【人物図鑑】世の中の「困りごと」に、ステークホルダーとともに向き合う
NPO法人ふくおかNPOセンター
代表
古賀桃子
【こが・ももこ】
1975年3月26日生、福岡市出身、九州大学法学部卒~九州大学大学院法学研究科(公法学修士)修了。学生時分まちづくりNPOを経て、2002年に現組織を設立。[草の根から、社会を描く。]を合言葉に、企業・行政・公民館・社会福祉協議会・児童館等の橋渡しや伴走支援を通じた、地域づくり・社会づくりの黒子に注力。近年は、防災や災害時の後方支援にも取り組む。官公庁の委員職の他、北九州市立大学大学院マネジネント研究科(ビジネススクール)教授を兼務。
【3Points of Key Person】
◎ 学生時代からNPOに参画し、福岡初の中間支援機関を経て自ら設立
◎ NPO・行政・企業・自治会・公民館・児童館等の協働をコーディネート
◎ 諸課題に向き合うためのネットワークやプラットフォームづくりを重視
NPO・行政・企業・市民などの協働を応援
日本にあるNPO法人(特定非営利活動法人)の数は2021年4月末現在、5万2028法人(含む認定NPO1208法人)を数える。このうち福岡県のNPO法人数は、818法人(含む認定NPO12法人・特定認定NPO1法人)となっている(内閣府調べ)。
NPOとは「Non-profit Organization」の略で、広義的には非営利団体を指す。狭義では社会貢献活動や慈善活動を行う非営利の市民団体とされ、その中に、特定非営利活動促進法(1998年3月成立)に基づく法人格を得た団体がある。
福岡における中間支援組織で〝草分け〟的な存在である、NPO法人ふくおかNPOセンターの古賀桃子代表は、「さまざまな課題がみられる昨今、これは!と思うものについては、長年の取り組みで培ってきた行政や企業、NPOや自治会などとのつながりを生かしながら、一緒に取り組む場づくりに励んでいる」と、自らの取り組みを語る。
NPOの設立・運営・企画・広報などのコンサルティングをはじめ行政・企業なども含む人材育成、諸課題に向き合うための協働のコーディネーションなどを手掛ける同センターを立ち上げた古賀代表は、「現場へ足を運び、さまざまな関係者との対話を通じて気づかされることも多い」「地域の困りごとをつぶさに見極めながら、問題意識を同じくするステークホルダーと協働でチャレンジする応援をすることこそ自分たちの役割と念じながら活動している」とする。
そして、「課題の解決に向けては、特定の主体のみだとなかなか太刀打ちし難いので、協働のプロジェクトを形成するための〝呼び水〟役も担っている」と、古賀代表は自らの立ち位置を示す。 他方、〝在野(下町)のリサーチャー〟を自称する古賀代表は、北九州市立大学大学院マネジメント研究科特任教授、福岡女学院大学非常勤講師なども務め、現場で得た知見の共有や問題提起にも努める。
2015年度にシンクタンクとともに取り組んだ、沖縄県の製造業振興調査では、製造業が少ない当地において希少な産業の一つである琉球泡盛の歴史や、メーカーを含む県民の「泡盛愛」に魅了され、業界紙「泡盛新聞」九州局長や「泡盛検定協会」会長としても活動。「大切なライフワーク」と、にこやかな表情をみせる。
NPOの草創期から「草の根」にこだわる
学生時代にNPOと巡り合って、福岡発の中間支援組織の事務局長を歴任した後、自らNPO法人を設立して活動を続ける古賀代表のNPO歴は、四半世紀となる。
在学中、公務員志望で行政学を専攻していたという古賀代表は、旧博多部の活性化を目的としたまちづくり協議会にボランティアとして参加した。そして、行政や企業などの多彩な人々が集う場において、「いろいろな人たちと連携する醍醐味を実感したことが、今もなお原風景のようになっている」と、古賀代表は目を細める。
その後、大学院でフィールドワークを中心にNPOを研究した古賀代表は修了した1998年春、福岡初のNPO支援組織「NPOふくおか」の設立と同時にスタッフとなった。当時は仙台市を皮切りとした行政によるNPO支援が活発な時期でもあった。
2000年に事務局長に就任した古賀代表は、「本来やりたかったことは、いろいろな現場へ出向いて、頑張っている人たちと関わりながら、応援していくことではなかったのか」と思い悩む日々も続いたそうだ。そして2002年3月に退職し、自らNPO法人を立ち上げた。
当時27歳だった古賀代表は自らNPOを立ち上げ、支援活動を始めることとなるが、「設立当初の2000年代前半は、NPO設立や運営の支援、組織マネジメントなどをサポートする活動が中心だった。その後、2008年のリーマンショック以降、さまざまな地域課題・社会問題が散見されるようになり、応援団としての活動はもとより、特定のテーマに着目しながら行政・企業・市民が協働で取り組めるような場づくりに取り組むケースが増えた」と、これまでの歩みを振り返る。
2005年に発生した福岡県西方沖地震では、玄海島から本土(旧・九電記念体育館)に避難した住民向けの支援活動や情報発信に取り組んで、以来、災害が起きる都度、資源の仲介や情報発信といった後方支援活動に取り組んでいる。また、公民館・児童館とNPO・企業との協働事業のコーディネートにも着手する。
「設立10周年を迎えた2012年には、これまでお世話になったNPO・行政・企業・児童館や個人の方々とともに、心温まる催しをすることができた。記念写真を見ながら、これまでの活動で得たつながりそのものと実感した」と古賀代表はふりかえる。
近年、相次いで発生する自然災害への平時からの備えや災害発生時の被災地・被災者への支援に取り組む「災害支援ふくおか広域ネットワーク」は2021年3月、福岡県内の14のNPO・企業・経済団体・個人が設立発起人となり、ふくおかNPOセンターが事務局を担う形で発足している。
地域の困り事解決に向けたプラットフォームを構築
「コロナ禍で、マスコミなどが生活困窮などの情報を伝えるようになっているが、さまざまな困りごとが増幅しているはず。その実態について掘り下げた上で〝見える化〟して、協働を誘発するような場づくりに取り組んでいきたい」と考える古賀代表は、課題解決に向けた新たなプラットフォーム(共通基盤)の構築にも乗り出している。
このプラットフォームにおいては、「コロナ禍による厳しい状況下、これまで潜んでいたであろうさまざまな困りごとが顕在化している。そうした中、自らの特技や能力、時間などを課題解決に向けて生かしたいという人や組織が、ポジティブに参画できるようなプラットフォームにしていきたい」と、古賀代表は思い描く。
《草の根から、社会を描く。》を合言葉に長年、さまざまな人や組織の活躍の場づくりを手掛けてきた古賀代表の取り組みは、着実に各所に根付いている。
DATA
名 称:NPO法人ふくおかNPOセンター
住 所:福岡市中央区天神5-5-8福桜ビル3F
設 立:2002年2月(認証年月:2002年7月)
代表者:代表 古賀桃子
事 業:NPO活動の支援・調査
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