【人物図鑑】チェロ一筋40年のプロ演奏家が〝新たな音楽〟の楽しみ方を奏でる

【画像】チェロ奏者 音楽家 原田哲男
2019年11月17日 熊本交響楽団第108回定期公演 撮影:studio1015 黒木真美

チェロ奏者
音楽家
原田哲男

【画像】チェロ奏者 音楽家 原田哲男
チェロ奏者
音楽家
原田哲男

【はらだ・てつお】
1970年4月17日生、鹿児島市出身、桐朋学園大学音楽学部卒。ドイツ・マインツ大学音楽学部に留学、アメリカ・南メソヂスト大学アーティストディプロマコースに入学。大学在学中の1990年に蓼科高原音楽祭奨励賞受賞。1997年夏に『チェロアンサンブルサイトウ』のメンバーとして日本各地やフィンランド・ヘルシンキを演奏旅行して、サンクトペテルブルグの世界チェロコングレスに出場。1999年4月から2012年9月まで仙台フィルハーモニー管弦楽団首席チェロ奏者を務め、定期公演などにソリストとして出演。仙台市民交響楽団や仙台ニューフィルハーモニー管弦楽団とも共演し、プラハ放送交響楽団の宮城公演にソリストとして起用された。森川諄一、木越洋、ユリウス・べルガー、岩崎洸の各氏に師事し、2007年9月に文化庁海外派遣研修員としてドイツに留学して、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の第一ソロチェリストであるクリスティアン・ギガ-氏に師事した。2013年5月九州交響楽団首席奏者に就任し、ソリストとして福岡や鹿児島などの地元オーケストラ公演にも出演した。2016年4月九州交響楽団を退団。現在はフリーランスのチェロ奏者として福岡市を拠点にソロ演奏や合奏や重奏などの室内楽を手掛けながら、後進の指導にも取り組む。ビバホールチェロコンクール3位、松尾音楽助成賞受賞、原村室内楽セミナー・緑の風音楽賞受賞、蓼科高原音楽祭奨励賞

【3Points of Key Person】

◎プロのチェリストとしてソロ、室内楽の公演、レッスン、後進育成に取り組む
◎チェロ一筋40年、米独に留学、仙台フィルや九響で首席奏者を歴任
◎新たな音楽の楽しみ方、これからの音楽家の生き方の構想を温める

プロのチェロ奏者による音色がさまざまなシーンに響く

【画像】チェロ奏者 音楽家 原田哲男

「音楽は共通言語であり、翻訳の必要はない。魂が魂に話しかけるのだ」――。〝音楽の父〟と呼ばれるJ.S.バッハは自らの信条の下、数多くの名曲を編み出した。中でも無伴奏チェロ組曲は、チェロ奏者の間で聖典的な作品と見なされて、バッハの作品群の中でも高い評価を得ている。

バイオリンのような外観を持つ大柄な楽器であるチェロは、豊かに響く重厚な低音から心地良く鮮やかな高音までの美しい音色を奏でる。チェロ奏者である原田哲男さんは、「本番での演奏を終えて毎回、うまくいった点・うまくいかなかった点を反省しながら、次につなげていっている。それは5年後、10年後のため」と明かす。
クラシック音楽で重要な楽器の一つとみなされるチェロは、オーケストラでの合奏や弦楽四重奏、弦楽五重奏、ピアノ三重奏などで低音部を受け持つ。また、独奏楽器としても人気があり、数多くのチェロ協奏曲やチェロソナタが演奏されている。

「コンサートホールに代表される大きな会場では、遠くの聴衆にも音を届けるためやや大ぶりでスケールの大きな演奏を心掛ける。その一方でサロンや個人宅などの小さな会場では、より繊細で緻密な表現に重きをおく」と、プロとしての演奏にこだわりをみせる。
「仕事の8割は練習、完全に出来上がった状態で本番の演奏に臨む」ことを信条とする原田さんはコンサートホールに限らず、個人宅やカフェ・ラウンジでも演奏し、これまでに焼き鳥屋や自動車整備工場のガレージでも奏でたことがあるという。

