【人物図鑑】地域振興や企業変革で実績。〝人財〟育成や早生桐でのCO2削減に挑む
特定非営利活動法人九州・アジア経営塾 理事長兼塾長
株式会社SUMIDA 代表取締役
橋田紘一
【はしだ・こういち】
1942年9月29日生、福岡市出身、福岡県立修猷館高校卒~慶應義塾大学経済学部卒。1966年4月九州電力に入社、1996年宮崎支店長、1997年理事宮崎支店長、1998年理事総務部長、2001年6月同社常務取締役に就任。2007年6月九電工代表取締役社長に就き、2013年6月同社代表取締役会長、2014年6月同社取締役相談役、2015年6月同社相談役を歴任。2014年6月九州・アジア経営塾 理事長兼塾長、2016年6月筑邦銀行取締役(監査等委員)に就任。2015年11月株式会社SUMIDA取締役就任を経て、2018年4月同社代表取締役に就く。2019年6月誠和コンサルティング株式会社を設立し、代表取締役会長に就任。趣味は柔道、音楽鑑賞。
【3Points of Key Person】
◎ KAIL塾長として〝人財〟育成や早生桐の普及をライフワークとする
◎ 九電で地域振興に尽力、九電工社長として企業改革で実績を上げる
◎ 環境関連会社を引き受けて事業転換、新規事業創出の新会社を設立
KAIL3代目塾長、事業家として早生桐でCO2を削減
「残りの人生を〝人財〟育成と早生桐に賭けていく」━━。
特定非営利活動法人九州・アジア経営塾(KAIL)の理事長兼塾長を務める橋田紘一・株式会社SUMIDA代表取締役は、八十路を迎えても、はつらつとした表情で力強く語る。
九州や日本、アジアの近未来を支える次世代リーダーを育成するKAILに加えて橋田代表は長年、新たな中高一貫校の開設に尽力してきた。
同校は2025年春、北九州市内に開校する予定で、人づくりのタネ撒きは着実に花を咲かせようとしている。
一方世界的な脱炭素の潮流を踏まえ、九州でのCO2吸収量がCO2排出量を上回って実質的にCO2 をマイナスにしていく『九州CO2ネガティブアイランド』構想を打ち出す。その〝切り札〟が4〜5年で高さ10メートル超の巨木になる『早生桐』だ。
日本に自生していた桐が米国に渡って誕生した早生桐のCO2吸収量は多く、杉の3倍やユーカリの4.5倍も吸収する。
具体的には、九州で1 人あたり1 本の早生桐を植えることで1300万本を植樹した場合、年間55万~80万トンものCO2を吸収して、九州をCO2ネガティブアイランドへしていく上での弾みにしていく考えだ。
「座右の銘である『一期一会』の精神を重んじながら、〝世のため・人のため〟に『利他の心』で〝廃棄物を有価物に〟変えていく」とする橋田代表は、自ら経営するSUMIDAで早生桐と共に無臭乾燥機『チッキ・バリュー・リサイクル・ドライヤー(CVRD)』を取り扱う。
CVRDでは、イノシシをはじめとする害獣個体、作り過ぎや不揃いで廃棄される野菜類、ラーメン店での使用済み豚骨や鶏ガラなどをリサイクルすることで肥料や飼料などに加工していくことが可能だ。
CVRDを用いて、これらの廃棄物を有価物に加工・製造、販売を手掛ける団体として『Re-Gaia共同組合』を2020年4月に立ち上げ、代表理事として事業の推進化に向けて旗を振る。
九電で地域振興、九電工での企業改革で株価10倍
九州国際重粒子線がん治療センター、博多港の再生・活性化、九州・アジア経営塾、福岡地域戦略推進協議会、九州国立博物館、福岡空港建設促進協議会、世界水泳選手権誘致、福岡オリンピック招致運動……。
九州電力総務部長~常務時代に数々の地域振興に取り組んできた橋田代表は、「いろいろ大変な案件が多かった半面、意義のある仕事であり、やりがいと達成感も大きかった」と振り返る。
