【人物図鑑】2040年の温室効果ガス実質ゼロに向けてイノベーションや社会実装を支援

【画像】福岡市 環境局長 中村卓也

福岡市
環境局長
中村卓也

【画像】福岡市 環境局長 中村卓也

【なかむら・たくや】
福岡県古賀市出身、1967年9月1日生、九州大学法学部卒。1990年福岡市役所に入庁。環境局環境政策課長、株式会社福岡クリーンエナジー出向などを経て、2013年4月保健福祉局高齢社会部長、2016年4月同局健康先進都市推進担当部長に就任し、『高齢者の保健と福祉に関する総合ビジョン』『福岡市健康先進都市戦略』を策定。2017年4月同局政策推進部長、2019年4月同局総務企画部長、2020年9月同局部長(新型コロナウイルス感染症対策担当)、2021年4月同局理事、2022年4月福祉局長、2023年4月環境局長に就任。一方、2010年6月九州・アジア経営塾に入塾(7期)、翌2011年5月に卒塾。2014年7月碧樹会幹事長、2018年7月同会長に就任。趣味は山登り、マラソン、野球など。好きな言葉は「私は今までに一度も失敗したことがない。電球が光らないという発見を2万回も成し遂げたのだ」(トーマス・エジソン)

【3Points of Key Person】

◎環境行政のトップとして2040年温室効果ガスの実質ゼロを目指す
◎マインドフルネスやウェルビーイングの取り組みを公私にわたり実践
◎セカンドキャリアデザインの勉強会やワークショップで研鑽を積む

環境分野でのイノベーションで脱炭素社会を実現

【画像】中村卓也
画像提供:ふくおか環境財団

10年ぶりに環境行政の現場に戻ってきた」
2023年4月1日付で福岡市環境局長に就任した中村卓也局長は、「福岡市では、2040年度、国に先駆けて10年前倒しでの温室効果ガス排出量実質ゼロに向けて、さまざまな取り組みを進めている」と、力強く語る。

福岡市では、政令指定都市で唯一となるごみの夜間収集をはじめ、画期的な廃棄物の最終処理技術である『福岡方式』、さらにごみ回収の4分別収集などの取り組みが評価されて市民の満足度も高い。

2022年8月に策定した『福岡市地球温暖化対策実行計画』によると、福岡市における二酸化炭素の総排出量は、2019 年度時点でのCO2換算で 570万トンだった。
このうち24%を占める家庭部門は2010年度をピークに減少し、同じく28%を占める業務部門も2007年度がピークだった。
一方、32%を占める自動車部門は近年、ほぼ横ばい傾向にある。福岡市における総エネルギー消費量自体は、2007年度をピークに減少しており、2019年度はピーク時に比べて18%の減少だった。

「脱炭素社会の実現に向けて、福岡市としての覚悟を見せていく必要がある」と考える中村局長は、「民間や大学からいろいろな提案を期待したい。一つでも多くのイノベーションを起こしていけるように行政としてもサポートしていくつもりだ。そして、環境分野でのイノベーションを率先して社会に実装させていくためにも全庁一丸となって取り組んでいきたい」と意欲をみせる。

ごみ発電会社を合弁で設立、アイランドシティでまちづくり

【画像】東部工場@中村卓也
画像提供:福岡市環境局

学生時代の就職活動時、折からのバブル景気もあって、さまざまな企業から内定をもらいながらも、中村局長は翌1990年4月、福岡市役所に入庁した。
「ちょうど、『アジア太平洋博覧会-福岡’89(よかトピア)』が開催されていた頃だった。当時、福岡市はアジアに開かれた国際化を掲げており、元気でパワフルだった。市の政策を通じて都市が発展していくことに興味を持っていたので、福岡市は面白いと思った」と、中村局長は目を細める。