チェロ一筋40年、米独に留学した元九響・仙フィル首席奏者

【画像】チェロ奏者 音楽家 原田哲男

現在、福岡を拠点に活動する原田さんの音楽歴はチェロ一筋で40年におよぶ。
「何かやってみないか」――、バイオリン奏者だった母親からの一言をきっかけになって、母の知人だったチェロ奏者の森川諄一氏に付き、10歳で始めた。
12歳の時に地元のジュニアオーケストラに入団した原田少年は、「人前で演奏することの楽しみを知り、練習も自然と好きになった」という。高校時代は毎月鹿児島から東京へ飛行機に乗って、在京のチェロ奏者である木越洋氏の下へ通った。

大学進学では恩師の木越氏が教える桐朋学園大学へ進む。上京間もない1989年3月、東京暮らしへの期待と不安な気持ちが入り混じる中、初めて足を踏み入れたサントリーホールで聴いた音の響きの美しさに感動して涙した経験が演奏家への憧れを一層強めた。
大学在学中に蓼科高原音楽祭奨励賞を受賞した原田さんは、大学卒業後から2年間、ドイツ・マインツ大学音楽学部に学んだ。さらに奨励金を得て、1997年からアメリカ・南メソヂスト大学のアーティストディプロマコースに入学した。

「学生からオーケストラに就職したのが、一つの転換点になった。実際にオーケストラに所属してみると、上演回数が多い半面、それまでのように師から助言を受けることなく、プロとしての結果が求められた」と振り返る原田さんは、1999年4月から2012年9月まで仙台フィルハーモニー管弦楽団に在籍し、首席チェロ奏者を務めた。
この間、2007年9月から1年間、原田さんは文化庁海外派遣研修員としてドイツに留学し、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の第一ソロチェリストであるクリスティアン・ギガ-氏に師事した。プロの団員としては異例の留学だったが、「ギガーさんの演奏そのものに感動しただけでなく、人柄や音楽に対する姿勢など全てが魅力的なので渡独した。チェロの音の出し方から一から学び直すことができた」と、原田さんは目を細める。

2013年5月、九州に戻った原田さんは、地元の九州交響楽団で首席チェロ奏者を務めた。
その後2016年4月に退団した原田さんは現在、フリーランスのチェロ奏者として福岡市を拠点にソロや室内楽での公演、個人レッスンやアマチュアオーケストラのレッスンなどの後進指導にも力を注ぐ。

新たな音楽の楽しみ方、これからの音楽家の生き方を奏でる

【画像】チェロ奏者 音楽家 原田哲男

「福岡市の人口が160万人とはいえ、自らコンサートホールへ足を運ぼうとする人の数は残念ながら少ない。音楽家は演奏力が全てでなく、音楽を楽しみたい人たちを自ら集めるなどの能力も求められるのではないか」原田さんは考える。
社会自体は多彩なサービスが手軽に受けられる一方、個人的に演奏を楽しむ機会やミニコンサートを開きたい人は意外と多いにも関わらず、実際には演奏者とどうつながれるのかが分からず、実現困難な状況が続いている現状を挙げる。

「これまでのつながりも生かしながら、新たな展開につながるような企画も練っている」とする原田さんの構想の一つがベーカリー店主と一緒になって、パンの話と演奏という、『食』と『音楽』との〝合奏〟などの新たなスタイルだ。
「自分のやりたいことを突き詰めていくことを通じて、世の中の人々のためになるなら、こんなに嬉しいことは無い」と、さわやかな笑顔をみせる原田さんは日々、弦を片手にチェロを抱きかかえながら奏で続ける。

DATA

住 所:福岡市早良区
創 業:2016年4月
代表者:チェロ奏者 原田哲男
事 業:チェロ演奏および個人レッスン、後進指導
MAIL:https://lin.ee/BraYqIh

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