【人物図鑑】FMラジオ局がまちづくりに関わる意味。その背景にあるものとは。

【画像】ふくおか人物図鑑

ラブエフエム国際放送株式会社
代表取締役社長
宮﨑泰

【みやざき・ゆたか】
1971年11月11日生。福岡県うきは市出身。福岡県立朝倉高校卒~西南学院大学経済学部経済学科卒。1995年4月西日本鉄道株式会社に入社。バス部門を皮切りに広報や九州観光推進機構(出向)、ホテル事業、都市開発(商業施設運営)などを担当する。バス部門において全九州バス乗り放題乗車券『SUNQパス』や、『福岡オープントップバス』などを立ち上げる。2023年4月現職に就任。信条は、「明るく、楽しく、前向きに。そして正しく」。趣味は、「ワイワイと楽しくお酒を飲むこと」。

3Points of Key Person

◎ 西鉄グループのFMラジオ局社長であり、まちづくりラジオを誕生させる
◎ 西鉄に入社、SUNQパスや福岡オープントップバスを立ち上げる
◎ 音声メディアとしての可能性を追求し、ラジオ局の新たな活路を見出す

FMラジオ局として異色のまちづくり番組を立ち上げる

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世界で初めて音声を電波に乗せることに成功したのは1900年、エジソンの会社での勤務歴もある、カナダ出身の電気技術者、レジナルド・フェッセンデンによる無線電話だった。
レジナルドは、その後も無線電話の改良を重ねていき、1906年12月24日に〝世界初〟のラジオ放送を実現している。
日本では関東大震災発生の翌々年、1925年(大正14)3月1日にNHKの前身の一つだった社団法人東京放送局がラジオ試験放送を実施した。
その第一声は、「聞こえますか?」というアナウンスだったという。同月22日からラジオ本放送が始まった。

2024年4月からまちづくりをテーマとした異色のラジオ番組がスタートしている。
毎週土曜日朝7時30分、LOVE FM(ラブエフエム)で放送中の『キトゥくんと山口センパイの まちづくりラジオ』だ。
自ら企画して番組を立ち上げた、ラブエフエム国際放送株式会社の宮﨑泰社長は、「昨年秋、当社の番組審議会委員からの『あなたが来たならやれそうだね』というひとことが新番組のきっかけになった」ことを明かす。

2023年4月、西鉄自動車事業本部営業企画部長から現職に就いた宮崎社長は、「これまでも転職のような予期せぬ異動が多かった中でも、かなりの想定外だった」と苦笑いする。
一方で、どんな業務に携わっても「いま自分が関わっているまちが、今より少しでも良くなるために」と考えてきた自分の経歴からしても「自分のやるべきことはそこにあるのではないか」と考え新番組の実現にこぎつけたという。
番組開始から半年近くが経ち、「聴いてくれているリスナーに“様々な気づきを与え”つつ、“それぞれが番組を介して繋がっていく”というテーマは少しずつ実現できてきているのではないか」と感じているそうだ。

宮崎社長は、就任後の約1年半を振り返り「FMラジオ局でありながら、いろんなイベントに取り組み、さらに自治体の仕事も手掛けており、<クリエイティビティが高くて面白い会社だ>とご評価いただくことが多い」と話す。
そんなチームの底力を垣間見たのが2024年3月、福岡市役所前西側ふれあい広場で主催した『LOVE FM FESTIVAL2024』。「クオリティーの高さに加え、社員、DJ、スタッフをはじめ関係者全員の実現に向けた情熱と努力を実感して、あらためて本当にすごいチームだと思った」と目尻を下げる。

SUNQパスやオープントップバスを企画して商品化

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「西鉄グループはいろんな事業をやっているので、何か新しいことができるのではないか」
宮崎社長は学生時代、広告やマーケティングに興味を覚えていたが、就職活動はことごとく失敗。
長男だったこともあり、地元に就職するという道を選び西鉄に入社した。

最初に配属されたバス事業部で「かなり鍛えられた」後、広報室広報課へ異動したが、その頃には「自分は広告のつくり手側ではなく、いい広告を世に出すことのできる、広告やマーケティングのわかる企業人になろう」と、考えるようになっていた。

その後、西鉄高速バス営業部に異動した宮崎社長は、九州・山口の高速バス・一般路線バス乗り放題乗車券『SUNQパス』の立ち上げに携わる。
北部九州エリアでサービスを開始した『SUNQパス』は、その後全九州、南九州、山口・下関とエリアを拡大。
全国の旅行代理店で取り扱いを始め、海外でも販売を開始。発売10年を経過した2016年度には、年間販売10万枚のヒット商品となっている。

『SUNQパス』で成功を収めた半面、西鉄高速バス時代には失敗も経験している。
新規で企画した高速バス『鳥栖~天神線』は新設後、わずか半年で路線廃止という憂き目にあった。
「ビジネスパーソンをはじめとする通勤客を主な乗客層に想定した路線であり、新聞社との提携による車内での朝刊の無料配布などの工夫をして、生活習慣の変化を促すことに挑戦。利用者の利便性を考えスタート時から多めの便数を設定したものの、コストが大きくなり見事に裏目に出た」ことを宮崎社長は明かす。
この失敗から得た教訓として、宮崎社長は、「“小さく始めて大きく育てる”やり方もあることを学んだ。まずはやってみることが大事であり、走りながら考えていく。そして、撤退リスクとのバランスも意識して取り組むことの大切さを痛感した」と振り返る。

その後、出向した九州観光推進機構において、地域の観光まちづくりや温泉街の再生に取り組んでいる方々と出会い「それぞれの地域で自治体やNPO、個人が、惜しみなく頑張っている姿を目の当たりにした。その取り組みに対して、企業のリソースを活用して何ができるのか」と、真剣に考え始めた宮崎社長にとっては人生の転機となった。
3年後、復帰した自動車事業本部で企画して立ち上げたのが、福岡オープントップバスだ。
「いろいろなことがあったが、世間から<良いものを作ってくれた>と評価されたことを嬉しく思う」と、宮崎社長は目を細める。

株式会社西鉄ホテルズの取締役営業部長と兼務していたソラリア西鉄ホテル鹿児島の総支配人時代には、異例の“宿泊客と地元住民とのワールドカフェ”を開催している。
「われわれが、地域に受け入れられているどうか分からず悩んでいた時期でもあり、まちの中に入っていこうという試みでもあった」と、その意図を説く。

「FMラジオ局として、まちのお役に立ちたい」

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1991年:2,406億円、2023年:1,139億円━━。
電通が2024年02月27日に発表した『2023年 日本の広告費』によると、ラジオ広告費は、ピーク時だった1991年の半分以下まで落ち込んでいる。

このような状況下、宮崎社長は、「たしかに経営的に大変なところが多いものの、ラジオという従来の枠にとらわれず、音声メディアとしての新たな可能性についても、今後いろいろチャレンジをしていきたい」との姿勢をみせる。
宮崎社長は、「天神にあるFMラジオ局として、天神をはじめ福岡・九州の様々な地域で取り組まれているまちづくりのお役に立ちたい」との思いを発信し続ける。

DATA

名 称:ラブエフエム国際放送株式会社
住 所:福岡市中央区今泉1-12-23 西鉄今泉ビル5階
設 立:1996年4月1日(天神エフエム株式会社)
代表者:代表取締役社長 宮﨑泰
事 業:放送法に基づく特定地上基幹放送事業
URLhttps://lovefm.co.jp/

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