で次世代を担う有望な人たちと出会えたので、彼らとのビジネスも視野に入れた交流をしていきたい」と語る。

「夫や息子らの強力なプッシュと、周りの方々の協力のおかげで活動することができる、全てに感謝、やれば出来る。《でも》《だって》などの逆接からの脱却」を説く。
〝旅する母ちゃん〟を自認する西社長にとって〝人生という旅〟は果てしなく続く。

DATA

名 称:株式会社gekko’s
住 所:福岡県春日市桜ヶ丘1-11-1
設 立:2016年7月
代表者:代表取締役社長 西美由紀
事 業:不動産管理、観葉植物メンテナンス、国内外でのボランティア活動

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