【人物図鑑】旅行会社での地域活性化を大学での研究・教育・社会貢献に生かす

中村学園大学流通科学部 准教授
前嶋了二


中村学園大学流通科学部 准教授
前嶋了二

【まえしま・りょうじ】
大分県臼杵市出身、1961年1月5日生、九州大学法学部卒~九州大学大学院経済学府産業マネジメント専攻修了。1985年株式会社日本交通公社(現株式会社JTB) に入社。日本国内での旅行業務に加えて、スペイン・イタリア・スイス・フランスにも勤務。また、北九州コンベンションビューロー、熊本国際観光コンベンション協会、長崎県観光振興推進本部、福岡観光コンベンションビューロー、佐伯市観光協会などへの出向歴をもつ。2019年4月中村学園大学流通科学部流通科学科准教授に就任。

【3Points of Article】

◎頼まれたことは、できる限り断らないようにしている
◎興味を持ったことを徹底的で調べて、やりがいのあることに取り組んできた
◎何事もまずはダメで元々の精神でやってみる

現場での実務経験と大学院での研究が大学の教壇へ導く

「学生時代の頃から人生の最後の仕事として、教育と研究をしたいと思っていたので、昔からの夢が、かなったカタチといえる」とにこやかに語るのは、2019年4月に中村学園大学流通科学部流通科学科の准教授に就任した前嶋了二氏だ。
1985年のJTB入社以来、足掛け34年観光業界の第一線に身を置いてきた前嶋准教授は、本業の傍ら2015年4月から4年間、九州産業大学地域共創学部で非常勤講師も務めた経歴をもつ。

この間、『九経調地域研究助成顕彰事業』において、2016年国際ビジネスイベント(MICE)、2017年クルーズ客の受け入れに関する論文を書き、2年連続で奨励賞を受賞した。
また、九州大学大学院経済学府産業マネジメント専攻の修士論文『「関係人口を活用した人口減少自治体の観光政策に関する一考察』には2019年3月、九州大学の南信子教育研究基金から南信子賞が贈られた。

「今後、大学において取り組むテーマは『地域活性化』だ。行政の枠を超えた地域経営の実現を目指して、具体的には関係人口論にテコにして取り組んでいく」と、前嶋准教授ははつらつと語る。
『関係人口』とは、既存の住民や移住してきた人たちの『定住人口』でなく、観光でやって来た『交流人口』でもなく、その地域の魅力や課題について関心を持って支援や解決に関わっていく地域外の多様な人たちを指す。
人口減少や高齢化に苦しむ地方圏では、地元における地域づくりの担い手不足という課題に直面しており、関係人口である地域外の人たちが新たな刺激や変化などをもたらして、地域づくりの担い手となることも期待されている。

「人口減少下の自治体では、地域に秘められた真の魅力や自分たちの生き方の≪すばらしさ≫に気づいていないケースが多い。共生関係にある都市の人たちが関係人口として、外部から評価や発見していくことで、その地域の≪すばらしさ≫を発掘していくことにつながる」と説く前嶋准教授は、参考例としてイタリアのスローフード運動を挙げる。
イタリア・ローマの広場にマクドナルドが進出した1986年にイタリアで立ち上がった伝統的な食文化を守っていく取り組みがスローフード運動だ。当初は伝統的な食材や料理、質のよい食品やワインを守るための消費者向け食育活動としてスタートした。その後、伝統的な食事、素朴で安心できる食材、健康に配慮した有機農業などは、食の恵みを享受したい美食家をはじめとする都市圏の人たちを取り込むような流れになって、地域活性化を図る上で大きな集客装置となったのだ。

今後、スローフード運動をはじめとする海外での先行事例や自ら手掛けた大分県佐伯市での関係人口をテコにした観光政策での取り組みなどを踏まえながら、関係人口論を生かした地域活性化に取り組んでいく考えだ。

旅行会社での異色のキャリア形成が自らの人生を切り開く

NTT民営化やJT民営化、つくば万博開幕、日航123便墜落などの出来事が相次いだ1985年、前嶋准教授は大卒後の就職先としてJTBを選んだ。
「地域活性化の仕事をしたかったので、JTBに就職した。当時からJTBは、地域に埋もれた郷土の祭りや芸能などの伝統文化の保護育成していく地域活性化事業として『杜の賑い』などのイベントに取り組んでおり、今日の観光地域づくり法人であるDMO的な取り組みをしていた」とする前嶋准教授はJTB時代、国内勤務での旅行業務に限らず、欧州にも赴任した。
そして、スペイン・マドリッド、イタリア・ローマ、フランス・パリ、スイス・ジュネーヴにおいて、駐在員として、現地に駐在したキャリアも持つ。

 約四半世紀におよぶJTB時代を振り返って、「大きな転換点となったのは、JTBから出向して、各自治体で仕事をした経験だと思う。何よりもモノの見方や仕事の進め方が大きく変わった。自治体での仕事として、クルーズ船誘致や国際会議の招請などをしていくなかで海外のキーパーソンのもとへ直接飛び込んでみると、実際に会ってくれて人脈も一気に広がった。何よりも自分自身がオープンになって、目の前の世界が大きく広がった感がある」と振り返る。
前嶋准教授にとって、北九州コンベンションビューローをはじめ、熊本国際観光コンベンション協会、長崎県観光振興推進本部、福岡観光コンベンションビューロー、佐伯市観光協会などへの出向は、〝武者修行〟の機会となった。

多様なモノサシが多彩な選択肢を生み、人生を楽しくする

今日、大学には教育、研究、社会貢献が求められている。前嶋准教授が手掛ける関係人口論に基づく地域活性化は、実践的な研究や社会貢献になり得る。
その一方、教育面については、「グローバル人材の育成と地域リーダー人材の育成に取り組んでいく。グローバル人材と地域リーダー人材が今後、地域を活性化していく上での両輪になっていく」とする。
グローバル人材育成では長年、経済効果の大きいビジネス関連イベントとして取り組んできたMICEを来年度から科目化して、3年掛かりでグローバル人材育成プロジェクトを立ち上げていく計画だ。

一方、地域リーダー人材については、佐伯市での関係人口づくりと連携しながら、地域おこし協力隊ともタイアップしていくことで実践的に取り組んでいくとする。そして、中村学園大学の特色である食物分野や流通分野での強みを生かしたフードツーリズムやホスピタルツーリズムも手掛けていくことも念頭に置いている。
「モノゴトを考えるとき、モノサシは決して一つではない。学生をはじめ若者は、いろいろなモノサシがあることを現場に足を運んでのフィールドワークで学んでほしい」とする前嶋准教授は、「人生はチョイス次第。いろいろな選択肢があれば、人生は楽しくなる」と、大学の教壇に立って学生らに語り掛ける。

DATA

名 称:中村学園大学
住 所:福岡市城南区別府5-7-1
創 立:1954年(学園創立)
設 置:1965年(大学設置)
代表者:学校法人中村学園理事長 中村量一
事  業:大学教育、学術研究、社会貢献
URL:http://www.nakamura-u.ac.jp/

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