【人物図鑑】鶏ビジネスの垂直統合モデルで新たなステージへの飛躍を期す

トリゼンホールディングス株式会社
代表取締役
河津善博

【画像】トリゼンホールディングス株式会社 代表取締役 河津善博
トリゼンホールディングス株式会社
代表取締役
河津善博

【かわづ・よしひろ】
1954年1月2日生、福岡市博多区吉塚出身、西南学院高校卒。高校卒業後、有限会社とり善(現トリゼンフーズ株式会社)に入社、1998年同社代表取締役に就任。2015年10月同社会長に就任。2019年10月、持ち株会社制への移行によるトリゼンホールディングス株式会社の設立に伴って、代表取締役に就任。同社傘下のトリゼンフーズ株式会社およびトリゼンダイニング株式会社の会長、トリゼンオーシャンズ株式会社の社長も務める。趣味はシャンソン、座右の銘は「人間万事塞翁が馬」。

【3Points of Key Person】

鶏ビジネスで垂直統合事業を展開する持ち株会社の代表者
◎ 家業の鶏肉店を食品加工、通販、飲食、農業・海洋事業などへ拡大
◎ 創業地である福岡市・吉塚をリトルアジアマーケットで活性化

町の鶏肉屋を業祖とするホールディングス企業

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水炊き、焼き鳥、がめ煮、かしわ飯……。福岡には鶏肉を用いた料理が多い。総務省統計局『家計調査』によると、福岡市は鶏肉への年間支出金額で全国の主要52都市中1位だった。福岡は〝鶏好き〟の土地柄といえる。

ブランド鶏『華味鳥』の養鶏事業をはじめ、鶏肉の卸売や食品加工、さらに『水たき料亭 博多華味鳥』に代表される外食産業まで幅広く手掛けるトリゼンホールディングス株式会社の河津善博代表取締役は、「われわれは小さい会社なので、スケール競争をする大手と違った戦い方をしていくためにも差別化した商品の開発に取り組んできた」「さらに付加価値をつけていく取り組みを重ね、その結果として、垂直統合モデルと呼ばれる事業形態になっていた」と解説する。
トリゼンホールディングスは、食鳥肉卸・製造・販売のトリゼンフーズ株式会社、飲食事業・通販事業・ペットフード事業のトリゼンダイニング株式会社、海洋・農業環境事業のトリゼンオーシャンズ株式会社を傘下に持ち、さらにグループ企業としてトリゼン食鳥肉協同組合を有する企業集団だ。

ブランド鶏を武器にした鶏ビジネスの垂直統合モデルは、テレビ東京の人気番組『カンブリア宮殿』においても2019年3月14日放送分で取り上げられた。
「町の鶏肉屋さんから絶品&独自の鶏ビジネス!失敗だらけの50年戦争」というタイトルだった同番組内において、「人間万事塞翁が馬」を座右の銘として書き記した河津代表は、「良かれと思ったことが悪いことにつながり、失敗したと思ったことが次の成功への導火線だったりする。失敗するたびに、またちょっと成功すると、先の成功や失敗につながっていると考えながら、いまを生きている」と真意を語った。
番組でインタビュアーを務めた作家の村上龍氏は編集後記で「九州人だなと思う。挑戦が好きで、満足を知らない」と記した。

鶏ビジネスで約半世紀、陸から海へ挑戦していく

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小学校6年生時の文集に「後継ぎ」というタイトルで作文を書いた河津代表は高校卒業後、同級生らが大学などへ進学していく姿を横目に見ながら、実家の有限会社とり善(現・トリゼンフーズ株式会社)に入社した。
「早く実社会で仕事をしたかった。他人と同じ道を進むと、≪十把一絡げになってしまう≫という意識もあった」ことを河津代表は明かす。

入社時、店舗販売分の仕入れ確保を目的に参入した養鶏事業は進出3年目だったものの、赤字続きだった。
このため、5カ所あった養鶏場のうち、1カ所のみを直営として残し、他は業務委託先へ譲渡した。その後、自然に近い環境下で海藻やハーブ、米ぬかなどを配合した独自の餌で育てるブランド鶏『華味鳥』を開発した。1988年に発売した華味鳥は、同社の代名詞となった。

その後、華味鳥を食材に用いた水炊きセットの販売で通信販売事業へ進出した。
さらに1995年に『水たき料亭 博多華味鳥』を開店させて、飲食事業への参入を果たした。
「失敗の連続で開店初日に閉店したこともあり、黒字化まで7年掛かっった」と、河津代表は苦笑いする。現在では、地元・福岡を拠点に東京・銀座をはじめ7都府県と海外で38店舗を展開している(2020年9月時点)。

九州農政局『九州の畜産』によると、全国で飼養されているブロイラーは1億3823万羽で、うち半分強の7012万羽は九州で飼養されるなど、九州は〝鶏王国〟だ。
近年、養鶏場経営の大型化が進み、処理場も機械化で工場化していく状況下、河津代表は2002年に社運を掛けた大型処理工場の建設に踏み切った。当初、1・2年目は赤字、3年目の収支均衡を経て、4年目に黒字化する計画だったが、「3年目も大赤字で身震いした。4年目に現場の奮闘もあって黒字化できた」と述懐する。

幾多の挑戦を試みて、そして数々の失敗を乗り越えてきた河津代表は、「従来〝厄介者〟扱いだった鶏ふんを用いた画期的な肥料を開発できた。近年、注目され始めた〝海の貧栄養〟状態も鶏ふん由来肥料を応用した海洋栄養ブロックを〝海の肥料〟としていくことで海の恵みを取り戻していきたい」と意気軒高だ。

福岡市・吉塚にリトルアジアマーケット誕生

【画像】トリゼンホールディングス株式会社 代表取締役 河津善博

2020年12月1日、福岡市・吉塚に『リトルアジアマーケット』が誕生――。九州経済産業局による『商店街活性化・観光消費創出事業』の採択案件が、吉塚商店街におけるリトルアジアマーケット事業だ。
リトルアジアマーケット事業では、商店街の空き店舗へのアジア各国の飲食店や店舗を誘致していくことで国際色豊かな商店街として、新たなにぎわいを生み出していく。さらに外国人らが集うカフェラウンジや外国人相談所も設けることで外国人サポートにも力をいれている点も特色だ。

吉塚商店街連合組合会長も務める河津代表は「生まれ育った地元の活性化図っていくと共に、コロナ禍で仕事を失った留学生や就労生・研修生ら外国人を応援していく事業だ」とする。
アジア好きであり、特にミャンマーへの渡航は40回余りを数える河津代表は、「彼らを応援していくことによって、われわれ自身も彼らからパワーをもらっていることに気づいた」と、すがすがしい表情をみせる。

DATA

名 称:トリゼンホールディングス株式会社
住 所:福岡市博多区千代1-8-13
設 立:2019年10月(創業1949年)
代表者:代表取締役 河津善博
事 業:食鳥肉卸・製造・販売、飲食事業・通販事業・ペットフード事業、海洋・農業環境事業
URLhttps://www.torizenfoods.jp/

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