【人物図鑑】めんたいこをはじめ福岡・九州の〝食〟を海外へ伝道・提案していく

【画像】株式会社山口油屋福太郎 代表取締役社長 田中洋之

株式会社山口油屋福太郎
代表取締役社長
田中洋之

【画像】株式会社山口油屋福太郎 代表取締役社長 田中洋之
株式会社山口油屋福太郎
代表取締役社長
田中洋之

【たなか・ひろゆき】
山口県熊毛郡出身、1969年5月28日生、高水高等学校卒~米カリフォルニア州立大学フレズノ校経営学部卒。トランスオービット、仏リゾートホテル・クラブメッドを経て、2005年株式会社山口油屋福太郎に入社。営業第一部部長、取締役、常務取締役、副社長を経て、2019年2月代表取締役社長に就任。同社の山口毅代表取締役会長の長女である田中香菜子専務取締役の夫。

【3Points of Key Person】

◎創業110周年の総合食品企業社長を務め、組合理事長として業界振興
◎九州・アジア経営塾、青年塾での学びを企業経営に生かす
◎めんたいこをはじめ福岡・九州の〝食〟の世界戦略を構想

創業110周年の総合食品企業の5代目社長に就任

【画像】株式会社山口油屋福太郎
代表取締役社長
田中洋之

味のめんたい『福太郎』、めんたい煎餅『めんべい』で知られる株式会社山口油屋福太郎は、食品の製造・販売をはじめ、1万5000品目の業務用食材・資材を取り扱う一方、飲食店経営なども手掛ける総合食品企業だ。
日露戦争後、日本が列強への道を歩み始めた20世紀初頭に、当時の福岡市瓦町(現在の福岡市博多区上川端町・祇園町)で山口源一が始めた一軒の油屋が山口油屋福太郎のルーツだった。食品油製造業として創業した後、食品問屋を営んで総合食品流通業となった。そして、今日の総合食品企業へと事業を大きく伸ばしてきた。

「得意先や取引先からの信頼を得て、お客さまに愛されながら、地域社会のみなさまから必要され続ける企業を目指している。高い志で〝食〟を通じて、お客さまと感動や喜びを共有していきながら、心と人生の豊かさを提供していきたい」とする同社の田中洋之代表取締役社長は創業110周年にあたる2019年2月、5代目社長に就任した。
「副社長時代から経営全般を手掛けていたが、実際に社長となってみて、決断することの重大さを実感している」と率直に語る田中社長は同社の山口毅代表取締役会長の長女である田中香菜子専務取締役の夫にあたる。

リクルートグループ発行の旅行専門雑誌『じゃらん』調べによる福岡の土産ランキングで第2位となっためんべいは、要冷蔵のめんたいこを用いて日持ちする土産物を目指し、創業家の山口勝子相談役が中心となって商品開発に取り組んだ。
めんたいこを独自製法で煎餅に練り込み、イカやタコなどの海鮮での旨味で評判を呼んだ。定番の辛子めんたい風味に加えて、ネギ味やマヨネーズ味、玉ネギ入りなどレパートリーを増やし、訪日外国人客増の追い風もあって好調に販売を伸ばす。

久留米柿、佐賀牛、長崎鯛、大分しいたけ&かぼす、熊本赤牛、鹿児島かつお・・・。《地元特産の土産物がない》《地元産品を使ってつくってほしい》などの依頼が相次いだ結果、自治体などと連携して地元食材を用いたご当地めんべいのOEM(相手先ブランドによる生産)も手掛ける。
販売が好調なめんべいの生産力増強として、福岡県添田町と北海道小清水町の工場に生産ラインを増設している。合わせて品質管理にAI(人工知能)を導入することで人手不足解消に向けた効率化や省力化を図る。

一方、『博多辛子めんたい協同組合』の理事長も務める田中社長は、「めんたいこをプロモーションしていく上で組合をプラットフォームとして、みんなに活用してもらいたい」「めんたいこは日本人の国民食であり、世界的に和食が人気を誇っており、めんたいこの立ち位置を引き上げていきたい。そして、もう一花、めんたいこを咲かせていこう」との思いを膨らませる。
地元・福岡のめんたいこ業界でも世代交代が進む中、若手経営者らの会合や食事会を定期的に開催するなど業界活性化に向けて着実に布石を打つ。

志や生き方を学び、会社のフィロソフィづくりに生かす

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画像提供)福岡市

アメリカの大学で学び、フランスのホテルなどで働いて山口油屋福太郎に入社した田中社長にとって、現代版〝松下村塾〟として福岡の産官学が設立した九州・アジア経営塾(KAIL)と、志の高い国づくりを目指して青年の啓蒙に取り組む『青年塾』での学びは今日、会社のかじ取りをする上での基軸になっている。
「KAILと青年塾での学びを通じて、あらためて生きていることの意味を問い、《何のために人生があるのか》を真剣に考えるなど、人間形成の上で大いに役立った。そして、社内でリーダーシップを発揮していく上でも《誰のために》《何のために》などについて、常に自問して取り組んでいる」と明かす。

KAILを卒塾して、同窓会組織である碧樹会の4代目会長も務めた田中社長は、「KAILでヒトとのつながりが深まって、大いにプラスになった」「自らの使命や生まれてきた意味から掘り下げて、人間としてのあるべき姿を常に考えながら、行動・実践していくことを身に付けた」とする田中社長は、副社長時代の2018年に企業としてのミッションやビジョンを改訂した。今後、経営理念や社是、行動指針を社員・従業員らと一緒になって見直していく考えだ。
社員みんなの会社にしていたい」「人として、組織人としての承認欲求も十分に考慮した上で、自らの人生や仕事に意味を見出していくことで自主性を持った組織にしていきたい」と目を細める田中社長は2020年6月、企業としてのフィロソフィをまとめた『福太郎スピリット手帳』を発行する。

めんたいこをはじめ九州の〝食〟の世界戦略を構想する

【画像】田中洋之@山口油屋福太郎

「フランス・パリでめんたいこをつくって食べてもらったところ、現地で大好評だった。チョウザメ卵の塩漬けであるキャビア、トビウオ卵を塩漬けにしたトビコは世界的に人気であり、めんたいこも海外で人気を博す可能性は高い」
豊富な海外経験を持つ田中社長は、今後の海外進出に向けた策を練る。

アジアの経済成長に加え、盛況な訪日外国人客の状況を踏まえて、海外の食品見本市への出展に続き、アメリカ・ニューヨークへの出店も計画している。パン食に対応して、ガーリックバター感覚で食べられる『めんたいこバター』などの新商品の開発も進めている。
めんたいこの世界展開に向けては、アラスカ産の魚卵を用いてEUに加工拠点を設けて流通させていく構想を抱く。めんたいこの海外進出において、福岡・九州の食材も一緒に紹介・提案していくことを考える田中社長は、「真摯明朗をモットーに、明るく元気に、そして前向きな気持ちで〝公明正大〟に取り組んでいきたい」と、にこやかな表情で語る。

DATA

名 称:株式会社山口油屋福太郎
住 所:福岡市南区五十川1-1-1
創 業:1909年3月
設 立:1955年1月
代表者:代表取締役社長 田中洋之
事 業:食品卸、めんたいこ・めんたい煎餅の製造、飲食店・温浴複合施設の経営
URLhttps://www.fukutaro.co.jp/

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