【人物図鑑】〝屋台博士〟となった〝異色の調査マン〟が思い描く地域の未来図

株式会社THINK ZERO 代表取締役  
八尋和郎


株式会社THINK ZERO 代表取締役  
八尋和郎

【やひろ・かずお】
福岡県太宰府市出身、1963年12月13日生、九州大学工学部土木学科卒~九州大学大学院工学研究院修了、工学博士。1988年4月九州経済調査協会に入社、地域経済の調査・研究活動を手掛けて、『福岡ドームの地域経済への影響』『福岡高速道路の延伸が地域に与えた影響』『都市における屋台の機能とその変化』などを発表。2007年4月同会情報研究部長、2012年4月同会事業開発部長兼会員制図書館 『BIZCOLI(ビズコリ)』の初代館長に就任。趣味はアビスパ福岡応援とヘビーメタル鑑賞。

【3Point of Key Person】

◎地元シンクタンク歴30年を機に独立系として起業
◎正真正銘の〝屋台博士〟として、〝屋台の灯〟を見守る
◎土木技術者不足の解消策に加え、地元太宰府で勉強会を計画

土木出身〝異色の調査マン〟が独立系シンクタンクで起業

福岡県観光連盟提供

「勤続30年を節目に人生をひとまずリセットしていく思いで退職した最初の1カ月間は、釣り三昧の日々だった」と明かすのは、2018年5月に独立系シンクタンクで個人創業した八尋和郎・株式会社THINK ZERO代表取締役だ。
太公望然として釣り糸を垂らしていると、前職での友人・知人らが企画書づくりやセミナー講師などの単発の仕事を持ち込んだ。そして、風向きが変わり始める。

長年、九州経済調査協会に勤務していた八尋代表は経済分野に留まらず、土木・建設分野における調査・分析・報告などのシンクタンク業務も得意とする。
2018年7月の西日本豪雨で起きた、内水氾濫が問題視されて、実態調査やヒアリング業務を大学研究室と一緒に取り組んだ。

また、子ども子育てプランの策定に向けて、自治体が実施した全子育て世帯アンケートにおいて、調査・分析・総括などの業務を担当して多忙な日々を送る八尋代表は、「自治体の真ん前に最高の漁場があるのに、釣りをする時間もない」と苦笑いをする。

旧南満州鉄道調査部(満鉄調査部)の系譜である九州経済調査協会に入社した八尋代表は工学部土木学科出身であり、経済系シンクタンクにおいてはある種の〝変わりダネ〟ともいえた。
かつて地元紙の取材に応じたインタビュー記事で〝異色の調査マン〟というタイトル文字が、紙面で踊ったこともある。
前職では地域経済の調査・研究を手掛け、福岡ドーム誕生時の『福岡ドームの地域経済への影響』に関する報告は、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌でも取り上げられて大きな反響を呼んだ。

一方、〝平成の市町村合併〟に際しては、幾多の自治体において資料作成や財政見通し、将来展望などを作成したものの、「うまく合併が進んで成功した自治体もあれば、そうでない自治体もあって、いま振り返っても悲哀を感じるところがある。うまくいった・いかなかったという差は、やはり地域内でのコミュニティーが機能していたかどうかという点が大きいのではないか」と分析する。  
そして、2012年4月に誕生した会員制図書館『BIZCOLI(ビズコリ)』では、初代館長を務めて、経済分野に留まらず、文化や教養などの多彩なジャンルのイベントやセミナーも開催して、今日の礎を築いた。

〝屋台博士〟として選定委員を務め、自ら屋台を引く

画像提供:福岡市

八尋代表にとってのライフワークの一つが屋台研究だ。屋台の学術的な研究歴は、実に10年にもおよぶ屋台博士だ。
学生時代に酒を飲んで締めるラーメンを食べるために屋台へ通い始めた。
そして、社会人になると、飲んだ後にタクシーを飛ばして長浜の屋台へ通っていた。
屋台が本格的な研究テーマになったのは、ある雑誌に『博多の屋台の灯』というタイトルで寄稿したことがきっかけだった。
博多の屋台に関する歴史を紹介しながら、最盛期に400軒余りだった屋台が2008年当時、4割強まで減少した現状を踏まえ、「屋台が若い人の起業の場や、人を集める地域活性化のツールとして注目されている。失った時に、大事さを知ることも多く、博多の屋台は将来も灯をともし続けられるかどうかの正念場に来ている」と、≪屋台の灯を消していいのか≫とする問題提起は大きな影響を与えた。

2011年12月に『屋台との共生のあり方研究会』からの調査依頼で『屋台の経済効果について』調べたところ、屋台の年間利用者 115万人強、同売上高17.3億円、同最終需要額40.6億円、同経済効果53億円という数字を初めて明らかにした。
その上で、「屋台は全国的にも様々な取り組みがあり、コンベンション参加者の利用率は高く、観光業も利用している。屋台運営を考えると、下水道やトイレなどの設備設置で適正な処理が必要であり、屋台側も民間賃料から算出して月額1~2万円程度の負担が求められる」という提言も打ち出した。
そして、2013年10月に日本初の『福岡市屋台基本条例』が制定されて従来、慣習的に認められていた屋台が、〝公共性〟を根拠に合法的な存在として認められた。

一方、屋台の経済効果を調べた八尋代表は九州大学大学院工学研究院へ通いながら執筆した論文『都市における屋台の持続的な運営環境の整備と発展的な活用に関する研究』で博士号(工学)を取得して、文字通り〝屋台博士〟となった。
2015年6月に発足した屋台の新規事業者の公募に向けた福岡市屋台選定委員会の副委員長に就任した。そして、選定委員として屋台の現場を知るために自ら屋台を引いて、設営作業をはじめ注文取りや皿洗いなどを体験して、「屋台が体力と神経を使う仕事であることを実感した。設営時の段差問題や通行人への配慮など、実際にやってみないと分からないことが多い」と八尋代表は、現場にこだわる。

太宰府の地から発信したい

福岡県観光連盟提供

「今後の活動として、防災や子どもなど地域のためになる活動を、レポート作成も含めて取り組みたい」と考える八尋代表は近年、深刻の度を深める土木分野における技術者不足に対しても他業界からの転職人材も活用していく戦略的なプロジェクトの立ち上げにも関わっている。

一方、2019年4月から九州産業大学経済学部で非常勤講師として教壇に立って、学生たち向けに講義する八尋代表は、担当科目である『九州学』において、九州の人口動態や産業構造などとともに屋台も取り上げていく。

また、図書館を舞台にして、多彩なイベントやセミナーなどを通じて〝知の交流〟拠点にした実績を持つ八尋代表の家系が代々、新元号『令和』の発祥に関連した大宰府政庁跡近くに居を構えてきただけに「地元・太宰府においても地元学やサイエンスカフェなどの勉強会や会合を開いていきたい」との思いをはせる。

DATA

社 名:株式会社THINK ZERO
住 所:福岡県太宰府市観世音寺5-8-15
設 立:2018年5月1日
代 表:代表取締役 八尋和郎
事  業:シンクタンク事業

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