そして、九電工社長に就任後、自ら率先して企業改革に取り組んだ。橋田代表は就任直後、全社的な経営課題に取り組む部門横断組織としてクロスファンクションチームを立ち上げた。
会社としての強みや弱みを洗い出しながら、課題解決に向けて徹底的に議論した。
さらに全事業所を行脚して現場へ足を運び、一般社員らと肩書き抜きで本音を語り合うオフサイドミーティングも精力的に開いた。
太陽光発電事業への参入をはじめ、東京本社化による首都圏強化、積極的な海外事業の展開などを織り込んだ五カ年の中期経営計画を策定して、徹底的したPDCAの実践で業績を大きく伸ばした。
さらに『人事憲章』を制定することで長年の懸案だった公平公正な社内人事の実現へ導く。
その一方で従来の拡大路線や果敢な経営多角化の結果で生じた不採算事業からの撤退や赤字会社の清算というメスも入れた。
不退転の決意で挑んだ企業改革による業績の改善・伸長に加えて、資本政策としての自社株の消却やIR(投資家向け情報提供)の推進、連結配当性向の導入による増配などを断行して、着実に実を結んだ。
その結果、経営者としての〝通信簿〟ともいえる株価は、改革が奏功し始めた社長任期後半から会長就任期に急上昇した。その後、相談役退任直前の株価に至っては、社長就任時の10倍にもなっていたのだ。
「具体的な数字として結果を残せることができて、本当にラッキーだったと思う」と、橋田代表は目を細める。
九電工の取締役相談役に退いた2014年6月、立ち上げ時から深く関わってきたKAILの3代目塾長兼理事長に就任して年間300~400時間を働き盛りの塾生らと過ごす。
そして、KAILの創立20周年を迎える2024年に現役生・卒塾生・関係者らによる2000本の早生桐を植樹する『碧樹の杜』づくりの実現に向けて思いをはせる。
波瀾万丈の人生・第3ステージ、自家版自叙伝も著す
「社会人になってからの九州電力時代を第1ステージ、九電工時代を第2ステージとした場合、会社を設立して2つの企業を経営する現在は、第3ステージである」と、意気軒高な橋田代表は、「95歳での現役続行が目標であり、自ら人生100年時代の実践に挑戦していく」ことを明かす。
現在、代表取締役を務めるSUMIDAは当初、熱分解炭化装置を開発したとする創業者らに20年越しで口説かれて、非常勤取締役に就任した。
その動機としては、熱分解炭化装置を用いた国際的な貧困問題の解消や環境改善に貢献したいという思いが大きかった。しかし、肝心の熱分解炭化装置の能力不足が判明した結果、事業撤退という苦汁の決断を下した。
すると、創業者らが立ち去り、会社を引き受ける羽目になった。その後、従前を教訓に〝本物の機械〟として出会ったのがCVRDだ。
2019年6月、「至誠と調和」を企業理念に掲げてコンサルティング事業を核に新規ビジネスを創出していく事業体として、誠和コンサルティング株式会社を設立し、代表取締役会長に就いた。
そして、周囲からの勧めもあって、傘寿を迎えた自らの人生の〝振り返り〟や〝棚卸し〟を兼ねた自家版自叙伝『一期一会』を著した。
〝人財〟育成と早生桐の普及によるCO2削減をライフワークとする橋田代表は、「精力善用」「自他共栄」を旨とする〝柔の精神〟で自らの道を究めていく。
DATA
名 称:株式会社SUMIDA
住 所:北九州市若松区向洋町10-21(福岡営業本部:福岡市博多区博多駅東1-11-15)
創 業:1997年
代表者:代表取締役 橋田紘一
事 業:農業・森林再生事業(早生桐)、環境リサイクル事業(無臭乾燥機CVRD)
コメントを投稿するにはログインしてください。