【人物図鑑】現代版〝松下村塾〟での学びを同窓会組織として持続・発展させる

【画像】碧樹会 会長 中村卓也

特定非営利活動法人九州・アジア経営塾(KAIL)碧樹会 会長
福岡市保健福祉局 総務企画部長
中村卓也

【画像】碧樹会 会長 中村卓也
九州・アジア経営塾(KAIL)碧樹会 会長
福岡市保健福祉局 総務企画部長
中村卓也

【なかむら・たくや】
福岡県古賀市出身、1967年9月1日生、九州大学法学部卒。1990年福岡市役所に入庁。株式会社福岡クリーンエナジー出向、環境局環境政策課長などを経て、2013年4月保健福祉局高齢社会部長、2016年4月同局健康先進都市推進担当部長に就任して、「高齢者の保健と福祉に関する総合ビジョン」「福岡市健康先進都市戦略」を策定。2017年4月同局政策推進部長、2019年4月同局総務企画部長に就任。2010年6月九州・アジア経営塾に入塾(7期)、翌2011年5月に卒塾。2012年7月碧樹会副幹事長、2014年7月同幹事長、2018年7月同会長に就任。趣味は山登り、マラソン、野球など。好きな言葉は「私は今までに一度も失敗したことがない。電球が光らないという発見を2万回も成し遂げたのだ」(トーマス・エジソン)

【3Points of Key Person】

◎九州・アジア経営塾に学び、卒塾生約500人の碧樹会の会長を務める
◎KAILでの学びを持続・実践し、先進的な『福岡100』事業に活かす
◎リーダーシップ醸成で自分自身や組織、社会全体を高めていく

MBA志向と一線を画す経営塾が『人財の森』を育む

【画像】中村卓也提供分

昨今、大学を卒業した社会人が、実務を経験した後に経営学系大学院(ビジネススクール)などへ通うケースも増えている。このような学び直しで高度な専門職業人を目指す社会人は一定数おり、福岡市内においても九州大学大学院経済学府産業マネジメント専攻(QBS)、グロービス経営大学院大学福岡校、事業構想大学院大学福岡校、特定非営利活動法人九州・アジア経営塾(KAIL)が開校している。

この中でも異彩を放つのが九州・アジア経営塾(KAIL)だ。
「KAILは次世代を担うリーダーを育成していく経営塾であり、MBAの資格取得を目指してビジネススキルを学ぶビジネススクールと一線を画している」と、KAIL卒塾生で組織する碧樹会の会長を務める中村卓也・福岡市保健福祉局総務企画部長は解説する。地元・福岡の産官学を母体にして誕生したKAILは、現代版〝松下村塾〟として、次世代を担うリーダーを輩出することで九州をはじめ、日本、アジアの活性化を目指す。

2004年の開講以来、KAILで学んだ塾生は500人余りを数え、卒塾生で構成された碧樹会について、「地域経済の近未来を支える『人財の森』として機能できるよう、会員同士が厳しさを持って切磋琢磨を続ける《学びの場の継続》をはじめ、タテ・ヨコ・ナナメの関係を構築する《人的ネットワークの深化》、そして九州・アジアの成長・発展に貢献する《社会への恩返し》をバリュー(価値観・判断基準)として掲げて活動している」と、中村会長は紹介する。
KAILの7期生として学んだ中村会長は2012年、碧樹会副幹事長に就任して同会のミッション・ビジョン・バリューの策定に尽力。その後2014年に幹事長に就いて、九州大学ビジネススクールの同窓会である九大ビジネススクールアラムナイトネットワーク(QAN)との交流を始め、2017年10月に合同イベントを開催。そして、会長就任後の2019年7月には九州工業大学との間で学生のキャリア形成に向けた包括連携協定を締結している。

経営塾での学びを福岡市の先進的な健康づくりで実践する

【画像】碧樹会 中村卓也

殻を破れ――。KAILの初代塾長だった四島司・福岡シティ銀行頭取の言葉を胸に刻む中村会長は、「KAILではリーダーが持つべき志や価値観を涵養し、変化の激しい時代を切り拓いていくための知恵を醸成してくれた」と話す。

