【人物図鑑】脳科学に基づく保育園づくりをテコに新たな未来をデザインする
株式会社イクリプス
代表取締役
奥本みずほ
【おくもと・みずほ】
1974年7月7日生、大分県日田市出身、大分県立日田高校卒~武蔵野美術大学工芸工業デザイン学科(インテリアデザイン専攻)卒。在学中の1998年、有限会社イクリプスを設立。2005年、日本Webデザイナーズ協会会長に就任。2009年、日本初となる資金用途指定のふるさと納税オンライン決済サイトを開発。同年出産、事業を売却して福岡市へ移住。2015年、九州大学大学院統合新領域学府(ユーザー感性学専攻)に入学。2016年株式会社イクリプスとして事業を再開。2016年5月、イクモ保育園を設立。2019年、株式会社ホープの社外取締役に就任。2024年、九州ニュービジネス協議会人材育成委員会副会長賞を受賞。趣味は絵画作成、インテリア、旅行、ゴルフ、茶道。特技はキャラ弁作り。
【3Points of Key Person】
◎ 脳科学に基づく育脳育児理論を導入した企業主導型保育事業所を運営
◎ 美大出の学生起業家、日本初の資金用途指定ふるさと納税サイトを開発
◎ スマホを用いた育脳育児サービス『ポケットイクモ』を開発
世界的な脳科学者による育脳育児理論を基に開発・実践
「脳科学に基づく育脳育児理論を導入した企業主導型保育事業所『イクモ保育園』は、脳科学者である故久保田競先生が関わった脳科学ベースの保育園として西日本初となる」
「全脳を発達させることで子どもの全人格的な能力を引き出すことを目指している」
福岡市・百道浜で乳幼児教育事業とデザイン・クリエイティブ事業を手掛ける株式会社イクリプスの奥本みずほ代表取締役は、にこやかな表情で語る。
イクモ保育園は、脳科学の世界的な権威だった故久保田競・京都大学名誉教授による育脳育児理論をベースに、保育現場での創意工夫や発達心理学の理論なども加味した『イクモ育脳アプローチ』による乳幼児保育を提供する。
奥本代表自身、結婚しての出産に際し、仕事か・育児かという岐路に立たされた。そして、事業自体を売却して、専業主婦として育児に専念した経験を持つ。
育児がひと段落して事業再開を考え始めた奥本代表は、「キャリアか・育児かという選択に悩まずに、安心して預けられる保育園が必要だ」「保育園を併設したオフィスをつくりたい」と思い描いた。そのような折、<保育園をつくりたい>という保育士グループと知り合い、彼女らが師事していたのが久保田名誉教授だった。
「久保田先生による、脳科学に基づく乳幼児教育の重要性についての話を聞いて、大変感動した。そして、実践してみたいという思いが募った」ことを奥本代表は明かす。
折しも企業主導型保育事業所が、内閣府所管の制度としてスタートした時期だった。
奥本代表は早速、実施機関に申請した。
長年、デザインやクリエイティブの世界に身を置いてきた奥本代表にとって、新たに足を踏み入れた保育業界は、「これまでとは、真逆の世界だった」。
保育業界は、法令や規則などの決まりや定めの通りに実施していくという保守的な世界であり、奥本代表は当初、戸惑いを隠せなかったという。
異次元の業界で試行錯誤を重ねた奥本代表は、「現状維持は、衰退を招く」「従来のやり方に合わせるのではなく、業界のパイオニアとして新しいことに挑戦していく」ことを決心した。
そして、これまでのビジネス経験も踏まえ、奥本代表は、「<保護者はお客さま、保育はサービス業>という発想の転換を図り、小さいことも大きいことも改善していく」と、新たな一歩を踏み出した。
2016年に福岡の地で事業再開した当初、乳幼児向けの育脳教室『イクモスクール』も運営していたが、保育園のニーズが高まり、現在はイクモ保育園のカリキュラムに育脳レッスンを取り入れることで子どもたちに質の高い育脳教育を提供している。
また、食育にも力を入れており、保育園に併設する『イクモキッチン』で手作りによる食事やおやつを提供する。
「兄弟児の入園も多く、さらに妊娠時からの入園予約もいただいている」と、顔をほころばせる奥本代表が先日、実施した保護者アンケートでは「大変満足」80パーセント、「満足」20パーセントという〝満点〟だったそうだ。
日本初の資金用途指定ふるさと納税サイトを開発
子どもの頃から絵を描くことが好きで得意だった奥本代表は、全国表彰を幾度か受けたという。
高校時代、恩師の勧めで入部した美術部では、初めての木炭デッサンで夢中になった。その後、恩師からの強い勧めもあり、美大進学を決める。
奥本代表にとって、自らの人生の転機となった美大時代について、「周りは個性を競う魅力的な人たちばかりであり、それまで育った保守的な土地柄と異なっており、自分らしく伸び伸びと生きられるようになった」と、目を細める。
在学時、グラフィックデザイン学生ユニットの創立メンバーとして参画した。さらに有限会社イクリプスを設立し、学生起業家としての第一歩を踏んだ。
2009年、公益財団法人福武財団から依頼された、新潟県十日町市で開催される『越後妻有大地の芸術祭』に向けて、日本初となる資金用途を指定したふるさと納税オンライン決済サイトを開発した。
同年、出産した奥本代表は事業を売却し、〝実家に近い都会〟である福岡市への移住を決めた。
「子育ては体力的に大変なものの、エネルギーがあり余っており、1年間あたり100冊の心理学の本を3年間読み続けて、心理学は面白いと思った」と、奥本代表は振り返る。
その後、4歳だった愛児を脳疾患関係の病魔が襲った。
幸い、後遺症も無く快癒し、奥本代表の知的好奇心は、心理学から脳科学分野へ広がった。
2015年、大学院へ進学した奥本代表は、「勉強すると、実践してみたくなる」「大学在学中に起業して今回、事業を再開したのも大学院に在学中だった」「事業も含めて、カタチにしてみたいという思いは強い」と、目尻を下げる。
〝しあわせのためのデザイン〟で乳幼児教育を導く
乳幼児教育事業と共にデザイン・クリエイティブ事業を手掛ける奥本代表は、イクモ保育園で蓄積した実践ノウハウをスマートフォンで学べる新サービス『ポケットイクモ』を開発し、2024年11月12日に発表した。
新サービス開発に3年近くの歳月を要したとする奥本代表は、「保育士とデザイナーの言語が違うため、すり合わせるために1年近く掛かったものの、その後は一気に進んだ。やはり、あきらめないことが大事だと思う」。
「すべての子育て家庭に届けていきたい」と考える奥本代表は、育休に入る社員向けの福利厚生サービスとしての活用も提案する。
しあわせのためのデザイン━━━。
「誰かが喜びや幸せを感じる瞬間は、私自身にとっての幸せだと気づいた」とする奥本代表は、「デザイン・クリエイティブの仕事、乳幼児教育の仕事は、共にお客さまを〝しあわせ〟にする仕事であり、いろいろな思いを込めて取り組んでいる」と、真摯に語る。
いま、乳幼児教育とデザイン・クリエイティブをクロスオーバーさせながら、ウェルビーイングな社会づくりに向けたデッサンを描き始めている。
DATA
名 称:株式会社イクリプス
住 所:福岡市早良区百道浜3-3-1 シーサイド百道浜南ビル2F
設 立:1998年 3月
代表者:代表取締役 奥本みずほ
事 業:乳幼児教育事業(イクモ保育園)、クリエイティブ事業
URL:https://www.eclipse-jp.com/
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