【人物図鑑】東京五輪マスコットキャラクター作者が地元・福岡にこだわる理由

【人物図鑑】東京五輪マスコットキャラクター作者が地元・福岡にこだわる理由

2020年東京オリンピック・パラリンピックマスコットキャラクター作者
キャラクターデザイナー
谷口亮

【人物図鑑】東京五輪マスコットキャラクター作者が地元・福岡にこだわる理由

谷口亮(たにぐち・りょう)
1974年9月5日生、福岡市出身。中村学園三陽高校卒~米国カブリオカレッジ卒業(準美術学士)。帰国後、2頭身のキャラクターが評価され、1998年から本格的にキャラクターデザイナーを志し、オリジナルキャラクターの制作を始める。その後、天神の路上で自作のポストカードやキャラクターグッズなどの販売を始めた。イラストレーター・オブ・ザ・イヤー2015優秀イラストレーター賞、Adobe Design Jimoto 2016Visual Design部門で優勝した後、2018年2月に2020年東京オリンピック・パラリンピックのマスコットキャラクターのデザイナーに選ばれる。2019年に福岡市文化賞、2020年に福岡県文化賞を受賞。現在、九州産業大学造形短期大学部客員教授として教壇に立つほか、福岡市中央警察署協議会委員も務める

3Points of Key Person

◎ 少年期から将来、「絵を描く仕事をしたい」と思い描く
◎ 米国留学が転機。帰国後、2頭身キャラクターに活路を見出す
◎ 東京五輪マスコットキャラクターに採用。博多人形師としてデビュー

東京五輪マスコットキャラクター発表会場にドテラ姿で登場

【人物図鑑】東京五輪マスコットキャラクター作者が地元・福岡にこだわる理由

2018年2月28日、東京都品川区内にある小学校で、2020年東京オリンピック・パラリンピックの公式マスコットキャラクターへの応募作品2,042点の中から選ばれた3案に対する、小学生らによる投票結果の発表と作者紹介が行われた。
そして、小学生らから圧倒的な支持を集めて選ばれた作品の作者は、福岡市在住のキャラクターデザイナー・谷口亮さんだった。
後に『ミライトワ』『ソメイティ』と名付けられるマスコットキャラクターの作者として、ドテラ姿で登場した谷口さんは、そのユニークな服装と語り口でも耳目を集めた。

「前もって組織委員会に当日の服装について問い合わせたところ、『普段着で来てください』とのことだった」
「なので、普段着ているドテラと下駄で発表会場の小学校へ向かった」。和物好きを自認する谷口さんは、屈託なく笑う。
東京五輪マスコットキャラクターへに決まって以降、仕事が激増した中、「もともと東京をはじめ関東圏からの仕事が多かったものの、決定後は地元・福岡での仕事量が一気に増えた」という意外な事実を谷口さんは明かす。

2015年にイラストレーター・オブ・ザ・イヤー優秀イラストレーター賞、翌2016年に『Adobe Design Jimoto』Visual Design部門優勝を果たしていた谷口さんは、五輪作品に決定した翌年2019年に福岡市文化賞を受賞し、九州産業大学造形短期大学部客員教授にも就任した。
さらに翌2020年には、福岡県文化賞も受賞した。

全国区の知名度を獲得した後も引き続き、地元・福岡を拠点に活動する谷口さんは、「ネットや電話を駆使すれば、仕事はどこでもできる」
「特に東京へ移り住む必要性も感じない上、何よりも地元・福岡が好きだ」と、その瞳を輝かせる。

デビュー時に天神で路上販売を始め、東京五輪採用が神風となる

【人物図鑑】東京五輪マスコットキャラクター作者が地元・福岡にこだわる理由

子どもの頃から絵が得意で、手塚治虫作品や『トムとジェリー』が好きだった谷口少年は、プラモデル作りにも熱中し、将来は「絵を描く仕事をしたい」と思い描いていた。
その後、谷口さんは高校時代に1カ月間、アメリカでのホームステイを経験した。そして、一緒に渡米した仲間の何人かは、アメリカの高校へ編入学した。

漫画家を志した谷口さんは、専門学校への進学を父に相談した。
しかし、イラストレーターだった父は、専門学校への進学に反対し、美大への進学を勧めた。
美大進学が念頭になかった谷口さんは、何の準備もしていなかった。
そこで一計を案じた谷口さんは、かつてのホームステイ仲間が進学していたアメリカの美大への留学を決意した。

留学先に選んだのは、米国カリフォルニア州アプトスにあるカブリオカレッジだった。
「今から思えば、アメリカ留学が一番の転機となった」
「恩師でとなるアメリカ人の教師に出会えたことが最も大きかった」
「アメリカでは、それまで自分が当たり前だと思い込んでいた常識が壊され、文化が違うと、こんなに思考や物事の見方が違うことを知った」
「そして、自分自身の考え方も大きく変わり、柔軟性を大事にするようになった」
谷口さんは、目を細めながら当時を振り返る。

留学中、水彩画やアクリル画、裸婦デッサン、彫刻などの美術分野に熱中した谷口さんは1998年の帰国後、2頭身の猫のキャラクターを描き始めた。
すると、これまでダメ出しの連続だった父から初めて褒められ、「キャラクターデザインでいくべきだ」と励まされた。

そして、「まずは、人に見てもらわないと始まらない」と考えた谷口さんは、仲間らと岩田屋(現・パルコ)前の渡辺通り沿いの路上でポストカードやオリジナルグッズなどの手売りを始めた。
同様に路上販売をするクリエーターらが増え、2年足らずで一帯は鈴なり状態となり、地元テレビ局でも取り上げられるほどの盛況ぶりとなる。
しかし、大道芸人らの一群が参戦すると、現場の雰囲気は一変した。
そして、谷口さんらクリエーターは、蜘蛛の子を散らすように去っていった。

その後、仕事量や料金単価も順調に伸びた谷口さんは、福岡市内の専門学校講師にも就任した。
しかし、専門学校講師の職を失った2017年、仕事量や料金単価に陰りが見え始めて谷口さんは、かつてない窮地に立たされていた。
そのような状況下、東京五輪公式マスコットキャラクターへの採用は、まさに〝神風〟となった。
谷口さん自身、「自分の作品が選ばれたことのうれしさとともに『これで何とかなる』という安堵感を心の中でかみ締めた」ことを率直に語る。

博多人形商工業協同組合加盟の博多人形師としてデビュー

【人物図鑑】東京五輪マスコットキャラクター作者が地元・福岡にこだわる理由

2026年4月、博多人形商工業協同組合に加盟した谷口さんは、博多人形師としての作家活動も始めた。
「もともと立体的な造形物が好きだったので、今後は自分のキャラクターを立体化していきたい」
「そのために博多人形師の先生について学び、さらに『博多人形若手育成塾』にも通った」という谷口さん。
「SNS(交流サイト)で情報発信をしており、作品は主にInstagramに掲載しているので、いろいろな方々にご覧いただきたい」と話す。

「好きが高じて30年以上も作品制作を続けている」
「今後も作家活動を続けていきながら、存在するだけでホッとするようなかわいいキャラクターたちを世の中に送り出していきたい」との思いを膨らませる谷口さんは、座右の銘として、「継続は力なり」「温故知新」を挙げる。

DATA

名 称:キャラクターデザイナー 谷口亮
住 所:福岡市中央区平尾
創 業:1998年
代表者:谷口亮
事 業:キャラクターデザイン全般、イラスト制作、博多人形制作など
URLhttps://ryos-w.com

\ 最新情報をチェック /