【人物図鑑】グルメシティ・福岡で〝フードホール〟としての情報発信や食の供給を図る

【画像】ふくおか人物図鑑

株式会社かわとし
営業本部長
田中洋之

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【たなか・ひろゆき】
山口県熊毛郡出身、1969年5月28日生、高水高校卒~米カリフォルニア州立大学フレズノ校経営学部卒。トランスオービット、仏リゾートホテル・クラブメッドを経て、2005年株式会社山口油屋福太郎に入社。営業第一部部長、取締役、常務取締役、代表取締役副社長を経て、2019年2月代表取締役社長に就任。海外事業や新業態事業の立ち上げなどに取り組んだものの、2023年11月に同社社長を辞職、2024年2月同社取締役を退任。同年4月株式会社かわとしに入社、営業本部長に就任。趣味はサーフィン、水泳、音楽鑑賞など。

【3Points of Key Person】

ふくやを傘下に置くかわとしグループの持ち株事業会社の営業本部長
◎ 海外の大学に学び、外資系で働き、前職でめんたいこの海外進出に挑む
◎ 新天地においても福岡の〝フードホール〟化の実現に向けて尽力する

ふくや創業者・川原俊夫氏の志と名を受け継ぐ持ち株事業会社

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「めんたいこは、ただの総菜たい。特許は取らん!」「こうしていられるのは、全て地域のおかげ。恩返しをしなさい」「受けた恩は石に刻め、施した恩は水に流せ」……。
〝明太子をつくった男〟であり、ふくや創業者だった川原俊夫氏の生き様は、書籍や映画、テレビドラマなどでも数々描かれてきた。

ふくやは2017年4月、4代目社長の川原正孝氏から5代目社長の川原武浩氏へバトンタッチし、そのタイミングで持ち株会社制へ移行した。
持ち株会社の社名である『かわとし』は、創業者の氏名に由来する。 
ふくやをはじめとするグループ会社の株式をふくや関連の不動産賃貸会社だった株式会社かわとしに移管し、同社を持ち株事業会社として、新たなスタートを切った。

現在、ふくやを傘下に置くかわとしグループは、老舗菓子店の株式会社石村萬盛堂やごま焼酎の株式会社紅乙女酒造、めんたいこ製造・食品卸売の株式会社鳴海屋など全13社で構成されている。
「福岡をフードビジネスで盛り上げていくためにも、グループ各社を支援しながら、各社に〝横串〟を刺していくことで互いの相乗効果を高めていき、各社の収益性を引き上げていくことでグループ全体の企業力も高めていく」と解説する株式会社かわとしの田中洋之営業本部長によると、M&A先や新たな人材獲得の〝受け皿〟会社にもなっている」とのことだ。
昨今、M&Aによるグループ企業化に加えて多彩な人材も、かわとしに集まって来る中、田中本部長自身も以前、食品卸売・めんたいこ製造会社のトップとして経営のかじ取りをしていたキャリアを持つ。

海外で学び・働き、数々の苦難や困難にも志を貫く

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アメリカの大学に学び、フランスのホテル企業で働いた経験をもつ田中本部長は2005年、夫人の実家だった株式会社山口油屋福太郎に入社した。
同社に転じて、田中本部長が手掛けた新規事業の一つが、病院給食向け食材供給事業の立ち上げだった。

知人からの紹介で始まった病院給食会社との取引は、1年365日・1日3食を提供するという病院給食の性格上、食材供給においても同様の体制を構築し、十分な人員も配置して臨んだ。
同社にとって新たな挑戦となった病院給食向け食材供給事業の取扱高は、事業開始時の30倍まで拡大し、新たな事業の柱として成功を収めた。
「たしかに未知の領域での新規事業の立ち上げであり、苦労や困難も多かったものの、たしかな実績と成果を上げることができて大変嬉しかった」と、田中本部長は、相好を崩す。

同社では、営業第一部部長から取締役、常務取締役、代表取締役副社長へと、順調に昇進を重ねて2019年2月、社長に就任した。
「仏パリでめんたいこをつくって食べてもらったところ、現地で大好評だった。チョウザメ卵の塩漬けであるキャビア、トビウオ卵を塩漬けにしたトビコは世界的に人気であり、めんたいこも海外で人気を博す可能性は高い」と、豊富な海外経験を持つ田中本部長は、企業のトップとして、海外進出も含めた新たな事業展開に乗り出した。

社長就任後、夫人の父である同社会長との〝二人三脚〟で海外事業の立ち上げや新規開発商品の販売拡大に努めた。
そんな折、公私共に田中本部長を支えてきた夫人の急逝という不幸が襲った。
そして、未曾有のコロナ禍が、海外事業をはじめとする積極策を進めていた同社の経営を直撃した。
日本経済のみならず、世界経済も大きく沈んでいった中、奮闘に奮闘を重ねた結果、同社は2022年12月期決算において、2年連続の赤字経営を脱却して黒字化に成功した。

このようなタイミングで地元財界誌も「社長解任」と報じた騒動が起きた。
業界内外に大きな衝撃を与え、さらに本人への同情も集めた一連の事件について、田中本部長は、自身の未熟さによるものと多くを語らない。
取締役を退任した田中本部長が同社を去ると、本人の実績や実力を知る多くの企業から声が掛かった。
そうした中、田中本部長が新天地として選んだのは、以前から付き合いがあり、知己も多かったかわとしグループだった。

福岡を〝フードホール〟とした情報発信や食の供給へ

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「地元食品業界に身を置き続けながら、福岡という街を一つの〝フードホール〟にしていくという構想の実現に向けて、あらためて尽力している」
想定外の展開もあって、自身の立ち位置自体は大きく変わったものの、田中本部長が以前から思い描いている構想は不変だ。

現在、かわとしの営業本部長として、事業拡大をはじめ、企業グループの経営効率化や新規事業の立ち上げなどで奔走する田中本部長は、「福岡が誇る食文化を、その後背地である九州全体も視野に入れながら、国内外への情報発信を図り、そして食そのものも供給していきたい」と、はつらつとした表情をみせる。
自ら現場に飛び込んでみんなと一緒になってハンズオンでやっていくスタイルを得意とする田中本部長は、「みんなが笑顔であれば、私自身も自ずと笑顔になれる。これまでの人生を振り返っても〝みなさまのおかげ〟と強く実感しており、みんなのため、そして〝みんなを笑顔にしていく〟ことこそが、私自身が生きている意義だと考える」と、真摯に語る。

「人との縁を大切にしていきたい」「いかに人を幸せにしていけるか」━━。
この言葉をライフミッションに掲げる田中本部長の座右の銘は、「Live Today」(いまを大切にする)だ。

DATA

DATA

名 称:株式会社かわとし
住 所:福岡市東区社領3-9-5
設 立:1982年
代表者:代表取締役社長 川原武浩
事 業:味の明太子の製造・販売、各種食料品の卸・小売

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