2000年4月に着任した環境局では、『クリーンパーク・東部』(焼却処理施設 東部工場)を建設・運営するための第三セクターの開設に奔走した。
その後9月に福岡市と九州電力の共同出資による株式会社福岡クリーンエナジーを設立し、自らも出向して経営理念や中期経営計画などの策定に取り組んだ。
中でも、工場建設のための資金調達については、福岡市からのごみ処理委託費と九州電力への売電収入をベースにしたプロジェクトファイナンスによる調達を実現。「世界を飛び回る海千山千の銀行団担当者らを相手に1年半もの間丁々発止を繰り広げた末、福岡市としてはまだほとんど事例のなかったプロジェクトファイナンスという手法で約250億円の資金を調達できたことは貴重な経験」と振り返る。

2002年には港湾局に異動し、アイランドシティのまちづくりを8年間担当する。2022年4月にまちづくりエリアの分譲予定地の完売が発表されたが、このニュースを聞いた中村局長は、「着任当時はまだ道路も通っていない更地の状態だった。『環境共生』『健康』『こども』『みんなで関わる』の4つをコンセプトにして、何もない状態から民間企業とともに街の価値をいかに上げていくかということに真剣に取り組んだだけに思い入れも大きい」と感慨もひとしおだ。

民間との合弁会社への出向や官民協働によるまちづくりを経験した中村局長は、「市のリーダーとなる人材は今後、民間企業との交流を深める機会を増やすべきだ」と人事課に直談判した。
そして、人事課長から勧められて入塾したのが、次世代のリーダー養成を目的とした九州・アジア経営塾(KAIL)だった。
殻を破れ――。KAILの初代塾長だった四島司・福岡シティ銀行頭取の言葉を胸に刻む中村局長は、「KAILでは、リーダーが持つべき志や価値観を涵養し、変化の激しい時代を切り拓いていくための知恵を醸成してくれた」ことを明かす。そして、卒塾後、OBらで組織する『碧樹会』の会長も務めた。

一方、福岡市役所においては2013年、保健福祉局へ異動し、市民の健康寿命の延伸に向けて産学官民で取り組む『福岡100』の推進に取り組んだ。
また、保健福祉総合計画策定なども手掛け、さらに新型コロナウイルス感染症対策担当部長としても多忙な日々を送った。 多くの仕事やストレスを抱える職員が増える中、中村局長はマインドフルネスの実践やウェルビーイング経営に注目。近年の研究で、マインドフルネスの実践は脳の疲労を減らし、注意力のコントロールや感情の制御に効果が認められ、ウェルビーイング分野では、幸せな人は創造性や生産性が高く、寿命も長いことが明らかになっている。
「混とんとしたこれからの時代のリーダーには、マインドフルネスの実践やウェルビーイングの推進がますます必要になってくる」と、中村局長は健やかな表情で語る。

福岡100の一環でもあるセカンドキャリアデザインに挑む

【画像】福岡方式@中村卓也
画像提供:福岡市環境局

いま、中村局長が個人的に取り組んでいることの一つが、福岡100でも進めているセカンドキャリアのデザインづくりだ。
「KAILに学んだ碧樹会のメンバーでも50代後半から60代前半の会員が増えており、自らのキャリアの振り返りや業務スキルの棚卸しなどに取り組むことが大切になる」と、いち早くセミナーやワークショップを開催している。 

「人生100年時代を見据えて、定年後のセカンドキャリアに向けた早い段階からの準備は今後ますます重要になってくる。碧樹会での取り組みが、日本のビジネスマンのセカンドキャリア構築に向けたモデルケースの一つになれば、嬉しい」と、目尻を下げる中村局長自身、これまでの歩みを振り返りながら、将来への布石をいま打ちつつある。

DATA

名 称:福岡市
住 所:福岡市中央区天神1-8-1
発 足:1889 年4月1日
代表者:市長 高島宗一郎
事 業:自治体事務
URLhttps://www.city.fukuoka.lg.jp/kankyo/index.html

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