【人物図鑑】〝変わらない〟ために変わり続ける〝めんたいこ〟ベンチャー精神

【画像】株式会社ふくや 代表取締役社長 川原武浩

株式会社ふくや
代表取締役社長
川原武浩

【画像】株式会社ふくや 代表取締役社長 川原武浩
株式会社ふくや
代表取締役社長
川原武浩

【かわはら・たけひろ】
1971年11月7日生、福岡市出身、修猷館高校卒~国学院大学法学部卒。イギリス遊学後、1998年4月株式会社博多座に入社、開業準備などを手掛ける。2004年4月株式会社ふくやに入社して、朝日ビジネスコンサルティング株式会社に出向、九州・アジア経営塾に1期生として学ぶ。2006年4月株式会社福岡サンパレス経営企画室室長、同年8月同社代表取締役社長、2008年8月同社取締役会長に就任。2007年6月株式会社ふくや取締役統括部長、2015年4月同社取締役副社長を経て、2017年4月同社代表取締役社長に就任。創業者・川原俊夫氏の孫にあたる。アビスパ福岡株式会社取締役(非常勤)、劇団『クロックアップ・サイリックス』主宰も務める。趣味はサッカー観戦、演劇(観劇・作劇)、ブラックジャック、手品、プログラミングなど。

【3Points of Key Person】

◎ ふくやの5代目社長として、企業経営のかじを取る創業者の孫
◎ 元パソコン少年で演劇人、関連会社の再建を果たして社長就任
◎ 『めんたいこ味』の新商品群で世界市場を目指す

商品開発をDNAとするベンチャー企業・ふくや

【画像】株式会社ふくや 代表取締役社長 川原武浩

「おいしさ、ひとすじ」――。創業以来の思いを理念に掲げる株式会社ふくやは今日、〝変わらない〟ために変わり続けている。
ふくやは元々ベンチャー企業であり、いまでも商品開発を〝DNA〟とするベンチャー企業として、世の中においしさや便利さなどの感動を届けている」と、株式会社ふくやの川原武浩代表取締役社長は、にこやかな表情をみせる。

博多名物・辛子めんたいこを世に送り出したふくやは今日、辛子めんたいこの製造・販売をはじめ、食材・食品の小売り・卸売りに加えて、辛子めんたいこの卸売りやめんたいこ関連の新商品開発などの新規事業を手掛ける。
創業以来、ふくやの辛子めんたいこは直売のみだったが、2015年に別ブランド『ふくのや』を立ち上げて、百貨店・量販店への卸売りという大転換を行った。そして、創業70年の2017年には、グループ企業の資本関係の明確化や企業統治の強化を目的に持ち株会社体制へ移行して、M&Aや株式公開などの経営判断の迅速化を図る。

一連の経営改革の背景には、自社の経営環境に対する危機感があった。
「辛子めんたいこの主力マーケットだった贈答市場が減少し、お客さまも高齢化している。このため、お客さまの日常の食卓でもお役に立てるような、おいしくて便利なめんたいこ関連の新商品を開発中」と、川原社長は前向きな姿勢で臨む。
「『めんツナかんかん』の成功で商品開発がうまく動き出した」とする川原社長は、「実は間一髪で危なかった」と明かす。
着想~販売に2年を要して、最初の1年は自社での一貫的な取り組みにこだわった結果、商品化の道筋が見えなかった。このため、トップダウンによる決断でツナ缶専門メーカーに委託して、一気に商品化して発売にこぎ着けた。
この時、他メーカーも同様の商品を準備中だったのだ。「思い立ったら、まず試してみる。二番煎じになりたくなければ、まずは作ったものを発売して、お客さまの声で改良しながらより良い製品に仕上げていく」ことを持論とする川原社長は、「辛子めんたいこ自体も創業者が長年の試行錯誤をした末につくり上げた商品であり、結果的に創業者と同じことをやっている」と説く。
この成功体験が契機になって、ふくやでは専門食品メーカーとのタイアップによる商品開発スタイルへ切り替え、相次ぐ新商品の投入を可能にした。

