【人物図鑑】小よく大を制す、地元ガス業界の〝風雲児〟
株式会社ソノダ
代表取締役
園田昌德
【そのだ・まさのり】
北九州市出身、1970年4月8日生、福岡県立小倉高等学校卒~九州大学工学部資源工学科卒。1995年4月日商岩井(現双日)に入社。物資経理部、生活・産業部門、日商岩井ミートアンドアグリプロダクツ出向、2003年4月に日商岩井を退職。同年8月ソノダに入社。同年12月同社専務取締役に就任。父・園田裕孝の死去に伴って2009年1月代表取締役に就任。
【3Points of Key Person】
◎衰退する北九州のプロパンガス業界で大躍進
◎石油王を目指しながらも家業のガス販売業を継ぐ
◎元商社マンのビジネス感覚と行動力で新規事業構築
なぜ、ソノダは、衰退するプロパンガス業界で元気なのか
なぜ、ソノダは、衰退するプロパンガス業界で元気なのか。
北九州に本社を構える無名の小さなガス販売会社が、地元プロパンガス業界で異彩を放つ。地元産業界の地盤沈下で工業ガスの需要が低迷するなか、〝風雲児〟企業のソノダは、プロパンガス販売で業績を伸ばす。
「主力だった産業界向けの工業用ガスが大きく落ち込むなか、家庭向けプロパンガス販売に活路を見出して、拡販に力を入れている」とソノダを率いる園田昌徳代表は力強く語る。
日本のエネルギー消費で約5%を占めるプロパンガスは供給世帯で2400万世帯を占め、需要家件数2700万件の都市ガスとともに日本の二大ガス熱源だ。
家庭・業務用をはじめ工業用、化学原料用、自動車用などに広く用いられるプロパンガスは、業界全体でみると縮小傾向にある。1996年度に1970万トンあったプロパンガスの需要は右肩下がりの状況にあり、2016年度は1421万トンにまで落ち込んでいる※。
衰退傾向のプロパンガス業界にもかかわらず、ソノダは従来350件前後だった供給世帯数を短期間で倍増させる勢いで伸ばす。
全国の551店がエントリーした伊藤忠エネクスグループ「全国機器販売ドリームマッチキャンペーン2017 全国No.1販売店決定戦」において中小店対象のGREEN GROUPで全国2位の栄冠に輝く。また、イワタニ会「ダッシュキャンペーン」では、ルビー賞を獲得した。
「高圧ガス保安法をはじめとする法律に守られてきた工業ガス業界では、われわれのような弱小企業はとてもかなわない。その一方でプロパンガス業界は、創意工夫や努力次第でいろいろ解決できる魅力的な市場だ」とプロパンガス販売に大きく舵を切った。
住宅向けプロパンガス販売では、マンションメーカーを攻略しての一括販売に力を注ぐ。新築マンション1棟丸ごとのプロパンガス設備を自社負担で設置して、毎月のガス料金で回収していく仕組みだ。
このほか工場や病院、大学など向けの新規開拓にも取り組んでいる。ある産業廃棄液処理工場のケースでは、大手企業が重油で計画していた熱源をプロパンガス採用にひっくり返して受注するという離れ業もやってのけた。
なぜ、このような大胆なことができるのか。
「いろいろ歩き回っていると、さまざまなビジネスチャンスと出くわす」と煙に巻く園田代表だが、そのやり方は、実にシンプルでアナログ的な人間臭い手法だ。いろいろな会合や団体などに日々参加して知り合った経営者やキーマンらと杯を重ねながら、コミュニケーションを深めて受注につなげていくという、典型的なBtoBビジネスに徹した。
「取り扱う商品自体はどこも一緒なので、必然的に誰と仕事をするかが重要になってくる」とする園田代表は、八幡法人会や福岡ひびき信用金庫ニューリーダー会、福岡ブルガリア友好協会などの数多くの団体・会合に参加して昼夜走り回る。※日本LPガス協会「環境と人にやさしいエネルギーLPガス」
実家がガス屋なのに石油王を目指した異色の元商社マン
昔、米屋では豆炭も取り扱っていた。時代の流れとともに豆炭はプロパンガスに置き換わって、プロパンガス販売店へ業態転換した米屋も多かった。
一方1960年7月に祖父・金助と父・裕孝が地場プラントメーカー向けの工業ガス販売で創業したソノダは高圧ガスを主に手掛け、プロパンガスの取り扱いも始めた。
ガス販売を家業として3代目となる園田代表は学生時代、ガスでなく石油王を目指して九州大学工学部資源工学科で学ぶ。大学4年時の就職で大手石油会社か総合商社かで悩み、日商岩井を選んだ。商社マンとして、生活・産業部門において輸入菊を日本全国津々浦々まで売り歩くという破天荒なキャリアを積んでいく。
そうしたなか、経営拡大路線が裏目に出て破綻の危機に直面していた実家を立て直すため、双日を退職して北九州へ舞い戻った。不退転の決意と持ち前のバイタリティー、そして総合商社で培った営業手腕をフルに生かして経営再建を果たした。
いま、反転攻勢に打って出る園田代表だが、過去に営業担当の男性社員の大半が一斉に退社するという造反劇が起きて、社長自らガスボンベを配達する事態となったこともあった。
「かつての怒りを忘れて、いま振り返ると、彼らを信じ切っていなかった自分に気づいた」と振り返る園田代表の座右の銘は、自戒の意味も込めて「因縁生起」を挙げる。縁起と略されることがある因縁生起は、現象的事物の有為はすべて因(直接原因)と縁(間接原因)の2つが働いて生ずるとする仏教独自の教説だ。
園田曰く、「アグレッシブルに生きろ」「突き抜けろ!」
「経営者やキーマンらと知り合って、お酒を交えた経済活動で仲良くなって、ビジネスをしていくやり方を2倍速、3倍速の爆発的な加速度にやっていく必要がある」
いま、あらたな段階を迎えた園田代表自身、北九州では3億円~5億円規模の中小企業がもっとも経営状況が厳しく、今後沈んでいく可能性が大きいという強い危機感を抱く。
その一方でマンションメーカー向けの一括販売などの実績や評価から関連の建設会社や不動産管理会社などからも引き合いも来るようになった。これらのビジネス的な広がりも追い風に、いま、ビジネス的なチャレンジとなる新たな構想を練る。
「なぜ、チャレンジしていくのか。それは幸せのためであり、ある意味で自己満足かもしれない。そんな自己満足のひとつが、社員らが≪この人に付いてきて良かった≫と思えることだ」と園田は全力投球で仕事と向き合う。
いま、若手らへのエールとして贈る「アグレッシブルに生きろ」「突き抜けろ!」「つまらない人生なんかやめてしまえ」という園田代表のメッセージは自分自身にとって、がむしゃらに突走してきた生き方の縁起かもしれない。
DATA
名 称:株式会社ソノダ
住 所:北九州市八幡西区上上津役2-19-16
創 業:1960年7月
設 立:1963年5月8日
代表者:代表取締役 園田昌德
事 業:高圧ガスおよび関連器具等の販売
URL:http://www.sonoda-gas.com/
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