【人物図鑑】心理学と脳科学で人間の心の謎を科学的に解明していく

【画像】分部利紘@ふくおか人物図鑑

福岡女学院大学人間関係学部心理学科
講師
分部利紘

【画像】分部利紘@ふくおか人物図鑑
福岡女学院大学人間関係学部心理学科
講師
分部利紘

【わけべ・としひろ】
熊本県宇城市出身、1980年10月4日生、国際基督教大学教養学部教育学科(現アーツ・サイエンス学科)卒~東京大学大学院人文社会系研究科修了(心理学博士)。修了後、東京大学大学院医学系研究科・日本学術振興会特別研究員(PD)として、認知機能を生み出す脳神経基盤について研究を行う。2015年4月に福岡女学院大学人間関係学部心理学科に講師として赴任。専門分野は認知心理学、神経科学、社会心理学。教科科目として『心理学プロジェクト演習』や『知覚・認知心理学』を担当する。

【3Points of Key Person】

◎心理学者として教育・研究、産学・地域連携での社会貢献に尽力
◎ICUで心理学に魅了され、東大大学院で心理学・脳科学を研究
◎人間の心の謎の解明に科学的にアプローチしていく

心理学の〝知〟をマーケティングや商品開発、地域貢献に援用

【画像】分部利紘@ふくおか人物図鑑

覚える、思い出す、考える、解く、決める……。私たちは日頃、これらの〝知的〟と呼ばれる活動を行っている。
このような活動の仕組みについて、福岡女学院大学人間関係学部心理学科の分部利紘講師は、「知的活動のうち、《これにしよう》と選ぶ行為である意思決定は、消費者行動をはじめ経済活動にも深く関わる分野であり、心理面・行動面に加えて、脳神経系の働きも含めて研究している」。

人間の心理や行動は、脳活動の産物であるうえに、《手に汗握る》という表現に象徴されるように、身体的な変化として現れることも多い。このため、心理学だけでなく、脳科学・生理学からもアプローチしているのだ。
なお、分部講師が注目する意思決定(decision making)の『意思』とは、「そうしたいという思いや考え」であり、「何かを達成しようといった意向やその行動」である『意志』とは異なる。

大学の役割として昨今、教育、研究に加えて社会貢献が注目される中、「日頃研究している心理学の〝知〟の還元として、通常の講義やゼミに加え、民間企業との産学連携や自治体との地域連携に取り組んでいる」と、分部講師は意欲的だ。
「なぜ、買うのか」「なぜ、選ぶのか」というマーケティング上の消費者行動の意思決定のあり方については、大手広告代理店とタイアップしてアプローチしている。
広告代理店との連携では、消費者向けのより効果的な広告表現やPR手段の開発に向けて、ダイレクトレスポンス広告の効果測定などから取り組んでいる。

一方、IT経営コンサルティング会社を介して取り組んでいる大手文具メーカーとの商品開発では、脳波や皮膚電気活動などの生理的・身体的な変化も応用した新たな文具づくりに挑戦中だ。
さらに、大手航空会社と共同で取り組み始める地域活性化プロジェクトでは、福岡県の観光列車の利用者増加を目指す。福岡女学院大学心理学科の演習科目となっており、受講生が利用者増加に向けて活動する計画だ。

これらの民間企業との産学連携に加えて、自治体との地域連携としては、2017年7月の九州北部豪雨で被災した朝倉市で取り組んできた。
朝倉市の交流人口の増加ならびに復旧・復興支援として、同心理学科の学生らは大学で学んだ心理学やマーケティングを生かして、画像投稿サービスであるインスタグラムを活用したプロジェクトとして、『Asagram参加型あさぐらむ』を立ち上げた。
「市民や観光客が『#あさぐらむ』とタグ付けした画像を自分のインスタグラムに投稿するだけで、半自動的に朝倉市役所の公式ウェブページに掲載される仕組みを作った。観光客や市民ら誰でもが撮影画像を通じて朝倉の魅力を発見・発信することができるので、観光客や市民らが観光活性化や復興支援を支える主役となる仕組みにする狙いがあった」と、分部講師は、地域連携プロジェクトの意図を明かす。

心理学の研究を突き詰めると、脳科学に行きついた!?

心理学&脳科学

子どもの頃から《目に見えない世界》に憧れを抱いていたという分部講師は小学校時代、陸上から見ることのできない水生生物の世界に熱中した少年だった。
そして、大学以降は、『心』という《目には見えない世界》に魅了されて、ライフワークとして今日研究を続けている。

もっとも、国際基督教大学教養学部に入学した当初から心理学に興味を持っていたわけではなかった。大学2年生の夏、『ポアンカレ予想』で有名な数学者ポアンカレの講演録を読み、「初めて人間の知的活動(特に論理的思考)の不思議さに気付かされ、興奮して夜も眠れなかった。それからヒトは《なぜ思考できるのか》ということに夢中になった」。この経験がきっかけになって、心理学の深淵に足を踏み入れた。
卒業研究のテーマに論理的思考の研究を選んだものの、行き詰ってしまう。「結局、卒業を延ばして研究に取り組む中、これまで面白かったことやワクワクしたことをたどっていくと、プロスペクト理論やゲーム理論に代表される不確実性下で効用の最大化を図る『期待効用』だったので、その切り口でまとめ上げた」

卒業後、本格的に心理学を研究していくために東京大学大学院人文社会系研究科に進学した。大学院時代に認知心理学を専攻して博士号を取得したものの、「心理学を研究していくにつれて、脳を研究する必要性を実感した。学位取得後の2年半、博士研究員として東京大学大学院医学系研究科で脳の研究を行った」
もっとも心理学と医学は近そうで実は遠かったこともあり、苦労も多かったそうだが、「これまで学んだことや得意分野を生かして心理学の役割・強みを考えた結果、人間の心の働きを理解するための枠組みを作ることだと気づいた」と、分部講師は当時を振り返る。

心理学は『行動の科学』、考えるフレームを提供する

福岡女学院大学

「脳神経活動だけを見ていても、それがどのような心理機能を可能にしているのかは分からない。心理学は、ヒトにどのような心理機能が備わっているのかを明らかにできる点が強みであり、役割でもある」との見方を分部講師は示す。
日頃の教育・研究に加えて、産学連携や地域連携にも取り組む分部講師は、「意識的・無意識的に行っている自分自身の知的活動に目を向けて、その特徴を理解することで、他者とのつながりをさらに充実させることができる。そして、自分や他者の知的能力自体も維持・向上させたることが可能になる」と考える。

文部科学省管轄の科学研究費補助金で『ヒトの記憶システムにおける無意識的処理~生起機序と神経基盤の解明に向けた研究~』に取り組んだ分部講師は現在、同じく科研費で『怖いのになぜ見たいのか?~回避性感情が引き起こす接近性反応の機能的意義の解明研究~』に打ち込む。
人間の心のナゾという《目に見えない世界》に対して、分部講師は科学的なアプローチによる解明に向けて挑戦し続ける。

DATA

名 称:福岡女学院大学
住 所:福岡市南区曰佐3-42-1
創 立:1885年6月15日(開学)
代表者:理事長 十時忠秀
事 業:教育、研究、社会貢献
URLhttps://www.fukujo.ac.jp/

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