【人物図鑑】〝食とIT〟の新たな世界をフィロソフィ経営で創造していく

Fbeiホールディングス株式会社
代表取締役CEO
武藤元美

【むとう・もとみ】
1961年1月14日生、福岡県久留米市出身。久留米高専を経て福岡大学人文学部英語学科を卒業して1984年、NEC系列企業に入社。同年10月、株式会社FCCテクノに転じる。エンジニアとしてシステム開発などに携わり、1990年に日本IBMとの合弁会社の設立に関わる。1998年に有限会社福岡情報ビジネスセンター(後に株式会社化)を創業。2019年にグループ企業3社を率いるFbeiホールディングス株式会社を設立して、代表取締役に就任。座右の銘は、「鶏頭(口)となるも牛後となるなかれ」「敵は我に有り」「謙虚にして驕らず」。趣味はカヌー、キャンプ、菜園。
【3Points of Key Person】
◎ 情報処理システム2社と食品卸1社で企業グループを形成
◎ 日本IBMの友好団体会長や盛和塾福岡の筆頭代表世話人を歴任
◎ 食による地域創生に取り組み、100億円企業を目指す
IT分野での川下戦略として、食とITとの融合を図る

日本における2025年のIT市場規模は、前年比8.2%増の26兆6,412億円――。
IT専門調査会社のIDC Japanは2025年1月15日、日本国内のIT市場産業の予測を発表した。
1960年代、日本のIT産業は、金融業界や電力業界における計算センター発足により、情報サービス産業として誕生した。
1980年代には、パソコンブームと共にソフトウェア産業が拡大。
1990年代後半からはインターネットやスマートフォンの普及が進み、2000年代にはクラウドサービスも登場し、日本社会のデジタル化が進んでいく。
「食とITの会社である」
武藤元美代表取締役が率いるFbeiホールディングス株式会社は、日本のIT産業の中でも異彩を放つ。
同ホールディングスは、情報処理システム開発業の株式会社福岡情報ビジネスセンター、同業の株式会社ケイエム、全国の百貨店をはじめ小売業向けのフードギフトのオペレーションを手掛ける株式会社サンリッチの3社で構成されている。
「2015年時点で情報処理システムを〝注文住宅〟的に造る仕事は将来、無くなると考えた。研究・開発という川上分野へ行くか、ユーザー向けのサービス分野である川下へ進むかという岐路に立ち、後者を選んだ」と、武藤代表は語る。
そして、取引先だったサンリッチを事業承継し、2019年に持株会社制度へ移行した。
「日本の中小企業にとって、持ち株会社によるグループ経営は、限られた人材や財務を有効に利活用できて、大変有益だ」との持論を武藤代表は説く。
自ら〝ファーストペンギン〟として、サンリッチの現場に飛び込んだ。
従来、紙主体のアナログの世界だった食分野のIT化・デジタル化に向けて、人事交流というカードも切りながら、本格的に乗り出している。
勝ち負けだと思っていたビジネスは助け合いだった

子どもの頃からバイクが好きで、エンジンに夢中だった武藤少年が高校進学で選んだのは、国立久留米工業専門学校だった。
ところが進路に悩み3年修了時に中退し、明善高校の補習科である明善時習館に籍を置く。
「初めて文系という存在を知った」という武藤代表は、高専と真反対の福岡大学人文学部英語学科へ2つの奨学金を得て進学した。
英語学科だった武藤代表は、大学のサマースクールでプログラミングを学び、「コンピュータのプログラミングも言語学だ」と体感した。
新卒では、PC-8000シリーズで一世を風靡していたNEC系列企業に入社した。
もっとも、エンジニア志望だったものの、配属先が営業部だったこともあり、入社半年で退社して福岡の情報処理システム開発会社に転職した。
新天地でシステム開発に従事する中で注目したのが、IBMの圧倒的なテクノロジーの優位性だった。
1990年、日本IBMとの共同出資による合弁会社を立ち上げ、自ら同社へ出向した。
しかし、5年後に経営層との経営方針のジレンマが生じ、福岡の情報処理システム開発会社へ出戻った。
赤字だった3部門の責任者となり、黒字転換を果たす。
その一方で武藤代表は、「合弁会社での開発仲間5人が会社を辞めてフリーランスのエンジニアとなって付いて来た。そこで彼らの働く場所をつくるために設立したのが有限会社福岡情報ビジネスセンターだった」ことを明かす。
彼らは、武藤代表の勤務先の開発業務を請け負った。
転機の年となった2006年、勤務先の創業者から富士通系への事業売却を伝えられた。
IBM党だった武藤代表は、勤務先を退職して自社の経営に本格的に乗り出す。
もっとも、当初は1件の受注も取れない日々が続き、わらにもすがる思いで以前の外注先を訪ねた。
「それまでビジネスは勝ち負けだと思って、失礼な態度を取っていたのに、一生懸命に仕事を探して紹介してくれた。その姿に感涙して、自分の人間ができていないことに気づき、自身の鎧や煩悩を脱ぎ棄てて、ビジネスは助け合いだと実感した」
時を同じくして、佐賀県内で開催された京セラ創業者・稲盛和夫氏の講演会に出席した。
稲盛氏のフィロソフィ経営に感動した武藤代表は早速、稲盛氏が塾長を務める盛和塾に入塾する。
そして、自社でも稲盛経営哲学であるフィロソフィを策定し、アメーバ経営による管理会計を徹底した。
百術は一誠に如かず。至誠の感ずるところ、天地もこれが為に動く――。
自社のフィロソフィを社是として掲げて社内での徹底を図ると、さまざまな縁を引き寄せ、奇跡的な出来事が相次いだ。
5年後の2011年、経営実績が評価されて稲盛経営者賞を受賞し、盛和塾福岡の筆頭代表世話人に就任する。
さらに1,700社からなるIBMユーザー会の副会長、約300社の取引先で組織するIBMパートナーのユーオス・グループの理事長にも就いた。
2019年、債務超過に陥っていた同業のケイエムを傘下に収めて経営再建に乗り出す。
当初、「再建不能」と言われていた同社においてフィロソフィの浸透、アメーバ経営による管理会計の実践、人事評価制度の導入により、2年半で企業風土を刷新して社員のエンゲージメントを向上させた。
その結果、経常利益率は18%に改善して無借金経営に転じるなど、武藤代表は「稲盛経営哲学のすごさをあらためて実感した」。
その後、武藤代表は、経済産業省の『DX支援ガイダンス』検討委員に選ばれて、2024年公表の『DX成功事例』において同社の事例を公開している。
現在も経済産業省の『中堅・中小企業等のDX促進に向けた検討会』委員に就任している。
今後、食による地域創生を企業グループで目指す

「2030年にグループ売上高100億円の企業にしていきたい」とする武藤代表は、「フードテックの会社を目指していく」との将来戦略を思い描く。
今後、グループ会社による生産分野への進出も検討している。
そして、食分野における垂直統合や地産地消によって、フードロスを無くしていく考えだ。
「ITの力を生かしながら、食による地域創生を実現していきたい」と東奔西走する。
DATA
名 称:Fbeiホールディングス株式会社
住 所:福岡市博多区博多駅前3-26-29 九勧博多ビル6階
設 立:1998年7月21日
代表者:代表取締役CEO 武藤元美
事 業:DX支援サービス、フードテック事業、ロジステック事業など
URL:https://fbicenter.co.jp/company/aboutus/



コメントを投稿するにはログインしてください。