KAILに中村会長が入塾するきっかけは2010年、人事課からの打診だったものの、当初は通塾する1年弱の週末をほぼすべて費やすハードワークにためらいを感じた。
かつて福岡市と九電が合弁で設立した廃棄物発電会社への出向経験を持つ中村会長は、出向後の2003年に「市のリーダーとなる人材が民間企業との交流を深める仕組みを設けるべきだ」と人事課へ直談判し、当時の人事課長から「もうすぐリーダー養成の経営塾ができるので、いずれそこで勉強してはどうか」と勧められていた。人事課からの打診後、その言葉を思い出し、家族からの理解を得て、KAILへの入塾を決断した。

KAILという学び舎で仲間と切磋琢磨した中村会長は、「リーダーシップのスタイルは人によって違う。まずは自分自身の価値観に基づき自分をリードすることから始まり、周囲の人々の共感を得て組織をリードできるようになり、そして自分の夢を全体の夢へと昇華し、最終的に社会のリーダーになることができるということを学んだ」「自分の組織の中だけでモノゴトを考えがちだが、世代や業態を超えてリーダーシップを学び、実践し続ける多彩な人たちとのつながりによって多角的な視点を養い、モノゴトを俯瞰的に考えることができるようになった」と振り返る。

現在、福岡市保健福祉局で総務企画部長を務める中村会長は、『福岡100』の推進をはじめ、高齢者向け買い物支援、保健福祉総合計画策定などで多忙な日々を送る。
「人生100年時代の到来を見据えて、健康・医療・介護の〝殻〟を破り、住まいや地域、働き方なども含めた広い意味でのまちづくりプロジェクトとして推進している『福岡100』でもKAILの学びが生きている」とする中村会長は市民の健康寿命の延伸に向けて、産学官民の“オール福岡”でさまざまな連携を進めている。2017年7月にスタートした『福岡100』は、2025年までに新たに100のアクションを起こすことを目指す。
一例として、フランス生まれの知覚・感情・言語の一体的な認知症コミュニケーション・ケア技法であるユマニチュードの普及に取り組む一方、医療や介護、健康診断などのデータを住民データにヒモづけて、匿名化・一元化したビッグデータとして活用する『福岡市地域包括ケア情報プラットフォーム』を全国に先駆けて構築。
また、ICTを活用した医療サービスモデルとして、オンライン診療を福岡市医師会の協力を得て社会実験した成果が厚生労働省から認められ、昨年度から保険適用されるという実績も上げている。

いま、この瞬間を生きることが大切」

【画像】碧樹会 中村卓也

「これからは自分の組織だけで成果を上げることは益々難しくなっていく。志を持って日々、リーダーシップを発揮している仲間同士が組織を超えて深くつながることは、地域経済の活性化や九州・アジアの発展を目指していく上でも求められる」と、中村会長は考える。
「同質性の高い自分の組織とは別に、共通の規範や価値観を持つネットワークを形成することは《弱い紐帯の強み》という理論もあり、今後ますます重要になってくる」と中村会長はみる。

現在、中村会長が個人的に力を入れているのはマインドフルネスだ。
スティーブ・ジョブズ、ビル・ゲイツ、イチロー、松下幸之助などの世界のトップ経営者やトップアスリートを魅了したマインドフルネスとは、《ただ目の前のことに集中する状態》のことを指す。
多くの仕事やストレスを抱えると〝心ここにあらず〟の状態に陥りがちだが、近年の研究によって、マインドフルネスの実践は脳の疲労を減らし、集中力や創造力、幸福感を高めることが明らかになっている。
「マインドフルネスの実践は、こころの知能指数ともいわれるEQを高めることを身をもって感じており、混沌としたこれからの時代のリーダーにはますます必要になってくる」と語る中村会長はさわやかな表情をみせる。

DATA

名 称:特定非営利活動法人九州・アジア経営塾(KAIL) 碧樹会
住 所:福岡市中央区渡辺通2-1-82 電気ビル共創館7階 九州・アジア経営塾事務局内
設 立:2004年4月
代表者:会長 中村卓也
事 業:九州・アジア経営塾(KAIL)卒塾生の相互研鑽
URLhttp://www.kail2004.jp/publics/index/169/

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