【人物図鑑】障がい者福祉で『日本でいちばん大切にしたい会社』大賞を〝親子〟受賞

【画像】ふくおか人物図鑑@西部ガス絆結株式会社 代表取締役社長 船越哲朗

西部ガス絆結(ばんゆう)株式会社
代表取締役社長
船越哲朗

【画像】ふくおか人物図鑑@西部ガス絆結株式会社 代表取締役社長 船越哲朗
西部ガス絆結株式会社
代表取締役社長
船越哲朗

【ふなこし・てつろう】
1967年4月12日生。福岡県大野城市出身。福岡県立筑紫丘高校卒~中央大学法学部法律学科卒。1990年4月西部ガス株式会社に入社。営業や営業企画などを担当。渕上医療福祉専門学校社会福祉士養成科に通って社会福祉士の資格を取得。2012年4月に同社を退職して、2014年3月に合同会社絆結を設立して代表社員に就任。2017年1月に西部ガスグループ入りして、障がい者雇用の特例子会社として西部ガス絆結株式会社に改組し、代表取締役社長に就任。趣味は子どもと遊ぶこと。

【3Points of Key Person】

西部ガスグループの特例子会社で就労支援と雇用創出を担う
◎ 元西部ガス社員で独立・起業後にM&Aで西部ガスグループの特例子会社
◎《障がい》を《苦手さ》と捉えて多様性を生かし、納税者への転換を図る

障がい者福祉で『日本でいちばん大切にしたい会社』

【画像】ふくおか人物図鑑@西部ガス絆結株式会社 代表取締役社長 船越哲朗

「人を大切にし、人の幸せを実現する取り組みを継続的に実践しながら業績を上げている会社」を表彰する『日本でいちばん大切にしたい会社』大賞実行委員会は2022年3月、第12回同賞実行委員会特別賞に西部ガス絆結(ばんゆう)株式会社を選んだ。

西部ガス絆結は、障がい者の雇用機会を増やして障がい者が安定的に就労できるように特別に配慮して雇用する西部ガスグループの特例子会社だ。
同第10回同賞(2020年3月)において西部ガスが転職・離職率の低さ、障がい者雇用率の高さ、特例子会社の設立で審査委員会特別賞を受賞しており、今回〝親子〟受賞となった。

「『絆結』(ばんゆう)とは、私自身の造語であり、2008年に立ち上げた異業種交流会『絆結会』に由来する。いろいろな人たちの絆ができて、つながっていくことは最終的に自分自身との絆をつくることであり、自然と自信も湧いてくる」と語る西部ガス絆結を率いる船越哲朗社長は、もともと西部ガス社員だった。
西部ガスを退職後、自ら独立・起業した後、M&Aによって西部ガスグループに復帰したという異色の経歴の持ち主でもある。

「《障がい》を《苦手さ》と捉えると目に映る景色は変わり、社会が優しくなれる」と考える船越社長がトップを務める同社もユニークな存在だ。
障がい者の就労支援業務に加えて、名刺作成やチラシデザインなどビジネス関連やTシャツやボールペンなどオリジナルグッズを制作する『コピーセンター絆結』を運営する。
そして、西部ガスグループの休職社員の職場復帰や障がい者雇用の相談・支援、さらにグループ外企業向けのコンサルティングも請け負っている。
人材育成と働く場所の機能を併せ持つ同社は、全国に約500社ある特例子会社の中で設立初年度から4年連続で経常黒字を達成しており、全国からの視察も多い。

独立・起業、経営難で路線転換、M&Aでグループ復帰

【画像】ふくおか人物図鑑@西部ガス絆結株式会社 代表取締役社長 船越哲朗

東京の大学に学んで地元の西部ガスに就職した後、営業畑や営業企画分野を歩み、大規模展示場運営なども手掛けて順調なサラリーマン生活を送っていた船越さんにとっての転機は38歳の時、3歳を迎えた次男が知的障がいと発達障がいがあることが判明したことだった。
当初はショックで絶望感もあったものの、「障がい者の自立と企業の障がい者雇用は社会的なテーマであり、これまでのビジネス経験を生かしていくことでうまくマッチングしていけたら、事業として成り立つのではないか」と考えた船越社長は、介護福祉の専門学校に1年間通って社会福祉士の資格を取得した。

そして、45歳の時に西部ガスを退職した船越社長は1年間、各地の共同作業所や障がい者雇用の現場を訪ね歩き、コンセプトや事業計画を練った。
「計画づくりが好きであり、企画も得意だったこともあって、新しい事業の立ち上げには情熱を傾けた」と振り返る船越社長は2014年3月に起業し、同年6月には就労をメインとした就労継続支援A型の事業所として『ワークオフィス絆結』を開設している。

しかし開設後、見込んだ受注量と利用者へ支払う収支のバランスが取れず、計画と現実とのギャップに苦しんだ。同年8月に資金繰りで苦しみ、同10月に事業を辞めることを決めて顧問の公認会計士に連絡した。
すると、同じく障がい児を抱えていた公認会計士は船越社長の元へ飛んで来て一緒に想定される数々のシミュレーションを検討した結果、従来のA型から就労支援をメインにした就労移行支援の事業所への転換を船越社長は決断した。
そして、創業2年目以降の黒字化を実現している。

起業経営上の大きな転機になったのは、2016年4月の改正障害者雇用促進法の施行による法定雇用率の引き上げだった。退職後も良好な関係を続けていた西部ガス側から船越社長に対して、同グループの特例子会社化に向けたM&Aが打診された。
西部ガスでは絆結を特例子会社にすることによって障がい者雇用率の引き上げることができる。一方、絆結サイドも西部ガスグループ入りを通じて事業拡大ができ、より多くの障がい者雇用が可能となるため、M&A話はトントン拍子に進んだ。
そして、2017年1月に西部ガス絆結株式会社と社名を一新して、西部ガスグループの障がい者雇用を一手に担う特例子会社として新たなスタートを切った。

「『お帰りなさい』と言う、かつて一緒に働いた仲間からの言葉に会社としての温かみを感じた」と目を細める船越社長は子会社化の翌月、コピーセンター絆結を西部ガス本社の地下1階にオープンさせた。
特例子会社の設立は都市ガス業界では初めての事例であり、M&Aによる特例子会社の設立は日本初の出来事だった。

税金を使う側から納める側への転換を図る

【画像】ふくおか人物図鑑@西部ガス絆結株式会社 代表取締役社長 船越哲朗

社員一人一人のポテンシャルがあり、障がいとは違いでしかないことをあらためて実感している。《障がい》を《苦手さ》としていくことで違いのある人たちが集まって来て助け合い、補い合うという多様性で生産性も高くなり、《得意》を生かしていくことで組織も自然と強くなっていく」と説く船越社長は、障がい者が働く場を得て納税者になっていくことを通じて、《税金を使う側から税金を納める側への転換》にも力を注ぐ。
「絆結を立ち上げた際の目標だった《障がいがあっても当たり前に働ける社会の実現》に向けて、たくさんの障がい者が働ける機会を作っていきたい」と意欲をみせる船越社長は、大切にしている言葉として西部ガス時代の先輩から授かった「素直な心、謙虚な心、感謝の心」を挙げる。

DATA

名 称:西部ガス絆結株式会社
住 所:福岡県春日市春日公園5-2
創 業:2014年3月
代表者:代表取締役社長 船越哲朗
事 業:就労支援業務およびコピーセンターなどの運営
URLhttps://banyu-kizuna.com

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