【人物図鑑】大学での実践的な学生教育に就業体験やプロジェクト学習を積極活用

【画像】九州産業大学 商学部 学部長・教授 聞間理

九州産業大学 商学部
学部長・教授
聞間理

九州産業大学 商学部
学部長・教授
聞間理

【ききま・おさむ】
1973年1月19日生、浜松市出身、静岡県立浜松北高校卒~横浜国立大学経営学部国際経営学科卒~横浜国立大学大学院国際開発研究科(博士課程後期)単位取得満期退学。九州産業大学経営学部講師、オーストラリア国立大学理学部心理学科フェロー、九州産業大学経営学部准教授、経営学部教授を経て2018年4月から現職。専攻分野は経営学。研究テーマは「個を活かす組織の研究」。著書に『インターンシップのプロになる』(共著 2015年11月)がある。レゴ®・シリアスプレイ®TMトレーニング修了認定ファシリテーターの資格も持つ。福岡女子大学の社会人学び直し大学院プログラム『イノベーション創出力を持った女性リーダー育成プログラム』、文部科学大臣認定事業『職業実践力育成プログラム』(BP)のモジュール・ディレクター、JAくるめネットワークアカデミー講師、福岡市こども未来局『夢チャレンジ大学』講師などを歴任。趣味は美術館巡り。

【3Points of Key Person】

◎九州産業大学の学部再編による〝新生〟商学部の初代学部長
◎ 浜松出身で横国に学び、九産大で独自のPBLを立ち上げる
◎ レゴ®・シリアスプレイ®のファシリテーターとして多方面で活動

〝新生〟商学部の2年生3、400人が現場学習へ

【画像】九州産業大学 商学部 学部長・教授 聞間理

人口1000人あたり学生数69.6人――。『数字でわかる福岡市のいま』(福岡市:2020年9月版)によると、福岡市内の大学生数は7万2980人を数え、人口あたりの学生数では、京都市に次いで20政令指定都市の中で第2位だ。
福岡市内にキャンパスを構える総合大学の一角である九州産業大学は1960年に九州商科大学として開学し、卒業生は12万人にもおよぶ。2020年の開学60周年に向けた教育改革として芸術学部の5学科再編をはじめ、理工系の3学部7学科、文系5学部9学科の再編で文・理・芸の学部横断型の教育プログラムへ移行した。

旧商学部と旧経営学部との学部再編・合併で誕生した〝新生〟商学部の初代学部長である聞間理教授は、「大学とは先人たちの知恵を借りながら、《これから自分がどう生きていくか》を思索する場所でもある。大学には答えを考えていく上での仲間もいるので、一緒になって取り組んでいくことが大事だ」と考える。
現在、同学部で最も力を入れている教育的な取り組みの一つが、インターンシップだ。大学2年時に実施するインターンシップでは、学部定員500人のうち、実施初年だった2019年度には約8割の学生が参加した。コロナ禍で一挙にオンライン授業が浸透した2020年度においても約6割の学生が、リアルな現場に飛び込むなど、〝大所帯〟でのインターンシップの実施に注力する。
「インターンシップにおいても地元企業や地域の方々と一緒になって、プロジェクトとして取り組んでいきたい」「社会が加速度的に変化していく状況下、いかに生き抜くか、新たな事業をどうやってつくり出していくのかについても常にアップデートしながら、時代に合った教育を実践していきたい」と、意欲的に語る聞間学部長自身も週に12コマの講義を担当するなど、多忙な日々を送る。

世界水準の学び・PBLが学生の心に火を着け

【画像】九州産業大学 商学部 学部長・教授 聞間理

「モラトリアムな学生だった私は、大学院進学をきっかけに組織論に取り組んだ結果、研究者への道を進むことになった」と明かす聞間学部長は、ホンダの発祥地であり、スズキが本社を構える自動車工業都市・浜松で生まれ育った。
日本第2位の大都市・横浜で学生・院生時代を過ごした聞間学部長は、恩師の指導教官と池内秀己九産大商学部教授が同門だったこともあって、縁もゆかりもない九州へ赴任する。「いま振り返ると当時は、将来的なイメージやビジョンも描けないまま、福岡へやって来た」という聞間学部長の福岡在住歴は20年にもおよぶ。

近年、大学教育で『プロジェクト教育』(PBL:Project Based Learning)」が活発化する中、いち早くPBLに取り組んだ九産大では、数多くの学生が民間企業やNPO、自治体などとの共同プロジェクトによる〝学び〟の現場へ飛び込んでいる。
PBLとは、1990年代半ばに米国ミネソタ州の教員グループが思春期の生徒向けに開発した教育手法だ。個人や小グループがテーマを選び、プロジェクトとして取り組むことで自ら学んでいく。米全土をはじめ、海外からも注目を集め、世界最大の慈善基金団体であるビル・ゲイツ財団が400万ドルを寄付したことでも知られる。

今日、『KSUプロジェクト型教育』を打ち出す九産大だが、ここに至るまでには、幾多の困難と試行錯誤があった。九産大でのPBLのルーツとなったのは、2003年に経営学部産業経営学科に設けられた事業開発コースだった。ベンチャーブームを背景にしたベンチャービジネス論については、「当初、起業家精神や基礎知識など座学中心だったため、学生の琴線に触れることなく見事に失敗した」。
この反省を踏まえ、聞間学部長ら教師陣は、≪どうすれば、学生が自ら燃えるのか≫から模索を始めた。そして、当時の『ベンチャービジネス論』を、学生がチームを組んでプロジェクトを企画・提案・実行するPBL型の『事業開発演習』へ進化させていった。チームを強くするために学生たちにコーチングなども学ばせた。

PBLを導入して10年余りが経過した今日、「学生が、やりたいことをカタチにしていく、地元企業やNPO、地域の人たちと一緒にチャレンジして、共につくっていく独自の取り組みに対して一定の評価を得ることができた。今後は、社会的に求められるプロジェクトへのステップアップを図っていきたい」との思いを描く聞間学部長は、学部再編を踏まえたフルバージョンアップに意欲をみせる。

「自分の未来を自分で切り開いていく」

【画像】九州産業大学 商学部 学部長・教授 聞間理

「世の中がどんどん変わっていき、先の読めない時代だからこそ、《どう生きるか》《どんな未来にしたいのか》を考え、誰かに委ねることなく、自分の未来を自分自身で切り開くことが大事だ」と、エールを送る聞間学部長は、レゴ®・シリアスプレイ®TMトレーニング修了認定ファシリテーターの資格も持つ。
遊びと学びを融合させた問題解決型の〝新しい学びの道具〟として、世界的に人気の高いレゴ®ブロックを手に、「レゴ®で本当の自分に気づき、自分だけの答えをつくることができる」とにこやかな表情をみせる聞間学部長は、学外での社会教育活動にも熱心だ。
「世の中の広さと奥深さを知り、人間的なスケールの大きさをいかに身に着けるかにチャレンジして、いろいろ試みている」とする聞間学部長にとって、〝個を活かす組織の研究〟を実践する日々は続く。

DATA

名 称:九州産業大学
住 所:福岡市東区松香台2-3-1
開 学:1960年4月
代表者:理事長 津上賢治、学長 北島己佐吉
事 業:総合大学
URL:https://www.kyusan-u.ac.jp/

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