演劇経験が経営で生き、仕組みづくりで奏功

【画像】株式会社ふくや 代表取締役社長 川原武浩

「元々継ぐ予定で無かったので、演劇にどっぷり漬かっていた」と打ち明ける川原社長は〝創業者・川原俊夫を知る最後の世代〟だ。
創業者の孫にあたる川原社長は祖父について、「開け広げな性格で涙もろく、とにかく面白い人だった。経営する立場に就いてみると、改めて納得して理解することも多い」と目を細める。

子どもの頃、パソコン少年だったという川原社長は、「第1次パソコンブームの時期で、《ゲームをしたい》との一心から雑誌に載っていたプログラムコードを改造しながら手入力していた。フローチャートが書けるという風変わりな子どもで、仕組みづくりに興味を抱いて、いろいろな取り組みや活動をチャート解析することに夢中だった」と、当時を懐かしむ。

高校時代、サッカー部員だった川原社長は、文化祭で演劇部の大道具を手伝い、さらに騙されて役者として舞台に立ったことが演劇との出会いだった。
演劇は人と人とのアナログな世界であり、役者同士の価値観のぶつかり合いなどを通じてベストな作品を作り上げていく。いろいろなベクトルをまとめていく点で経営にも通じる面がある」と、演劇の経験は企業経営にも生きている。

大学卒業後、イギリスへ遊学した川原社長は〝放課後〟にカジノへ通って、得意のブラックジャックで演劇やミュージカルの観劇代を稼いだ。
帰国後の1998年4月株式会社博多座に入社して、1年後に迫った開館準備で寝る間も無い忙しさに追われた。
ふくやに入社したのは2004年4月。入社と同時に地元の経営コンサルティング会社へ出向して簿記会計を学び、九州・アジア経営塾の第1期生として通いながら、5社の企業再建案件でアシスタントを務めた。
武者修行を終えると、関連会社である福岡サンパレスの経営再建へ社長含みで送り込まれた。
「初の経営経験。現場で実行できるように頭でっかちにならずに易し過ぎず、個人の現場力だけに頼らずに仕組みで改善していくように努めた」と、川原社長は振り返る。
ネックだった駐車場不足に商機を見出し、敷地内での駐車場拡張で売り上げ増を図った。さらにロッカーや自販機の増設という人手を介さずに無人で稼ぐ仕組みづくりと部門別会計によるホテル、ホールの収益改善が奏功して経営再建を果たした。その後、ふくやに戻り、副社長を経て2017年4月社長に就任した。

『めんたいこ味』で世界との勝負に挑む

【画像】株式会社ふくや 代表取締役社長 川原武浩

「生の『辛子めんたいこ』で〝技〟を極めていく一方、生でない『めんたいこ味』商品を世界中へ広めていきたい」と、川原社長の思いは膨らむ。
従来、良質な食材にシンプルな味付けでおいしさを追求してきたが、今後は食材の弱みを消しながらおいしさを引き出していく技術も研究・開発する考えだ。
一方、〝辛うまい〟という、めんたいこ味は世界的にも希少な辛み調味料であることから、『味の明太粉(こな)』や『明太醤(じゃん)』などの新商品群を国内外へ投入する。


「基本的に伸びているマーケットで勝負し、自社の強みが生かせる土俵で勝つ」とする川原社長は、趣味の一つである演劇で劇団を主宰する。
そして、好きな言葉として、「一番憎むべき狂気とは、あるがままの人生にただ折合いをつけてしまって、あるべき姿のために戦わないことだ」(ミュージカル『ラ・マンチャの男』)を挙げる。

DATA

名 称:株式会社ふくや
住 所:福岡市博多区中洲2-6-10
創 業:1948年10月5日
代表者:代表取締役社長 川原武浩
事 業:辛子めんたいこの製造・販売、各種食料品の卸・小売
URLhttps://www.fukuya.com/

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