【人物図鑑】IT化の啓発・伝道師がいま、最新のITビジネスで新たな社会をつくる

ナレッジネットワーク株式会社 代表取締役社長
内閣官房 シェアリングエコノミー伝道師
森戸裕一

森戸裕一
【もりと・ゆういち】
1990年に国内大手システム会社へ入社。2002年に独立、翌2003年1月に同社を設立。現在、内閣官房シェアリングエコノミー伝道師、総務省地域情報化アドバイザー、日本中小企業情報化支援協議会代表理事、中小機構よろず支援拠点全国本部サポーター、名古屋大学客員教授、中小機構販路開拓支援アドバイザー、サイバー大学教授、ネットショップ能力認定機構理事、NPO法人学生ネットワークWAN理事長など。
【3Points of Key Person】
◎研修~コンサル~コンテンツ開発…、何屋か不明なのが強み
◎超スマート社会で〝知〟のネットワークで新たな価値を創造
◎新たな時代の新たなインターネット経済圏で新たな人材育成
人類史上5番目の『超スマート社会』を楽しみ、生き抜く

人類は狩猟社会から始まり、農耕社会を経て、工業社会へ進み、いま情報社会から人類史上5番目の新しい社会となる『超スマート社会』(通称Society 5.0)へ移行するといわれる。
「超スマート社会では必要な〝モノ〟や必要な〝サービス〟を必要な 〝ヒト〟に必要な 〝トキ〟に必要な〝ブン〟だけシェアして利用していく」「インターネット上のクラウドサービスを使って、個人間で使っていないモノ・場所・スキルなどを貸し借りするシェアリングエコノミーの概念は、昭和・平成と続いた東京一極集中経済からの脱却のヒントとなり、人口減少や高齢化率が高まっている地方の創生にも大いに貢献する」と、内閣官房シェアリングエコノミー伝道師でもある森戸代表は説く。
クラウドコンピューティングに後押しされる次世代経営を支援するコンサルティング会社の代表である一方、一般社団法人や一般財団法人、NPOなどの代表も務め、さらに大学教授も兼ねて多忙な森戸代表は、「時々≪何屋さんかわからない≫といわれることもあるが、そのこと自体が強みだと思う。なぜならば、過去の経済やビジネスの常識・概念の延長線上に弊社がいないからだ」との持論を明かす。
研修・セミナー事業、コンサルティング事業、コンテンツ開発事業……。多岐にわたる活動フィールドにおいては、次世代に向けた取り組みである点を基軸とする。このため、超スマート社会の到来をイメージしている外資系企業やベンチャー企業などに向けた営業戦略策定や次世代人材育成計画などを手掛けることが多かった。もっとも、最近では、大手企業や行政からの引き合いも増え、「日本の市場が追い付いて来た感がある」「自前主義の大手企業に対して、ベンチャー的な企業経営をしている弊社は〝知(ナレッジ)〟のネットワークを実現して、分断している価値を連携して新しい価値作りをしている点が大きく違う」と相好を崩す。
登壇回数3000回超の原点は〝ムリをしない〟〝競わない〟

本来、数学教師になる予定だった森戸代表はバブル経済期の就職活動を通じ国内大手のシステム会社に入社した。そして、システムエンジニアやセールスエンジニアの育成をはじめ、企業内人材育成のコンサルティング事業などを担当する。
長年、最新のIT技術を修得しながら、次世代を創る人材育成に心血を注ぐ中、「過去の工業化社会と決別した新しい情報化社会(いわゆる第3の波)が到来するはずだったが、来る気配がなかったので、自ら新たな波を起こそう」と、2002年1月に独立した。
創業年だけで年間300回余の講演とセミナーをこなした森戸代表は、IT/IoT分野以外でもシェアリングエコノミーや働き方改革などをテーマに独立後に3000回以上も講演やセミナー、研修を行ってきた実績がある。
圧倒的な登壇回数について森戸代表自身は、「大手企業での勤務経験もあって最新のテクノロジーを常に把握した上で長年、プロのインストラクターらの育成を手掛けてきた講師経験があり、さらに自ら企業経営を手掛けている点が他に見当たらなかった結果ではないか」と、謙虚に自己を分析する。
ただ、前職の研修講師としては全国トップ評価、マイクロソフト社の研修でも全国トップ評価を獲得している実績がある。そして、創業時からとくに大きな挫折がなかった点についても、「以前在籍していたグループ従業員15万人の大組織とまったく異なるスモールスタートであり、何よりも〝ムリをしない〟〝競わない〟をモットーに次世代経営(スマート経営)に取り組んできた結果」と、自然体であり続ける。
「人的なネットワークは〝地域や業種に閉じたコミュニティ〟になりがちだったが、インターネットの爆発的な普及によって、志と知恵、スキルがあれば、〝新たなコミュニティ(コネクテッドエコノミー)〟を創れる時代になった」と、森戸代表は語る。大学の枠を超えてさまざまな大学の学生で組織したNPO法人学生ネットワークWANも、〝学生の学生による学生のための合同採用説明会の企画・実施〟などを開催するなどユニークな活動を行う。
一方、超少子高齢化時代の到来を予見してシニア世代のコミュニティ構築を試みた事業であるシニアネットも先日、NPO設立20周年を迎えた。この間、大手外資系企業が手動で推進していたIT化推進事業プロジェクトも引き継ぎ、日本中小企業情報化支援協議会を立ち上げた。
次世代人材育成から始まる、新たな社会づくり

「東京オリンピックが経済の大きな転換点になる。シェアリングエコノミーに代表されるように次世代ビジネスが本格化する」とする森戸代表は、講演会やセミナーなどを通じた〝啓蒙〟〝伝道〟からリアルな実業へ歩みを進める。
先日、佐賀県伊万里市でインターネットを用いて連携による新規ビジネスを創造するコラボレーションスペースとして、『PORTO3316IMARI』を立ち上げた。同プロジェクトは、新たな時代にマッチした新事業創造や次世代人材を育成する事業であり、若者・働き盛り世代・シニアに関係なく、次世代の価値観やビジョンを持つ仲間を増やす試みだ。
「昨今、多くに人々が感じる生きにくさや働きにくさの原因は、従来の価値観や過去の成功体験にとらわれた結果といえる。このようなムリをしないためにも従来とまったく違う新しい経済圏をあらたにつくるべき」と、森戸代表は説く。つまり、昭和期の成功体験をはじめ、既成のビジネスモデルや既得権、あるいは過去からのプライドなどが新たなチャレンジにおいて往々にして〝障壁〟となり得る。
この点を踏まえて、「シェアリングエコノミーも含めたインターネット経済圏は、新たな時代に新たな経済圏を既存の経済圏とは別につくろうとする動きであり、経済圏としてはるかに大きな存在になっている」と解説する。
「既存のビジネスを否定している訳ではない。先人の努力があって今日の日本がある。先人の努力は敬うべき。しかし、時代の流れに合わせて変化する必要がある」と考える森戸代表は「超スマート社会で日本がどのように変わっていくかを自分の目で確かめてみたい」との思いを抱きながら日々、全国を飛び回る。
DATA
名 称:ナレッジネットワーク株式会社
住 所:福岡市中央区天神2-3−36
創 業:2002年1月4日
設 立:2003年1月8日
代表者:代表取締役 森戸裕一
事 業:研修・セミナーサービス、コンサルティングサービス、コンテンツ開発サービス
URL:http://www.tisiki.net/
コメントを投稿するにはログインしてください。