【人物図鑑】福岡3大プロスポーツ、バスケットボールチームの経営再建に奮闘する

ライジングゼファーフクオカ株式会社
代表取締役CEO
藤野孝

代表取締役CEO
藤野孝
【ふじの・たかし】
福岡市出身、1954年6月27日生、九州産業大学経営学部卒。金融業界に就職後、1989年キューサイ株式会社に入社。1996年開発部長、1997年取締役開発部長、2001年取締役開発本部長、2002年取締役冷凍食品事業本部長、2005年代表取締役副社長兼冷凍食品事業本部長、2006年代表取締役社長に就任。創業家の持ち株売却に伴うMBO(経営陣とファンドによる自社株式取得)やコカ・コーラウエスト(現コカ・コーラボトラーズジャパンホールディングス)の株式取得による完全子会社化などを成し遂げる。2019年8月ライジングゼファーフクオカ株式会社の代表取締役CEOに就任
【3Points of Key Person】
◎プロチーム『ライジングゼファーフクオカ』の経営再建を託される
◎キューサイで商品開発を手掛け、社長としてMBOや子会社化を実現
◎ファン拡大やスポンサーの増大を通じてチーム戦略の強化を図る
バスケット王国・福岡のプロチームの経営再建を託される

インターハイ(高校総体)優勝校の福岡大附大濠高校や福岡第一高校、全国中学校バスケットボール大会優勝校の福岡市立西福岡中学校などのバスケットボール強豪校がひしめき、かつて新日鉄八幡製鉄所バスケットボール部が全日本実業団大会で優勝を果たした福岡は〝バスケットボール王国〟でもある。
2006年11月に福岡を本拠地とする、Bリーグ所属のプロバスケットボールチームとして誕生したのが、『ライジングゼファーフクオカ』だ。
ライジングゼファーフクオカは2016-17年シーズンでB3リーグ優勝、2017-18年シーズンB2リーグ優勝してB1リーグへの最短昇格を果たした。しかし、競技力と経営力の乖離による歪みの結果、2019年4月経営難が明らかになった。Bリーグライセンスの停止寸前まで追い込まれたが、地元通販会社の株式会社やずやなどからの出資を得て回避した。
「バスケットボール王国・福岡にふさわしいプロバスケットボールチームとして、しっかりと再建していたい」「これまで株主が変われば、経営陣も一新される歴史だったが、プロスポーツの経営を成り立たせるに最低3年間、しっかり取り組まないといけないと考える」
2019年8月にライジングゼファーフクオカ株式会社の代表取締役に就任した藤野孝CEOは、自らの決意を語る。『青汁』などで知られるキューサイ株式会社で社長を務めた藤野CEOにとっては、同じく青汁などの健康食品の通信販売を手掛けるやずやからの依頼による急きょの登板となった。
「プロスポーツチームとしての安定した経営に向けては、県・市や関係協会をはじめ地域のバックアップが必要となる。社会貢献活動をはじめリーグ唯一の車いすバスケットボールチームなどの存在も生かしながら、ブラッシュアップしていくことで地域から愛される、福岡の地になくてはならない、誇りあふれるプロバスケットボールクラブをつくっていきたい」と真摯な姿勢で語る。
冷凍食品の商品開発のプロが送り出したコンビニ人気商品

「まず~い、もう一杯!」のテレビコマーシャルで知られるキューサイは当初、菓子製造販売で創業後に大手冷凍食品メーカーの協力工場として冷凍食品の製造を手掛けた。
その後に参入したのが青汁をはじめとする健康食品の製造販売だった。
キューサイに30年間勤務して、20年間取締役を務め、うち10年間は社長だった藤野CEOは、新聞の求人広告をきっかけに入社した。
最初、金融業界で働いていた藤野CEOは、料理好きが高じて仕出し屋で起業するための社会勉強のつもりで応募したが、「キューサイ創業者の故長谷川常雄社長と出会って、人生が変わった。商品開発好きでもあった長谷川社長の思いを忠実に再現するために寝る間も惜しんで商品開発に打ち込んだ」と振り返る。
藤野CEOは当時、大手冷凍食品メーカー向け商品提案用として年間10~20品目を開発した。さらに他社向けプライベートブランド商品なども合わせると、新商品の開発点数は毎年50品目にもおよんだ。
《食品加工メーカーではなく、料理食品メーカーである》という創業者の信念を実現すべく、通常のライン生産と異なる、調理人同様のつくり方を自動化させることに成功した。そして商品化第1号となった業務用カニ玉は思い出深い商品だ。
他社が追随できない独自の製造法でつくり出した商品群のうち、現在も大手コンビニエンスストア向け商品として人気を博すチャーハンは会心作になった。
キューサイでは2005年、副社長就任直後に代表権が付き、翌2006年社長に昇格しても会長となった創業者とのコンビは不変だった。
しかし、新体制スタート1カ月後に創業者辞任という想定外の事態に遭遇した。さらに創業家の持ち株売却に際しては2006年12月、MBO(経営陣とファンドによる自社株式取得)に向けた株式公開買い付けを成立させた。
その後も企業経営のかじ取りをしながら、2010年8月コカ・コーラウエスト(現コカ・コーラボトラーズジャパンホールディングス)の株式取得による完全子会社化への道筋を着けた。
「これまで一生懸命にやってきた。これといった能力や才能は無いものの、火事場の馬鹿力だけはあったので、やって来れたと思う。崖っぷちに立たされると、120パーセントの力を発揮して困難を乗り越えてきた」
逆境に追い込まれても持ち前の反発心を原動力に克服してきた藤野CEOは、いま新たな壁に挑む。
雷神・風神の揃い踏みのライジングゼファーフクオカが反攻

チーム名であるライジングゼファーフクオカのライジングは、死後『雷神』と化した伝説を持つ太宰府天満宮の祭神・菅原道真に由来する。
そして、Bリーグ参入時にギリシャ神話で《西の風の神》として登場する『ゼファー』を加えることで雷神・風神の揃い踏みとしている。
いまから720年余り前の元寇で起きた弘安の役において〝神風〟が吹いた福岡・博多の地に拠点を構えるチームについて藤野CEOは、「技術面だけでなく、人間的な魅力も含めた人格面も大事になってくる。みんなが応援したくなるような気持ちの良いチーム、そして無くてはならないチームを目指し、応援するファンやスポンサーを増やしていくことでチームの実力自体も高まっていく」と考える。
現在、約200社のスポンサーについても拡大を図っていくことなどを柱とした3年計画でチームの戦力アップを図っていく方針だ。
「この道を行けば、どうなるものか。危ぶむなかれ。危ぶめば道はなし」(アントニオ猪木)を座右の銘とする藤野CEOは、「商品開発も企業経営も、そしてチーム運営においても前へ進んでいく勇気が不可欠だ」と胸に刻む。試合開始時、ジャンプボールを奪い合うティップオフに臨むような静かな気迫を秘めた藤野CEOは、いま経営再建に乗り出す。
DATA
名 称:ライジングゼファーフクオカ株式会社 (チーム名『ライジングゼファーフクオカ』)
住 所:福岡市博多区比恵町16−26
設 立:2007年5月1日
代表者:代表取締役CEO 藤野孝
事 業:プロバスケットボールチーム『ライジングゼファーフクオカ』の運営
URL:https://r-zephyr.com/
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